35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する

エルリア

文字の大きさ
6 / 63

6.宇宙の現実を突きつけられて

しおりを挟む
「アリス、ソルアレスには超省燃費エンジンが積んであるんだったよな?」

「おかしいですね」

「いや、おかしいですねって言われても困るんだが?」

「計算上ここで燃料が無くなるはずないのですが・・・、お調べしますので少々お待ちください」

 宇宙の旅を始めて三日、高性能ヒューマノイドのアリスとの旅は非常に快適なものだった。

 何をするにもすぐに回答が出て来るし、星間ネットワークから得た情報は非常にためになる物ばかり。

 腹が減れば合成器からそれなりに美味しい食事が出て来て自室のベッドは想像以上にフカフカ、何事もなくあと数日で目的地へと到着・・・するはずだったんだけどなぁ。

 あの後、予定通り近くのコロニーへ移動して燃料を補充し、ついでに合成器用の食材と水も補充して輸送の仕事を受けるべく産業コロニー『ライン』へと向かっていた俺たちなのだが何故かその途中でガス欠寸前になっていた。

 最初のコロニーで聞いた話ではラインまではメイン航路を何回か燃料を補給しながら移動するらしく経由地点にはそれなりに栄えたコロニーが点在しているらしい。

 メリットは交通量も多く安心安全に移動できる事、デメリットは燃料がなくなる前提で商売しているので何もかも相場よりも高い値段を吹っ掛けられるという事だ。

 残念ながら最初の補給で退職金の半分が吹っ飛んだ俺にそんな余裕はない。

 だが、超高性能かつ超省燃費エンジンを兼ね備えたソルアレスであれば最初の補給だけでラインへと到達できるはず、ということで通常の航路から外れた最短コースを選ん筈だったのだが、現実はそう上手くいかないらしい。

 コックピットに座り、目の前に広がる真っ黒い宇宙を眺めながら待つこと数分。

 すぐ下のコントロール席で何かと通信するように天井を見上げていたアリスがクルリとこちらを振り返った。

「原因が判明しました」

「聞かせてもらおう」

「最初のコロニーで給油した燃料ですが、どうやらかさ増しされた不良品だったようで実際には半分しか入っていなかったようです。不純物として取り除かれた水分は生活水として再利用できますが・・・どうしましょうか」

「どうしましょうかってお前なぁ」

 アーティファクトと呼ばれる超高性能ヒューマノイドとの悠々自適な自由の旅はわずか三日目にして終わりを迎えようとしている。

 アリスは内部にこれまた高性能なコアを有しているらしく100年は何もしなくても稼働できるらしい。

 だが俺はそうはいかない、今ある食糧を食い尽くせばあっという間に餓死するだろう。

 宇宙を旅する一番のリスクはまさにこれ、あまりにも広すぎて航路から離れた場所を飛行していた場合救難信号を出しても誰も来てくれないことがほとんどだ。

 仮に救助してもらっても法外な報酬を支払わなければならず、結局首を吊るなんて話も聞いたことがある。

 はぁ、アリスとソルアレスを手に入れた時はこれで俺の人生バラ色だ!とか思ったりもしたけれど、現実はそう甘くなかったらしい。

「マスター、そう悲観しないでください」

「いや、悲観するだろ。ここで死ぬんだぞ俺は」

「私はどうしましょうかと聞きましたが、どうにもならなとは言っていません」

「どうにかなるのか?」

「わたしを誰だと思っているのです?」

「ポンコツヒューマノイド」

「今日の晩御飯は合成した栄養バーのみですね」

「悪かった!謝るからあの不味いバーだけは勘弁してくれ!」

 合成器から出てくるのは何も美味い飯ばかりじゃない、必要最低限の栄養分のみを摂取することに特化して生成されるのが栄養バー。

 完全に食べる喜びを無視したそれは罰ゲームともよばれていてよほどの状況じゃないと食べる気にもならない。

 合成器の材料を一番使わないので遭難した場合はこれが主食になるわけだけどもどうやら助かる見込みはあるらしい。

 平謝りの後、アリスが考えたという作戦を拝聴する。

 ふむふむなるほどと思ったのは最初の数十秒程、その後は想像すらしなかった方法でこの状況を打破しようとしている。

 いや、確かに合理的だしそれが一番確実かもしれない。

 だけどそれが失敗したら?

「どちらにしろ死ぬわけですから同じことです」

「自分は大丈夫だからと思って好き放題言ってるんじゃないだろうな」

「仮に失敗した場合マスターは死にますが私は永久的に彼らの慰み者になるでしょう。もしくは売られた後全身バラバラに分解されて体の隅々まで調査されたあと、集積回路のみ生かされるのです。そちらの方がよろしいですか?」

 俺は死ねばそこで終わり、だが死ねないマリアには想像を絶する苦難が待ち受けている。

 もちろん本人?がそれを何とも思わなければ問題ないだろうけど、いくらヒューマノイドに心がないとはいえ限界というものはあるはずだ。

「すまん、悪かった」

「ですが私がいてそのような状況になることなどありえません、マスターには指一本触れさせはしませんから」

「頼りにしているからな」

「お任せください、マスターはこの席で私と共に状況を見守っていただければ十分です」

 俺は何もしなくていい、アリスがそういうのならば間違いないんだろう。

 っていうかそうしてもらわないと困る。

 彼女の考案した作戦は単純明快で『燃料がなければあるところから回収するだけ』、それがどこかというとズバリ宙賊と呼ばれる非合法な在在からだ。

 奴らは商人などの船を襲い、荷物を奪い人を殺す。

 その中に女がいれば辱めるしなんならどこかへ売り飛ばしたりもする。

 金、薬、酒、それだけが生きがいの百害あって一利なしの連中だが今回に関して言えば初めての一利になるのかもしれない。

 メイン航路を航行せず今回のような少し離れた場所に居を構えて俺みたいな船を攻撃するのがほとんどで、アリス曰くちょうど彼らの拠点が近くにあるらしく救難信号を発すればすぐに飛んでくるとのことだった。

 後はのこのこ出てきたやつらの船から燃料を奪うだけ。

 問題はどうやって乗っている連中を倒すのかという所なのだが、それをアリスに聞いても答えてもらえなかった。

 俺はただここに座っていればいい、そのセリフを繰り返すのみ。

 宇宙ってのは綺麗なだけではなくむしろ恐ろしい場所だという事をたった三日で知れたのを幸せと思うべきか不幸だと呪うべきか。

「それでは救難信号発信します。すぐに奴らがやってきますのでコンタクトを要求された場合はすぐにつないでください」

「え、つなぐのか?」

「命の危険を感じている人が救助に来てくれた人のコンタクトを無視すると?」

「いやまぁ、そうだけど・・・座ってるだけじゃなかったのか?」

「交渉はこちらで行いますのでマスターは情けない顔だけしておいてください」

 自分のマスターを捕まえて、情けないってのはどうなんだ?

 そりゃ何か言えって言われてもとっさに言えるとは思えないけど・・・。

 アリスが周辺宙域に救難信号を出してから僅か10分弱、ソルアレスに向かって誰かがコンタクトを要求してきた報告がメインモニターに表示される。

 アリスの方を見ると俺の方をちらりと見てわずかに頷いた。

 はぁ、まさか宇宙に来て最初にやる仕事が宙賊退治とは、現実はそう甘くはないみたいだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...