収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア

文字の大きさ
252 / 290

251.大規模討伐に参加しました

しおりを挟む
梅田ダンジョン北ダンジョン、通称梅北ダンジョン。

通常のダンジョンと違って一階層しか存在せず、そこには超巨大超強力な魔物が定期的に出現する。

出現した当初はあまりの巨大さに人々は恐れおののいたそうだけど、今ではある程度の攻略法が見つかっているのでその素材と報酬を求めて定期討伐されている。

レイド、エリアボス、言い方は様々だが今ではもうそこまでの脅威ではないっていう所が人間の凄いところだよなぁ。

「おー、いるいる」

「すっごい人ですね」

梅田ダンジョンに入場後、北に延びる通路を進むと高台に到着、その下は巨大なクレーターのようなゆるや穴すり鉢状になっていてその中央に魔物が現れる。

グリーンベアーの名の通り緑色をしたその巨大なクマは、ミニマミーのように子分を大量に召喚して襲い掛かってくるタイプの魔物だ。

稀に緑ではない色違いが出現することもあり、その場合はドロップ品がよくなるのでそれはもうお祭り騒ぎになるだとか。

このダンジョンの面白い所は魔物が出現すると入り口が封鎖されてしまうという事、かつてはその仕様が分からずドロップを少数で独占しようとした探索者が犠牲になるという痛ましい事故もあったらしいが、今はその事故を教訓にギルドによる事前登録制が開始され、討伐参加者が少ない場合はギルドから増援が送られるようになっているらしい。

お金も大事だが命の方がもっと大事、たまに不満を言う探索者もいるらしいけど苦労して大金を稼ぐよりもできる限り楽に稼いだ方がありがたい、という事で今の流れになっている。

「新明様」

「あれ、アレンさん?」

「私もいますよ」

「カレンさんも、まさか今回の大規模討伐に参加を?」

「今回は参加人数が少ないっていう事で蒼天の剣にお呼びがかかりました。どうなることかと貴方がいるのなら大丈夫そうですね」

大規模戦闘の舞台となるすり鉢状のフィールドを見下ろしていると、後ろから思わぬ人物に話かけられた。

カレンさんとアレンさん、月城さんの大事な部下で先日北淡ダンジョンを一緒に走破した仲でもある。

共にB級探索者でカレンさんは主に補助と回復を、アレンさんは魔法攻撃を得意としている。

まぁ俺は最後まで走破したわけじゃないけれど、あの不安定な中で命を預け合ったアレンさんとはそれなりに仲良くなったし、カレンさんは相変わらずのようだが、弟を助けてくれたという事で少しだけ心を開いてくれた感じはある。

どちらも月城さんに認められる実力者、二人がいるのは非常にありがたい事だ。

「大丈夫かどうかはわからないが初めてなりに頑張るつもりだ。しかし参加者が少ないってのは珍しい事なのか?」

「どうだろう、僕達も数える程度しか参加してないけど毎回多い印象があります」

「私も毎回参加権の取り合いになる印象でした」

「となると今回がよほど珍しい状況なのか」

ぶっちゃけどういう感じなのかさっぱりわからないので不安はあるけれど、まぁ何とかなるだろう。

「グリーンベアーまであと三十分、集合お願いします!」

ギルド職員らしき人が参加者へ声をかけると、散り散りになっていた探索者達が高台の方に集まってくる。

離れているとあまり多いように感じなかったけど密集すると中々の人数だ。

「今回の参加者は54名、蒼天の剣からも応援を頼んでいますので最低戦力の保証は出来ています。しかしながら増援、撤退の出来ない階層主戦ですので各自くれぐれも無謀な攻撃は控えるようお願いします。後衛職はタンクがヘイトを固定してからこの高台からの援護を、サポーターは右の高台から、前衛は密集せず広範囲に広がりながらヒット&ウェーを心がけてください。タンクの方挙手をお願いします」

問いかけに手を挙げたのはルナと桜さんを含めて7名、バランス的には悪くなさそうだ

「ヘイト管理は各自でお願いします、稀に回避不能なスキルを使用しますので受け流しが必須になります。くれぐれもご注意を」

「前衛アタッカーは好きにしていいのか?」

「これだけタンクがいれば大丈夫でしょう。ですが過度の攻撃によりヘイトを貰い引っ掻き回すようなことが無いようにお願いします」

「支援分担は?」

「緊急時のサブタンクは誰が?」

次から次へと出てくる質問に対しギルド職員が嫌な顔をせずてきぱきと回答していく。

武器を背負っているところから察するにこの人も戦力の一人という事なんだろう。

ゲームと違って失敗すれば全員死ぬ、Cランクとはいえこの人数を一気に失うのはギルドとしても望んでいないだろうからその辺の補助はしっかりしてくれるんだろう。

因みにサポーターからの支援は各自が自分でそこまで言って支援や回復をお願いする感じらしい。

複数人での一斉支援により瞬間火力を上げて即時離脱、張り付かないで戦うということをしてこなかったので最初は様子を見ながら戦うほうがよさそうだ。

ひとまず打ち合わせは終了、各自が持ち場に移動する。

「それじゃあ凛ちゃん頑張って!」

「皆さんもどうぞお気を付けください」

須磨寺さんは後衛の護衛という事で高台待機、桜さんとルナは階層主が出るであろうすり鉢の中心で向かい合うようにして離れている。

「リル、くれぐれも無茶するなよ」

「ワフ!」

桜さんとルナの間ぐらいの距離に陣取り、その時を静かに待つ。

これだけの人数がいればよほどのことがない限り大丈夫だとは思うけど、油断は禁物だ。

「あの、新明さんですか?」

「ん?そうだが?」

「やっぱり!前にヘップダンジョンで戦っているのをお見掛けしてもしかしてって思ったんです!サイン貰っていいですか!」

「は?サイン!?」

気合十分で階層主の出現を待っていたら突然後ろから話しかけられた。

振り返った先に居たのは桜さんよりも若そうな女性探索者、目をキラキラさせながらリルと俺を交互に見たかと思ったら信じられないお願いをしてきた。

いや、サインて芸能人じゃないんだが?

確かにリルと一緒に立っていると目立ってしまうのかチラチラこちらを見て来る探索者がいるんだけど、そんないいもんじゃないぞ?

「あー、悪いんだがそういうのはやってないんだ」

「そうですか・・・。じゃあリルちゃんをモフモフしていいですか?」

「モフって・・・まぁ触るぐらいなら?」

「ありがとうございます!わ、ふかふか!おてておっきい!」

話しかけてきた探索者がかなり小柄だったので、まるで子供に触られる大きな犬みたいになっている。

リルも黙ってそれを受けて入れているけれど、段々嫌そうな雰囲気を出して来た。

「そろそろ始まるからそれぐらいにしてもらえるか?」

「あ!ごめんなさい、ありがとうございました」

礼儀正しく頭を下げてその場を離れる女性探索者、やれやれ戦う前から疲れた気がする。

他にも触りたそうな探索者が期待を込めた目でこちらを見て来るけれどあえて気づかないふりをしてスルーする。

これを許してしまったら取り返しのつかないことになってしまう、それだけは間違いない。

「あと一分!」

それを戒めるように階層主出現を知らせるカウントダウンが開始。

それぞれが気合を入れなおし武器を構え、サポーターたちは順次詠唱を開始。

後衛は少し間をおいてからの攻撃らしいけど、魔術師なんかは詠唱が投げれば長いほど威力を上げられるので後ろから念仏のようなものが聞こえてくる。

「あと三十秒!」

「リル、帰ったら美味い肉食おうな」

「ワフ!」

「あと十秒!」

カウントダウンが進むにつれ段々と空気が変わっていくのが分かる。

すり鉢の中心に向けて空気が流れ始め、バチバチと火花のようなものが飛んだような気がする。

「3・2・1!」

「来るぞ!」

誰かの叫び声と同時に圧縮された空気が一気に放出され、まるで爆発の衝撃刃のように同心円状に広がっていくのが見えた。

土煙が上がり、その向こうに巨大な黒い影が現れる。

人生初の大規模討伐、その戦いの火ぶたが今切って落とされた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

処理中です...