収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア

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48.カマキリのスキルは実用的でした

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「さて、今日も頑張りますか。」

篠山ダンジョンアタック二回目。

残り時間を考えるとあまりゆっくりしていられないけれど、武庫ダンジョンのように絶対達成しなければならないわけではないので幾分か心に余裕がある。

もちろんやるからには達成したいので準備は万端、一応今日の目標は7階層に到達して転送装置で戻ってくることだが、問題はメガネさんこと東宮さんに注意された6階層だろう。

あそこから一気に雰囲気が変わってくるので注意しなければ。

まずは一階層でスノーラビットから保温スキルを収奪、それから転送装置に乗って四階層へと向かった。

「リル、出てきていいぞ。」

他と比べても探索者が多いはずの篠山ダンジョンでもここまで来るとほとんど探索者と出くわすことはない。

ブレスレットから召喚されたリルは全身をフルフルと震わせてから大きく伸びをし、それから俺の方を見てにこりと笑う。

犬はいいなぁ、表情豊かだから見ている方も元気をもらえるなぁ。

頭と顔をわしゃわしゃと撫でてやってから装備を整えて四階層への一歩を進む、雪原・岩場・氷湖ときて次は何かと思ったら今度は鬱蒼と茂る森の中のようだ。

保温スキルのおかげで寒さは感じないけれど今まで以上に雪が積もり心なしか吹雪ているように見えなくもない。

森の中だから直接雪の影響を受けるわけではないけれども、視界が悪くなり明らかに探索速度は落ちてしまうけれどもそこはしっかりと準備してきたので何とかなるだろう。

ここを抜ければいよいよ階層主の待つ五階層だ。

「それじゃあ索敵よろしくな。」

「わふ!」

雪が積もってしまうと足元の罠なんて確認しようもないのだが、幸いにも篠山ダンジョンで地面設置型の罠は発見されていないうえに元々罠が少ないそうなのであまり気にしなくてもよさそうだ。

ズボっと雪にはまりながらも一歩一歩確実に森の中を進んでいく。

ここに出るのはスノーマンティス、雪の中に隠れて獲物を狩る人間サイズのカマキリだ。

なんせ色が真っ白なだけにどこから出てくるかわかり辛く、奇襲を受けやすいので注意が必要と言われているけれど二階層のホワイトウルフに比べると難易度はまだマシな方らしい。

そう聞いていた三階層で苦戦したので真に受けるわけにはいかないのだが数が出てくるわけではないのでじっくり戦えば大丈夫だろう。

「来たか。」

先を行くリルが重心を低く構えると同時に木の陰からユラリと白い何かが姿を現した。

真っ白い体に真っ赤な目、透明な鎌を手にしたスノーマンティスは口をカチカチと鳴らしながら鎌を振り上げて威嚇してくる。

「最初は様子見だ、絶対無茶するなよ。」

そういうや否やリルがジェット機の様なスピードでカマキリに突っ込んでいく。

同じくものすごい速さで振り下ろされた鎌を再度ステップで華麗に避け、雪の上にもかかわらず即座に反転して足の部分にかみつくと青い血液が雪の上に飛び散った。

うーん、心なしか前よりも強くなっているような気がするんだよなぁ、体もちょっと大きくなってるしテイムした魔物も一緒に成長するんだろうか。

なんて余計なことを考えながら熾烈な戦いを繰り広げるカマキリの死角からゆっくりと近づき、赤水晶の棍を勢いよくぶちかます。

「ギギギ!」

リルの攻撃を避けようとしたところで後ろから衝撃を受け更には殴られた部分から火柱が立ち上る。

これぞ赤水晶の本当の力、水晶の魔力を使うことで疑似的な魔法効果を与えることが出来るの優れモノだ。

まぁ使いすぎると魔力がなくなってしまうけれども倒した魔物の魔素から回復もできるので使いすぎなければ永久的に使えるといってもいいだろう。

火属性武器は篠山ダンジョン必須装備の一つ、突然の攻撃にカマキリがバランスを崩した所を狙ってリルが首元にとびかかりそのまま雪の上に引きずり倒した。

「よし!」

じたばたと暴れるカマキリの背中側から近づき収奪スキルを発動。

その直後リルの噛みつきが緩んでしまったので急ぎ頭を叩き潰した。

【スノーマンティスのスキルを収奪しました。切り裂き、ストック上限は後三つです。】

うーん、なんとも安直なスキル。

雪に隠れているので擬態とかそういうスキルを期待したんだがどうやらそうではなかったらしい。

これって突進と同じく複数の魔物が使うんだと思うんだけど、実際の所効果はどんなもんだろうか。

倒したカマキリは雪の下に吸い込まれ代わりに羽と鎌を置いていったようだ。

中々に重くて大きい鎌をカバンに押し込み改めて武器を構えてスキルを唱える。

【スノーマンティスのスキルを使用しました。ストックはありません。】

すると、目に見えない何かが目の前の木々を切り裂きながら飛んでいくのが確認できた。

突進は自分が動いたけどこれは何かが見えない刃か何かが空中を切り裂いていくらしい。

うーむ、相変わらず魔物のスキルは優秀でうらやましい。

自分たちもスキルを使っておいてこういうのもあれだけど、明らかに性能は魔物の方が上だ。

そしてそれを利用できる俺もまた他の人よりも強くなれる。

だからこそ探索者になって一か月やそこらの新人が単独走破なんてことにチャレンジできるわけだけど。

「次からは合図を送ったら魔物からすぐに離れるように。さっき見た言い見えない攻撃が飛んでくかもしれないから注意して戦うんだぞ。」

「ワフ!」

「よし、階段探して次に行くか。」

基本的に棍を使った接近戦しかできなかったのに、ここにきて遠距離攻撃が出来るようになったことで戦いの幅は大きく広がるだろう。

スキルに回数制限があるとはいえ安全地帯から攻撃できるのは非常に大きい。

特に今回のように足場の悪い場所ほど重宝するスキルだけに、次の階層主までにはしっかり確保しておかなければ。

というわけで、率先して敵を探しつつ階段を探して進むこと2時間ほど。

途中何度か休憩をはさみながらもなんとか五階層への階段に到達することができた。

視界が悪くさらに雪深い森の中を敵の奇襲におびえながら進むのは思っている以上にメンタルに来るようだ。

リルがいるので事前に気づけるとはいえそれでも警戒しないわけにはいかないし、何より足が痛い。

保温スキルのおかげか雪で足が冷えて凍傷に!という感じではないけれど、それでも仲間でぐしょぐしょになってしまっているのは非常に不快だった。

もし保温スキルが無かったらいったいどうなっていたんだろうか。

「さて、次はいよいよお待ちかねの階層主だ。」

敵が来ないのをいいことに階段に腰掛けながら少し離れたところにコンロを設置して休憩をとる。

不思議と階段部分には冷気が入ってこないのか座ってもお尻が冷たくなるようなことはなく体が冷えてしまうという心配もない。

それでも砂糖を山ほど入れた温かいコーヒーは疲れた心と体にしみわたり、思わず声が漏れてしまった。

足元ではリルが持ってきた肉を美味しそうに頬張っている。

他の階層だと魔物から肉がドロップしたけど残念ながらカマキリの肉は落ちなかったようだ。

まぁあっても食べないけど。

程ほどに腹ごしらえを済ませて装備を確認、最後にカバンを背負いなおして気合を入れる。

五階層で待ち受けるのは階層主ツンドラベア。

一応下調べはしてきたけれど熊系の魔物と対峙するのは生まれて初めての経験だ。

外でもであったことがないだけに果たしてどんな大きさなんだろうか。

期待を不安を抱きながら階段を下りていった。
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