収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア

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131.巨大な階層主と対峙しました

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川西ダンジョン十階層。

いよいよD級ダンジョン二度目の階層主と対峙するときが来た。

休憩しながら予習はしておいたのでおそらく大丈夫だと思うけどあとはやることをやるだけ、ぶっちゃけここに来るまでにいろいろありすぎたのでサクッと終わらせて帰りたいところだ。

毎度おなじみのトラップ机の横に陣取って装備の点検をしていると片付け途中の携帯コンロを手に須磨寺さんがこちらをのぞき込んできた。

「和人君もなんだかんだ貫禄がついてきたねぇ。収奪スキルもあるしこの分だとCランクも目前かな」

「結局それも収奪スキルがあるおかげだし実力を考えたらまだまだだろう」

「それを言ったら他も同じだよ。偶然当たりスキルを引いただけでCランクぐらいにはなれちゃうけど、問題はそこから上。でもまぁ和人君なら大丈夫だよきっと」

「断定はしてくれないんだな」

「流石にそんな無責任なことは言えないよ。でも出来るって僕は信じてるから、応援してるね」

元Bランク探索者の言葉だけに非常に重みがある。

彼の言うようにCランクになる探索者はそれなりにいるけれど、そこから上に上がれるのはほんのひと握り。

この前話をした月城さんのインタビューにも書いてあったがそこに行けるのは意地汚く生き残ろうともがくことができる人だけらしい。

カッコつけて戦えるのはせいぜいここまで、Cランクからが探索者としての本当の始まりなんだとか。

意地汚く生き残る、か。

それに関して言えばかなり得意な方なのでスタートラインには何とか立てそうな感じだな。

「よっし、準備完了!」

「忘れ物はない?ハンカチは持った?」

「ダンジョン内で聞く内容じゃないな」

「えへへ、和ませようと思って。でもその必要はなかったみたいだね」

「ここまで来たからにはやることをやるだけ、階層主はアヌビスだったっけか」

「そうそう、巨大な錫杖を振り回して襲ってくる犬の仮面をかぶった巨人だよ。あれ、狼だっけ?」

俺のつたない知識だと確か狼だったはずだ。

ミイラ作りを司る神様であり死者の国の王、だったっけか。

ひとつ前の階層主が巨大マミーだったことを考えるとそれを作ったのはもしかするとこいつなのかもしれないなぁ。

気を付けるべきは振り回される錫杖と踏みつけ攻撃。

それと、巨大マミーの時のように生み出される大量の雑魚。

はぁ、また奴らと戦わないとだめなのか。

「一応途中に出てくるやつらも素材をドロップするんだっけ?」

「うん、レアものが落ちたって話は聞かないけど貯めればそこそこのお金になるから沸かし続ける人もいるよ。でもみんな同じことを考えてるからあんまり高値で売れないんだよねぇ」

「ま、考えることは皆同じってことだ」

前回は運搬人がいなかったのでカバンがパンパンになってしまったけれど、今回は彼がいるのでその辺を気にせず倒すことができる。

安いとはいえ金になることに変わりはない、可能な限り倒して懐を温かくしようじゃないか。

「それじゃあはい、和人君用の聖水」

「目が光ったらすぐにかけるんだったっけ」

「そうそう、あとは攻撃用だね。これをかけて殴れば多種なりともダメージは与えられるはず、マミーみたいに簡単には燃えないからその対策だよ」

「やっぱりあいつ燃やして倒すのか」

「蓋が開いたらすぐに火の魔法、それを逃すと燃えにくいからタイミングを誤ると大変だけどそれをするとちっちゃいのが出てこないから難しいところだよね」

俺の場合はイレギュラーが重なってしまったけれど燃やして倒すのはやはり正解だったようだ。

そんなわけで諸々の準備を整えていざ決戦へ。

巨大な扉を押し開けた先に待っていたのは巨大なアヌビス石像。

見覚えのある犬の仮面をかぶり胸の前で両手を交差させ、右手に錫杖左手にアンフを持っている。

大きさはゆうに5mを超え、昔高知で見た偉人の石像を思い出す大きさだ。

「リルはできるだけ雑魚の相手を頼む。ただし、奴が頭を下げた時はねらい目だから手伝ってくれよ。」

「わふぅ!」

「それと目が光ったらすぐ須磨寺さんの所か俺のところに来るんだぞ、じゃないと石になるからな」

「わふ!」

「よっしゃ、サクッとやって焼肉パーティーとしゃれこもうぜ!」

「おっにく~!」

まるでリルの心を代弁するかのような須磨寺さんの返事を背中で聞きながら二節棍を手に石像へと走り始めると、見る見るうちに石像に色が付き始め鋭い眼光でこちらを睨みつけてきた。

って、初手からそれかよ!

素早くポケットから聖水の入った小瓶を取り出し自分に振りかけ、更には横を走るリルに残りをぶちまける。

と、同時に眼光がキラリと光り突然体が重たくなった。

動けないほどじゃないけれど明らかに動くのが遅くなりよく見ると棍を持つ手が見る見るうちに石へと変わっていくのが分かる。

石化の魔眼。

なんでも呪いの一種らしく見た者を石に変えるとかいうメデューサもびっくりの技だけど、聖水をかけているおかげですぐに石化は解かれパキパキと小石をまき散らしながら元の速さで動けるようになった。

リルがぶるぶると体を震わせながら石を振り払いお返しとばかりに突進、土煙を上げながら振り下ろされる錫杖を軽いステップで避けながらすれ違いざまに鋭い爪で切りかかる。

だが、まだ足元は石のままらしくキズが入る程度でダメージは与えられなかったようだ。

「バカでかい図体のくせに足元は石のままとかズル過ぎるだろ!」

接近戦を前提にしているので魔装銃は外に置いてきてしまった。

とはいえあれでダメージを与えられる気がしないのでとりあえず足元を動き回りながら弱点の頭を下げるタイミングを待つしかない。

魔眼を避けるべく背中側に回り込むとそのまま俺を狙うかのように体をねじる。

その隙を逃さず反対側からリルが高々とジャンプをして爪で攻撃、わき腹付近は石ではなかったようで露骨に嫌そうな顔をして錫杖を振り回し始めた。

素早く当たらない部分まで後退し、常に死角に入るよう移動すると今度は左手のアンフを高々と上に掲げる。

「雑魚が出てて来るよ!」

「了解!」

アンフが鈍い光を放ったかと思ったらボコボコと音を立てながらそこらじゅうの地面が盛り上がり、下からゾンビやミイラが姿を現した。

流石死者の国の王、ゾンビもミイラもお手の物ってか?

とはいえ出てきたのは通常の個体よりも小さいサイズで、試しに近くに出たやつを攻撃するとさほど力を入れずに吹き飛ばすことができたので予想通りそこまで強い個体ではないらしい。

とはいえ数は正義。

足元に群がられたら思うように動けないし小さいとはいえ攻撃されれば傷を負う。

ゲームのように体力のぎりぎりまで攻撃を食らってもピンピンしているというわけではないので可能な限り攻撃は避けなければ。

「リル、とりあえ雑魚から潰すぞ!」

「わふ!」

まずは数を減らしつつ攻撃の機会を待ち、錫杖を叩きつけるような攻撃を誘ったら弱点の頭部を集中攻撃。

もちろん向こうもやられっぱなしではなく、死角に入られたら雑魚を召喚するし逃げ回って前に出たら錫杖を振り回しつつ魔眼で足止めしてくる。

そしてその隙を逃さず雑魚が群がってくるという中々意地の悪い攻撃が続くけれど決して勝てないとは思わなかった。

こいつは倒せる。

そんな自信を胸に抱きながらアヌビスを攻撃し続けるのだった。
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