35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する

エルリア

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41.新たな選択肢を検討して

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「暇だな」

 メディカルコロニーへ向かう事二日、今の所特に何事もなく船は飛び続けている。

 パトリシア様の病状も落ち着いているようで久々の船の旅を非常に楽しんでおられる様子、贅沢なもので丸二日何もないと人間飽きが来るのでせっかくならとイブさんに鍛えてもらっているけれども元々の筋肉がないのですぐにバテてしまうのが難点だ。

「何事もなく物事が進む、良い事じゃありませんか」

「そりゃまぁそうなんだが・・・、それより大規模掃討戦の進捗はどんな感じだ?」

「劣勢になったことで傭兵達の中から離脱者が出始め、それを補うために宇宙軍が増援を要請しています。ただし到着は三日後、残念ながら私達が通過するより後に到着する予定です」

「到着を待てないのか?」

「もちろん待つこともできますが、そうなれば戦場はかなり荒れるでしょう。突然遠距離から大型レーザー兵器が飛んでくる可能性もあります、そうなればいくらソルアレスと言えどひとたまりもありまsん。乱戦になるよりも先に通過することをお勧めします」

「とはいえ劣勢になっているという事は宙賊も多数存在したまま。そこに突っ込んでいくか、はたまたレーザー兵器の雨の中に突っ込むのか、どっちにしても最悪だな」

 二日も経ったんだから少しは戦況も良くなっているのかと思いきや逆に悪くなっているとか宇宙軍もしっかりしてほしい。

 しかも援軍が来たところで全部解決しないというか悪化するって、それなら来てくれなくてもいいんだが?

 はぁ、どちらを選んでもいばらの道だけどレーザー兵器に撃ち落とされるぐらいなら宙賊相手に戦うほうがまだ可能性は高いか。

「一応別の方法もありますが・・・」

「別の方法?」

「正直時間的にギリギリですのでお勧めはできませんが、少なくとも宙賊とレーザーを心配しなくても良くなります。」

「聞かせてもらおうじゃないか」

 最初にはなかった選択肢、おそらく情報収集する中で見つけたんだろうけどアリス的にはあまりお勧めではなさそうな感じだ。

 とはいえ今の俺にはどんな選択肢でも欲しいところ、とりあえず聞くだけ聞いて考えよう。

 アリスが静かに頷き、モニターに巨大な宙域地図が表示される。

「現在私たちが飛行しているのはこちら、メディカルコロニーから二つ宙域を離れた場所になります。本来の予定では大規模掃討戦の戦場を突っ切るようにまっすぐ移動をするはずでしたが、諸々の危険がありますのでそれを避けるために別宙域を経由しそこからハイパーレーンに乗りメディカルコロニーを目指します。ハイパーレーンにさえ乗れば一日でメディカルコロニーへ到着しますが、そこに到着するまでに最低でも八日かかるでしょう」

 イメージとしては三角形を作る感じだろうか、本来頂点Aから頂点Bにまっすぐ進めばいい所を別の頂点Cを経由してから頂点Aへ移動。それが正三角形になるのならまだ救いがあったものの頂点Cへは予定の二倍以上の距離を移動するのでかなり時間がかかるようだ。

「当初の予定は十日、準備期間もいれると現時点で三日経過しておりますので合計十二日かかることになります」

「いや、それじゃ全く間に合ってないだろ。っていうかそれが間に合わないから戦闘宙域に突っ込むって話じゃなかったのか?」

「それは今の航行速度ならという話です。積み荷を捨て、エンジンを最大出力で動かし続ければ六日でハイパーレーンへ到着、そこから現地に向かい最優先で入港すれば・・・というのが今のシミュレーションです。もちろん何もなければの話ですが」

「・・・失敗した場合は?」

「パトリシア様は死亡、私達が看取ることになります」

「よし、戦場に突っ込むぞ!」

 そんなばくちみたいなことができるか!とか言いながらも、戦闘宙域に突入するのも中々の博打。

 右を選んでも左を選んでも最良の答えが出てこない。

なら少しでも成功する可能性のある方にBETするしかないだろう。

「では星間ネットワークへのリアルタイム接続を利用した現在の大規模掃討戦の戦況を表示いたします」

 続いて当初の予定に合わせて宙域地図が移動、モニター中央に巨大な小惑星が表示される。

 その周りに真っ赤な点、左下に白い点がいくつもあるのだが一つまた一つと数を減らしていく。

 代わりに右上から真っ赤な点が続々と中心部に向かって集まってきているのだが・・・。

「これが現在の状況です、説明は不要ですね?」

「右下が傭兵と宇宙軍、中心が小惑星、赤いのが宙賊か」

「今もなおその数を増やし、現時点では掃討作戦の二倍を超える数になっています。しかも放棄された宇宙軍の戦艦を鹵獲、小惑星のドッグで修理をして再利用しているようです」

「・・・聞いていた話と違うんだが?」

「私もこれは予想外でした。ネットワーク上のメッセージを見る限り近隣宙域の宙賊にも声をかけ、ここから宙賊の宙賊による宙賊の為の国を設立するのだと息巻いております」

 宙賊の宙賊による宙賊の為の国?

 それって単に自分達が好き放題するって言っているだけじゃないか?

「独立?そんなことができるのか?」

「法律上の手続きはいくつもありますが、ひとまず国家としての基盤となる王都とそれに属する住民がいますので可能ではあります。もっとも、それを議会が認めるかどうかは別ですが自称独立国家というのであれば現時点でも名乗れますね」

「確かにこれだけの宙賊がいれば小さな国と名乗れなくもないだろうけど・・・ちなみに俺達が通るのは?」

「ここですね」

 モニターの右側を下から上に貫くように表示される一本の線、リアルタイムで宙賊が通過する今一番HOTな場所を突っ切ろうだって?

 そんなバカなことがあるのか?

「バカなのか?」

「いえ、いたって真面です」

「それならせめて王立宇宙軍のいる方を通った方が良いだろ、味方だぞ?」

「その選択肢もありますが、見ての通りいつ押し切られるか分かったものではありません。通過する頃にはあそこも宙賊のテリトリー、そこに援軍が来たらどうなると思いますか?」

「味方諸共纏めて打ち抜くのか」

「鹵獲されるぐらいなら潰してしまった方がマシ、捕虜となり慰み者になるか虐待されるかの二択しかないのであればせめて殉死という花を・・・というのが援軍に向かっている王立宇宙軍の現時点での作戦の様です」

 味方諸共撃ち落とすとか、どっちが宙賊かわかったもんじゃないな。

 ともかく左を通過する方が危険なのは分かったが、右側も結局は危険なまま。

 どっちを通ってもやばい未来しか見えない。

 じゃあ一縷の望みにかけて遠回りをするのかと聞かれると、それもまた悩ましい。

 どちらかというとこちらも間に合わないに天秤が傾いた状態だ、俺達の命は助かってもパトリシア様を失ったライエル男爵様から約束の情報を貰えるとは思えない。

 更に言えば俺のメンタルが持たない。

 誰だよ、こんな依頼引き受けるって決めたやつ。

 俺か!

「率直な意見が聞きたい、どうするべきだと思う?」

 これ以上俺一人で悩んでも仕方がない、船長とはいえ時に仲間の意見を聞くのも大切だ。

 ということでアリスとイブさんの意見を聞くことにした。

「最初は宙賊宙域を通過する方を選びましたが、この状況を考えると正直皆さんを守る自信はありません」

「率直な意見ありがとう、アリスはどうだ?まだまっすぐを推奨するのか?」

「依頼達成を考えるとそれしか選択肢はありません。しかしながら、マスターの命を優先するのであれば迂回する方を選択します。こちらも可能性はゼロではありません、ソルアレスこの船の性能を信じましょう」

「つまり迂回するのが一番という事か・・・。はぁ、パトリシア様になんて説明すればいいんだよ」

 貴女は助からないかもしれない、希望を抱いたあの人にその言葉を言うのにどれだけの勇気が必要か。

 増え続ける赤い光点を見つめながら大きなため息をつくのだった。
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