35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する

エルリア

文字の大きさ
37 / 63

37.持ち主を探して

しおりを挟む
「えーっと、住所からするとこの辺なんですけど・・・」

 ディジーの案内でライン内を移動、普段はショップの並ぶ大通りを歩いているけれどこういった住宅街を歩くことは殆ど無い。

 向こうは対外的な作りになっているけれど、この辺は地元民しか来ないからかそれなりに汚れているしある意味なじみのある雰囲気になっている。

 前のコロニーでもこんな所に住んでいたっけか。

「空き地、だな」

「ですね」

 たどり着いた先はマンション群の一角、1m四方ぐらいの小さな空き地に手紙に書かれていた番地札が置かれていた。

 空き地と言っても土ではなくただの鉄板、ここに見つけた種を植えろという感じではない。

 人が住むにも木を植えるにも狭い空間、そこからこの手紙が出されたっていう事らしいけどなんだかなぁ。

「コロニー内で空き地があること自体が珍しいと思うんだが、大きさ的に家ではなさそうだな」

「ですねぇ、倉庫にしては狭いですしわざわざこの空間を作った理由がなんとも」

「住所は間違いないんだよな?」

「札に書いてある通りです、アリスさんに送ってもらった画像を見ても間違いありません」

 差出人は不明、でも住所はここ。

 返却したコンテナの履歴から出荷されたのはおよそ五年前という所まではわかっているけれど、それ以上の情報は一切ない。

 筆跡鑑定的なものをアリスに頼んでみたけれどデータ上にそういう画像は見当たらなかったそうだ。

 そもそも手紙なんてものを出すのは暇人ぐらいなもの、ボタン一つでいくつもの宙域を越えて相手に届くっていうのにわざわざ物体を送る理由は一体何なんだろうか。

 この辺の感覚が俺にはさっぱりわからんなぁ。

「あの~、トウマさん」

「ん?」

「この人がその空き地について知ってるそうですよ」

「マジか!」

 イブさんに声を掛けられ慌てて後ろを振り向くとそこに居たのは結構な年配の男性。

 よぼよぼ、とまではいかないけれどそれなりの年齢を感じさせる腰の角度になっている。

 しかしよくこの人が知ってるってわかったな、どういう流れでそうなったんだろうか。

「あんたらこの土地に興味があるのかい?」

「興味っていうか調べ物をしていたら今住所にたどり着いたんだ、コロニーに空き地なんて珍しいし何か意味があるのかと思ってな」

「そこは昔大きな樹が立っとったんじゃ」

「樹!?樹ってあの樹ですか!?」

「他にどの樹があるのか教えてほしいが、こんな鉄板の上に生えるもんなのか?」

「そこは昔本物の土で覆われておってのそこに鮮やかな緑色をした木が生えておったんじゃ。それはそれは見事な樹でなぁ、たまに上から小さな実を落として子供がそれを拾っておった。」

「コロニー内に樹が生えていたなんて、私知りませんでした」

 いや、普通コロニー内に本物の木が生えているなんて誰も考えないだろう。

 惑星や惑星に近いコロニーならともかくこんな離れたコロニーに天然物を置くとかどんな金持ちだよ。

 しかもそれが誰でも見られる場所に生えていてしかも盗まれないって?

 にわかには信じられない話だ。

 基本的にコロニー内に存在する物質の99%は人工物、合成器などで加工されたものを使い効率的に組み上げられたのがコロニーという存在だ。

 稀に金持ちが私物として天然物を持ち込むことはあっても、それは私物出会って公の場所に置かれることはない。

 理由は単純に高いから。

 ほんの小さな髪留め一つで1万ヴェロスを超えるし、家具などになったらそれこそ100万を超えて来るんじゃないだろうか。

 その原料となる本物の樹が普通に生えているなんてそんなことが本当にあっていいのか?

「それは楕円形のようなものでしたか?」

「そうそう、よく知っておるのぉ」

「それで、その樹はどうなったの?」

「ある日、忽然と姿を消したんじゃ。まるで初めからそこになかったかのようにすっぱりとな」

「切り倒されたとかでもなく?」

「うむ、切り株も掘り起こしたような跡もない。気づけば忽然と姿を消しその空き地だけが残ったんじゃ。皆ひどく悲しんでのぉ、それを忘れまいとそうやって土地を残して鉄板で蓋をしておる。気になるのなら動かしてみるといい」

 ふむ、なんとも不思議な感じだが木の実の形も一致するし嘘を言っているようには思えない。

 とはいえ突然物が無くなるなんてことはないだろうから途中で話が歪曲していった感じなんだろうか。

 爺さんの話を聞いたイブさんが鉄板に近づいたかと思うとその場にしゃがみ勢いよくそれを押した。

 いやいや、そんな分厚い鉄板いくらイブさんとはいえ・・・って動いてるし!

「あ、本物の土!」

「こりゃ驚いた、こんなのがあるならそりゃ隠しておきたくもなるな」

 鉄板の下から顔を出したのは茶色いさらさらとした物体、映像では何度も見たことがあるけれどまさか本物をこの目で見る日が来るなんて。

「これが本物の土、惑星に行くとこれがあるんですね」

「そうじゃ、見上げるほどの緑の樹が何本も生えておる。もっとも、ワシは見たことないがな」

「ないんかい!」

「このコロニーに生まれこのコロニーで死ぬ、昔はあちこち飛び回ったが結局ここに戻ってきてしまうんじゃ」

「じゃあおじいちゃんの代わりに私が本物の樹を見てきてあげるね」

「ほっほっほ、そりゃいい。ワシの代わりにしっかり見てきておくれ」

 まるで孫に言われたかのように喜ぶ爺さん、ディジーの年齢を考えると祖父と孫ぐらいの関係なんだろうけど・・・まぁここで変ことを言うのも野暮ってもんだ。

 鉄板をもとの位置に戻してひとまず傭兵ギルドへ、そこにはソルアレスにいるはずのアリスの姿があった。

「おかえりなさいませ、何か見つかりましたか?」

「眉唾物ではあるが一応な」

「聞いてください!コロニーに本物の樹があったそうですよ!」

「はぁ?そんな話聞いたことないぞ」

「それが五年前に忽然と姿を消したそうです。ですがそれまでは先ほどの種子のようなものが時々落ちてきたとか」

「おいおい、その話信じたのか?」

「俺も本物の土を見るまでは信じてなかったさ」

 爺の世迷言、普通に聞けばそんな感じだろうけどあの茶色い土を見た後ではそうも言えない。

 何故あったのかとかどこに行ったのか、考えれば考えるほどおかしな話だとおもう。

 だが、そういうのをすべて無視して信じたくなる何かがそこにはあった。

 まぁ、ヒューマノイド憲章を知らない生意気なヒューマノイドがいるぐらいだし、そういう不思議があってもおかしくないだろう。

 世の中は不思議でいっぱいだ、どれだけ技術が進んでも解明できないことがあってもいいじゃないか。

 あまりにも色々ありすぎて最近はそういう考え方に変わってきた。

「では先ほどのは植物の種子で間違いなさそうですね」

「おそらくな。証明したけりゃ生育できそうな惑星に降りて埋めるしかない」

「埋めましょう!」

「埋めるってどこにだよ」

「惑星を買って植えるんですよ!そしたらいずれ樹がいっぱい生えて、それを売って大儲けできるじゃないですか!」

 確かに本物の木材であればかなりの値が付くのは間違いない、実際そういう風に稼いでいる惑星もあるらしいしディジーが行っていることはおかしなことではないけれども・・・。

「あのなぁ、樹ってのはそんな簡単にでかくなるもんじゃねぇんだよ。何年、何十年経ってやっと大きくなるんだ。それを売って大儲けする頃にはとっくの昔に婆になってるぞ」

「えー!そうなんですか!?」

「詳しいじゃないか」

「昔同じようなことを考えたバカがいたんだよ。現実を教えてやったらそれでもかまわないって行っちまったなぁ」

「今はどうしてるんだ?」

「植えるのは諦めたが加工する方に目覚めたらしい、確か有名な職人になったって話だが・・・忘れた」

 木工職人ともなれば超高給取りじゃないか。

 そんな友人がいるとは思えないんだが、まぁこの人にも色々あるんだろう。

「でも、見つけた以上植えたいですよね」

「ですよね!」

「なら夢がかなった暁にはそれを植えてみるか」

「素敵な夢だと思います、仮に時間がかかったとしても私が見守りますのでご安心を」

「まずは惑星を買う所からだけどな。そしてそれを叶えるためにはしかるべき報酬を貰わないといけないわけだが・・・、アリス交渉は終わったか?」

「もちろんです」

 そう言ってどや顔をするアリスの後ろでエドガーさんが疲れたような顔をしている。

 どうやら随分とやり合ったらしい。

 もちろんその程度で惑星が買えるほどもうかるとは思えないが、小さなことからコツコツとってね。

 もし本当に夢がかなうのならあの種を植えよう、夢がより具体的になる発見だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...