収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア

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13実は思わぬ人を助けていました

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転送装置を使って地上に戻った俺を待っていたのはいつものギルド職員だった。

「やぁ、おかえり。」

「どうしたんです?」

「疲れているところ悪いんだけど君に来客があってね、査定とかは全部こっちでやっておくから先に挨拶だけ行ってくれないかな。」

「それって断れないやつですか?」

「断れないこともないけど、職員としてはお勧めできないかな。それに悪い話じゃないんだ、それだけは安心していいよ。」

外はもう夕方。

階層主のストーンゴーレムを倒しただけでなく魔の六階層を駆け抜けた俺は疲労困憊、さっさと熱いシャワーを浴びて帰りたい所ではあるのだがわざわざ職員が出てくるのを待ち構えているぐらいなのだからよほどの相手なんだろう。

まさかスキルの事がバレたんだろうか。

悪い話ではないというけれど実は!なんてのはあり得る話だし・・・。

疲れからかまたネガティブな事ばかり考えてしまうけれど職員に案内されるがまま探索者ギルドの建物に入りいつもの買取カウンター、ではなくさらに奥の方へと通される。

この奥は研修を受けた会議室、その奥には応接室があるって壁には書いてあるけれどどう考えても前者じゃないよな。

無言のまま先を歩いていた職員がなんとも豪華な扉の前で立ち止まると、くるりと反転して俺の方を見る。

「ライセンスはまた後で回収するからとりあえず買取品と武器だけここで置いてもらえるかな。とりあえず値段だけつけるだけだから返してほしい物がある場合は申告してくれれば問題ないよ。」

「あの、中にアングリーバードの卵が入っているんで気を付けてください。」

「え、もうそんなところまで行ったのかい?ストーンゴーレムはかなりの強敵だったと思うけど、やるなぁ。」

流石の職員もいつもの作り笑いではなく本当に驚いた表情をして見せた。

探索者になって今日で三日、確かにハイペースではあるけれど公式の記録では武庫ダンジョンは一日で走破されている。

あくまでも実力者が上から下まで走り抜けたってだけなので俺みたいな新人の記録ではないんだけども。

武器とカバンを預けると職員が豪華な扉をノックする。

「失礼します、神明和人様をお連れしました。」

「思ったより早かったな、入ってくれ。」

「神明さんどうぞ。」

職員が扉を開け誘導されるがまま中へ入る。

見た事も無いような綺麗な部屋には大きなソファーセットが置かれており、二人の男女が座っているのが見えた。

「では私はこれで。」

「え?」

「素材の買取もありますから、卵を割る前に失礼します。」

「あ、ちょっと!」

てっきり紹介してくれるのかと思ったらいつもの作り笑いを受けべながら部屋を出て行ってしまった。

いくら査定があるからっていきなりここに放置はないだろう。

「そんなに緊張しないでこっちに来てくれ。」

「あ、はい。」

言われるがまま向かい合うようにソファーの前に移動、恰幅のいいその男性が静かに手を差し出したのでとりあえず座る事にした。

見た目はものすごく怖そうな感じなのだがどこかで見た気がしないでもない、でもこんな強面なら忘れないと思うんだがなぁ。

ふかふかのソファーに腰を沈ませた途端どっと疲れが押し寄せてくるも全然気を抜くことができないのが逆にしんどい。

「ダンジョンの帰りだそうだな、今日はどこまで潜ったんだ?」

「四階層から六階層まで潜って転送装置で戻ってきました。」

「もうそんなところまで潜ったのか。ストーンゴーレムはかなりの強敵だがまさか一人で?」

「まぁ、なんとか。」

「うーむ、娘と一緒に探索者になったとは思えない実力。さぞすごいスキルを持っているんだろう。」

ん?娘?

緊張しすぎて周りが見えていなかったが、よく見ると横にいるのはこの間助けた女の子だった。

俺と目線が合うと静かに微笑んで頭を下げる。

ポンと9万円出せるぐらいだから金持ちだとは思っていたが父親と共にお礼を言いに来たのだろうか。

いや、もしかしたらキスしたのがよくなかったのかもしれない。

娘を傷物にして、責任を取れ!とか言われたらどうすればいいんだろうか。

でもあれは不可抗力というか、そうしないと娘さんが死んでしまうから仕方なくというか。

「え、いや、そんな・・・。」

「あぁ無理に言う必要はない。珍しいスキルの場合は公表すると色々と面倒なことになるからな、気にしないでくれ。今日ここに来てもらったのは娘を救ってくれたお礼をしたかったからだ。誰に似たのか頑固な娘でな、どうしても探索者になりたいと言って勝手に講習を受け、更にはスキルを手に入れた嬉しさのあまりダンジョンに潜りあのような状況になってしまったらしい。こちらとしても護衛の一人でもつければよかったのだが、まさかこんなことになるとは思わず君がいなかったら大変なことになっていただろう。本当によく助けてくれた。」

「本当にありがとうございました、あの日はお礼も言えずごめんなさい。」

深々と頭を下げる二人につられるように俺まで頭を下げてしまった。

どうしよう、お礼を言われるのは嬉しいけどぶっちゃけ面倒なのでさっさと帰って休みたい。

「探索者同士助け合うのは当然の事なので気にしないでください。それに、もう救助報酬はもらったので。」

「いやいや、あれは一時的な物だ。大事な娘を助けてもらってあの程度じゃ大道寺グループの沽券に関わる。どうかこれを受け取ってくれ。」

「え、大道寺グループ?」

「自己紹介がまだだったな、私は大道寺剛太郎だいどうじごうたろう。名前こそ大それた感じだが、まぁ君たち向けの装備や道具を作らせてもらっている。そしてこの子が・・・。」

「桜です。このまえ3階層だったのにもう七階層まで潜ったんですね。」

ちょ、ちょっと待ってくれ。

大道寺グループだって?

それってこの間俺が靴を買ったドワナロクを経営する探索者御用達の装備メーカーじゃないか。

これまでの装備メーカーと違っていい物を安く提供してくれるおかげで今までより安全にダンジョンに潜ることができるようになった。

如何に快適に探索できるか、常に俺達目線の商品を開発してくれているからもうここの商品しか買わないっていう人も多いらしい。

そんなすごい会社の代表だって?そしてその娘を俺が助けた?

いやいや、漫画でもあり得ないだろこんなこと。

俺はただ相互補助の義務から助けただけでまさかこんなことになるなんて思っても見なかった。

「えっと、貴方が大道寺グループの社長さんで、そしてこの間助けたのが娘さん?」

「はい!」

「娘がこうして生きているのはすべて君のおかげ、私としてはもっとお礼をしたいのだが、いくら娘の命の恩人とはいえ立場上いち探索者に便宜を図るのは禁止されていてね。この程度で大変申し訳ないんだがどうか受け取ってほしい。」

そういって社長が差し出したのは金色に輝く一枚のカードと小さな鍵。

ライセンスカードにも似ているけれどなんとも豪華な感じだ。

「これは?」

「うちのゴールドカードだ、これを表示すればうちの関連企業で特別な割引を受けられる。」

「じゃあこっちの鍵は?」

「悪いと思ったんだが君の事は色々と調べさせてもらったよ。これまで色々と苦労をしてきたようだが、わずか三日で六階層まで到達する実力者にはそれにふさわしい生活が必要だと思っている。狭い所で申し訳ないがうちの社宅にしていた物件だ、今後はそこで生活するといい。」

偶然助けたのが大企業の娘で、さらにそのお礼として特別なカードに家まで?

これは夢だ、そうに違いない。

思わず自分の頬をつねってみたがジンジンとした痛みが広がってくる。

その様子がおかしかったのか、桜さんがくすくすと笑いだした。

探索者になればタワマンに住むことだってできる、今までの人生を変えるべくそれを夢見てここまできたんだけどまさかこんなに早くあの家からおさらばする日が来るなんて。

「まぁ驚くのも無理はない。だが、さっきも言ったように実力のある者は然るべき待遇を受けるべきだと考えている。それが結果としてより良い成果を生み出し持ち帰った素材が我々の生活を潤し世界がより良い方向に回りだす。その手助けをするのが我々大道寺グループなわけだが・・・お礼のついでに一つ頼みたいことがあるんだ。実力のある君ならもちろん聞いてくれるね。」

そういうと社長はなんとも意地の悪い顔をこちらに向けてきた。

美味い話には裏がある。

その言葉の意味を理解するのにそう時間はかからなかった。
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