収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア

文字の大きさ
172 / 290

171.燃える馬と対峙居ました

しおりを挟む
城崎ダンジョン十階層。

ここを超えればいよいよDランクダンジョンも終盤に突入だ。

その前に立ちふさがるのがおなじみの大きな門、ご丁寧に例の罠付きテーブルも用意されている。

先の階層で必要なスキルは諸々回収、須磨寺さんの用意してくれる食事をいただきながらテーブルの横に座って最後の打ち合わせを行うことにした。

十階層の階層主はフレイムホース。

その名の通り全身が燃えている馬で、火属性の魔法を乱発しながら体当たりしてくる中々厄介な相手。

とはいえここはD級ダンジョン、水と氷どちらかの属性攻撃に弱いので対策をしていれば基本的には何とかなる、と言われている。

「近づくだけで火傷するってことはあまり攻撃を受け流さないほうがいいってことだよな。」

「本来であればそうだね。大楯であればギリギリその熱も防げるけど桜ちゃんの盾になると厳しいだろうから、基本は回避で対応するしかなかな。でもリルちゃんのブレスもあるしここのボスとは相性良いと思うよ。」

「ここから下の階層は全部火属性、その先鋒をこいつが担うわけか。」

「武器もエンチャントしてあるものが望ましいって言われますしね。」

「ほんと金がかかるよなぁ。」

耐熱装備に水属性武器、それを馬鹿正直にそろえていたら何百万とかかってしまうだろう。

でもそれが安全に走破するために必要な手段であり、それをケチることで命に危険が及ぶことになる。

命を取るか金をとるか、探索者が常に悩まされるところだ。

「まぁそれは下の階層からだから、ともかく今は目の前の階層主をしっかり倒すこと。」

「だな。基本はリルが攻撃を引き付けてブレスで炎を消し、それを確認したら俺と桜さんで攻撃。それまでは魔装銃で援護するから頑張ってくれよ。」

「ワフ!」

「私も出来るだけ頑張ります。」

「炎が消えてからは桜さんの力が必要だから弱点めがけてガンガンやっちゃってくれ。」

「はい!」

このメンバーで誰一人足手まといなんていない。

誰もがそれぞれの力を発揮してここまでやってきたんだ、それはこの後も全く変わらない。

ともかくこの先を戦っていくにはこの階層主を越えなければ始まらないし越えられないってことは先には進めないという事。

リルがいれば大丈夫だろうけど無理せずにいくとしよう。

準備ができたところでゆっくり扉に手を当てると、ほんのり温かいことに気が付いた。

いつもはヒンヤリしているはずの扉がこんな状況ってことは・・・。

「あっつ!なんだこれ!」

「これが十一階層からの景色だよ。」

「話には聞いていたけどマジでこの中を探索するのか。」

扉を開けると同時に中からあふれ出て来る熱気、まるでサウナの扉を開けた時のような暑さにジリジリと肌が焼かれていくのを感じる。

いつもと変わらない巨大ドームだが、地面はマグマが固まった後のように凸凹しており壁や天井は真っ赤、なんならその壁から蒸気が吹き出しているようにも見えるんだが。

数分なら耐えられてもこのまま数時間も探索するってのは流石に無理がある、こりゃ本気で耐熱装備を用意しないと難しそうだ。

そんなドームのど真ん中には、白馬が一頭丸くなるように眠っている。

ぱっと見ではまだ燃えている様子はないけれど近づくと変わるんだろうなぁ。

「桜さん、準備は?」

「いつでも行けます。」

「リル、先手必勝だ。突入したら一気にやるぞ。」

「ワフ!」

敵が油断している最初に全力をぶつけてそれが出来なければ撤退だ。

扉をあけ放ち熱気に負けないよう気合を入れてからリルに合図を出す。

彼女が駆け出した次の瞬間、白馬が上半身を起こし一瞬にして体が真っ赤な炎に包まれた。

「くるぞ!」

リルが接敵するよりも早く真っ赤な炎がいくつも塊を作りこちらに向かって射出される。

それを華麗なステップで避けるリルだったが、その頃には向こうも臨戦態勢を整えていた。

「くそ、動きが速すぎるだろ。」

先手必勝と行きたかったが残念ながらそれは叶わず炎をまとった馬がドームの中を勢いよく走りだした。

流石のリルも追いつくことはできず、そいつはドーム内をぐるりと回りながらこちらへ向かってくる。

「桜さん来るぞ!」

走りながら炎の弾をいくつも空中に練り上げるフレイムホース、全身に炎をまといながら体当たりと同時に魔法をぶち込むつもりらしい。

先に飛んでくるものを棍で撃ち落としながらその奥から突っ込んでくる突進を警戒、意識していたおかげで避けることはできたけれどすれ違いざまに腕が焼けるような痛みを感じた。

慌てて手を見ると二の腕に水膨れが出来ている、まさかすれ違うだけで火傷するとは。

「和人さん後ろ!」

やり過ごしたと思ったら再び炎弾が襲い掛かってきたので慌てて腕をクロスさせて頭をかばう。

直撃する前に氷装の小手が自動で氷の盾を作成、それに直撃することで何とか相殺できたようだ。

「あぶな!」

「大丈夫ですか?」

「なんとか。炎弾もやばいけどすれ違うだけで火傷するからあまり近づかないほうがよさそうだ。」

「気を付けます。」

走りながらも炎弾がいくつも練り上げられ今度はリルへと襲い掛かる。

前の記録じゃ一時間以上撃ち続けられたらしいから弾切れを狙うのは難しそうだ。

リルへの突進を終え、壁沿いに再びこちらへ回ってくるフレイムホース。

近接攻撃が難しいののなら遠距離攻撃でやっていくしかない、というわけで魔装銃に武器を持ち換え正面から向かってくるやつに照準をセット。

飛来する炎弾は小手の盾に任せて奴の顔面を狙い続ける。

上下に揺れるタイミングを見計らいトリガーを引くとかすかな振動と共に氷属性が付与された弾が発射、残念ながら直撃こそしなかったものの首元に傷をつけることができた。

「よし!」

近づいてきたのを横っ飛びで回避、それでもすれ違いざまに足に鋭い痛みを感じる。

話には聞いていたけれど攻撃避けるだけでも火傷するとか流石にずる過ぎないか?

立ち上がりながら桜さんの方を見ると、飛来する炎弾を盾て受けているようだが体当たりではないので火傷とかは大丈夫らしい。

【ヒーリングポットのスキルを使用しました。ストックは後五つです。】

回復スキルで手足の火傷を癒しつつ対策を考える。

遠距離攻撃で何とかなるとはいえ致命傷を与えるには直接攻撃が必須、ということでこちらにリルを呼び寄せ、奴の突進をあえて誘導することにした。

なにをするにもまずはあの炎を何とかしなければ。

「すれ違いざまに思いっきりブレスを吐いてやれ。」

「頑張ってリルちゃん!」

「ガウ!」

体を真っ赤に燃やしながら突っ込んでくるフレイムホース。

狙いを定めた奴が頭を下げたその瞬間、リルの凍てつくブレスが襲い掛かった。

炎と氷。

ジュワァァァァ!という音と共に相反する二つがぶつかり合い真っ白い水蒸気が視界を奪う。

そりゃ日に水を掛けたらこうなるよな!と後悔してももう遅い。

突然目の前が真っ白になり慌てて再び右側へ回避、さっき自分がいた所を何かが駆け抜けたがその勢いで水蒸気が天井まで巻き上げられる。

慌てて起き上がり向こうを見ると、水蒸気が晴れた先には炎が弱まったフレイムホースの姿があった。

「よし、効果あり!」

「ガウガウ!」

「炎さえなくなればこっちのもんだ、うちのリルをなめるなよ!」

普通の探索者では絶対に出来ない戦い方、本来はあの炎と魔法に追いかけまわされながら戦うものなんだろうけどそれもリルがいれば心配ご無用。

あとでしっかりほめてやらないとな。

「リルはひたすらブレスをたのむ、奴に炎をまとわせるなよ。」

「ガウ!」

炎のない馬などただの馬。

やる気十分のリルを横目に棍に持ち替えて桜さんとうなずき合うと、悔しそうに地面を蹴る奴めがけて同時に走り出した。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

処理中です...