現実でぼっちなぼくは、異世界で勇者になれるのか?

シュウ

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最終章 冒険の終わり

さよなら親友

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 深い霧に包まれた湖はずいぶんと不気味だった。
 同時に吸い込まれそうなほど幻想的だった。
 入ったら二度とも戻れないとわかっているのに、それでも水に入っていきたいと思わせるなにかが湖にはあった。
 これは主がやってきたからか。
 それとも主もこのなにかに誘われて、ここにやって来たのか。

 三日ほど湖の周囲を探索していたつばさは、ついに洞窟の入り口を発見した。
 ドライアイスのように洞窟から霧が溢れているのがわかる。
 この中に主はいるのだ。
 つばさはごくりと唾を飲み込んだ。
 洞窟の入り口はつばさの背丈より少し低い位で、屈み込めば入れそうだ。
 ひんやりとした洞窟の岩の壁に手をつけたとき、耳元でばさばさと羽の音が鳴った。 
 振り返ると、カイムが近くの枝に飛び移った所だった。優しい表情をつばさに向ける。

「お別れじゃな、つばさ。主はおまえさん一人しか会うことはできないよ」

 二人は無言で見つめ合った。

「もう、会えないんだね……」

 これまでの思い出が、つばさの脳裏に次々と浮かんでくる。
 目から涙があふれてくるのがわかる。
 長い旅だった。
 それはカイムと過ごした日々でもあった。
 二人で笑い合い、二人で困難に立ち向かってきた。
 何をするのも一緒で、何でも分かち合ってきた。
 決してカイムは口数が多い方ではなかったが、そばにいてくれるだけで安心した。
 旅のパートナー。
 祖父と孫みたいな関係。
 そしてともに過ごした親友。
 彼との関係は一言では表せそうになかった。
 そして彼ともいずれ別れることを、今まで考えまいとしていたことを思い知った。

「寂しかがることはないんじゃよ、つばさ」

 このときばかりは孫に言い聞かせる、おじいちゃんのような口調だった。

「すぐまた会えるよ。わしらはお前さんの心の中に住んでおるからのう」

 カイムはホホウと笑った。
 つばさも笑って別れようと涙をぬぐう。

「ぼくは帰ったらたくさんのことを勉強するよ。いっぱいのこと、知るよ」
「楽しみにしておるよ」
「うん・・・・・・また一緒に旅をしようね」

 精一杯の笑顔を向けたあと、つばさはカイムに背を向けた。
 最後笑顔が引きつっていなかっただろうか。
 つばさはかがみ込んで、洞窟の中へと足を踏み入れる。
 振り返りたい気持ちも、泣きたい気持ちも精一杯抑えて、奥へと足を踏み入れた。
 
 様々な思い出が頭によぎる。
 ヤマのクニで出会ったエドやキムニ。ハシたち障りたち。
 彼らは今何をしているだろうか。
 そしてサギ
 彼女はまだ旅をしているのだろうか。
 夢幻世界で出会った様々な障りたち。
 怖かった沼のぬしや、しばらく一緒に旅したマントヒヒのような障り。
 ずっとともに過ごしたカイム。
 多くの顔が浮かびあがった。

 そのすべてを乗り越え、ようやくつばさは主と再会することになる。
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