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6.これからの話し合い(ジェラルド)
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「ジェラルドが気がついてくれなかったら、ジュリアンヌは死んでいただろう」
「いえ、あれはたまたまでした」
本当に偶然だったとしか言えないけれど、気がつけてよかったと思う。
「あの男は私がアジェ伯爵家に忍び込ませていた者だ。
ジュリアンヌのことを知らないか連絡を取ろうとしていたが上手くいかなくて、
他の者をアジェ伯爵家に送ろうとしていたところだった。
あの男は私と連絡を取れないまま、ジュリアンヌの命の危機だと直接屋敷に連れて来ていた」
「だから、門番に追い返されそうになっていたんですね」
「ああ、緊急の時にどうすればいいか決めていなかったんだ。
送り込んだ時は愛人とイフリア公爵のことを調べるためだけだったから。
あの男もまさかジュリアンヌがさらわれてくるとは思わなかっただろう」
あの男は門番に追い返されそうになっても必死で食い下がっていた。
あそこであきらめたところで、どこの診療所も開いていない時間だ。
それにこれだけの傷を負っていたら診療所の治療では助からない。
レドアル公爵家に連れてきたのは父上にとって想定外だったかもしれないが、
あの男の判断によってジュリアンヌが助かったともいえる。
「父上、あの男はどうしたんですか?」
「ここにジュリアンヌを連れてきたとバレては困る。
どうやらアジェ伯爵家の使用人から貧民街に捨てて来いと命じられたらしい。
このまま姿を消したら怪しまれてしまうから何事もなかったように戻り、
何か聞かれたら貧民街に捨ててきたと答えろと言ってある」
「では、またアジェ伯爵家に?」
「今のところはな。これだけの働きをしてくれたんだ。
しばらくしたらレドアル公爵家に戻して、他の仕事につかせるつもりだ」
「では、その時は俺の侍従に加えてください」
「ほう。どうしてだ?」
「あの判断力と行動力、それに信頼できそうです」
「そうだな。考えておこう」
父上と話している間もジュリアンヌとは手をつないだまま。
身体の大きな治療はすんでも、意識が戻るのはまだ先だと言われた。
死ななかったのが不思議なくらいの状態だったのだから、
完全に治るのにはかなりの時間が必要になる。
頬の傷は少し治りかけているけれど、目は開きそうにない。
頭に巻かれた包帯からはみ出た短い髪が痛々しく見える。
早く起きて、俺を安心させてくれたらいいのに。
ふと、ジュリアンヌが目覚めた後のことが気になった。
叔母上はイフリア公爵家から追い出されたと言っていたけれど、
このままレドアル公爵家にいられるんだろうか。
「父上、ジュリアンヌはどうなるのですか?」
「どうなるとは?」
「目覚めた後のことです。まさかイフリア公爵家には戻しませんよね?」
「……ロズリーヌはどうしたいんだ?」
叔母上を見ると、何か覚悟を決めたような顔をしている。
「イフリア公爵家には知らせてあるの?」
「いや、知らせていない。犯人がアジェ伯爵夫人だということもあって、
対応をどうしようか悩んでいる。
王命もからんでいるからな。公爵家だけで処罰を決めることは難しい」
「じゃあ、ジュリアンヌはこのまま見つからなかったことにしてほしいの」
「どういうことだ?」
「イフリア公爵家からは離縁すると言われたわ。
ジュリアンヌをきちんと見ていなかった私の責任だと。
王命による結婚だから、私のせいにしないと離縁できないから言い出したのでしょうけど。
でも、私もそのほうが都合がいいと思うのよ。
あのままイフリア公爵家にいたら、またジュリアンヌが危険な目にあうかも」
「また危険な目にあうなんて許さないぞ!」
「ええ、私もそう思うわ。だから、お兄様。お願いよ。
離縁した後、ジュリアンヌもレドアル公爵家に入れてくれないかしら」
「ジュリアンヌの籍も入れるとなると向こうの説得が問題だな」
「でも、今は行方不明だし、おそらく生きていないと思っているはずよ。
私が親権をもって離縁したほうが向こうも助かるんじゃないかしら」
「……イフリア公爵家の籍から外した後でなら、
死んで見つかってもイフリア公爵家は関係なくなる、からか」
「きっとヴィクトルはそう思うでしょう」
まるでジュリアンヌが死んだ方がいいような言い方だが、
娘がいなくなっても探しもしなかった公爵ならそうかもしれない。
叔母上はあきらめたような冷めた顔をしているが、父上は悔しそうに唇をゆがめた。
「いくら愛人が大事だとはいえ、なんという非道なことを……。
王命でなければあんな奴に嫁がせることは許さなかったというのに」
「……それはもう言っても仕方ないもの。お兄様のせいじゃないわ。
離縁とジュリアンヌの籍のこと、向こうとの話し合いを任せてもいい?」
「わかった。二人ともうちで引き取ろう。
マーガレット、ジェラルドもそれでいいな?」
「私は大賛成よ。娘をこんな目にあわせても平気な家に戻せるものですか。
籍を入れるのなら、私たちの養女にしてしまいましょう。
生きているとわかった後で返せと言われないように」
「ジュリアンヌが俺の妹になるってことですか。賛成です。
もう二度とこんなことされないように、俺が守ります」
「よし、それではそうしよう。俺の養女として引き取ることにする。
ロズリーヌもそれでいいな?」
「ありがとう、お兄様、お義姉様。
ジェラルド、この子を守ってあげてね」
「はい!」
「いえ、あれはたまたまでした」
本当に偶然だったとしか言えないけれど、気がつけてよかったと思う。
「あの男は私がアジェ伯爵家に忍び込ませていた者だ。
ジュリアンヌのことを知らないか連絡を取ろうとしていたが上手くいかなくて、
他の者をアジェ伯爵家に送ろうとしていたところだった。
あの男は私と連絡を取れないまま、ジュリアンヌの命の危機だと直接屋敷に連れて来ていた」
「だから、門番に追い返されそうになっていたんですね」
「ああ、緊急の時にどうすればいいか決めていなかったんだ。
送り込んだ時は愛人とイフリア公爵のことを調べるためだけだったから。
あの男もまさかジュリアンヌがさらわれてくるとは思わなかっただろう」
あの男は門番に追い返されそうになっても必死で食い下がっていた。
あそこであきらめたところで、どこの診療所も開いていない時間だ。
それにこれだけの傷を負っていたら診療所の治療では助からない。
レドアル公爵家に連れてきたのは父上にとって想定外だったかもしれないが、
あの男の判断によってジュリアンヌが助かったともいえる。
「父上、あの男はどうしたんですか?」
「ここにジュリアンヌを連れてきたとバレては困る。
どうやらアジェ伯爵家の使用人から貧民街に捨てて来いと命じられたらしい。
このまま姿を消したら怪しまれてしまうから何事もなかったように戻り、
何か聞かれたら貧民街に捨ててきたと答えろと言ってある」
「では、またアジェ伯爵家に?」
「今のところはな。これだけの働きをしてくれたんだ。
しばらくしたらレドアル公爵家に戻して、他の仕事につかせるつもりだ」
「では、その時は俺の侍従に加えてください」
「ほう。どうしてだ?」
「あの判断力と行動力、それに信頼できそうです」
「そうだな。考えておこう」
父上と話している間もジュリアンヌとは手をつないだまま。
身体の大きな治療はすんでも、意識が戻るのはまだ先だと言われた。
死ななかったのが不思議なくらいの状態だったのだから、
完全に治るのにはかなりの時間が必要になる。
頬の傷は少し治りかけているけれど、目は開きそうにない。
頭に巻かれた包帯からはみ出た短い髪が痛々しく見える。
早く起きて、俺を安心させてくれたらいいのに。
ふと、ジュリアンヌが目覚めた後のことが気になった。
叔母上はイフリア公爵家から追い出されたと言っていたけれど、
このままレドアル公爵家にいられるんだろうか。
「父上、ジュリアンヌはどうなるのですか?」
「どうなるとは?」
「目覚めた後のことです。まさかイフリア公爵家には戻しませんよね?」
「……ロズリーヌはどうしたいんだ?」
叔母上を見ると、何か覚悟を決めたような顔をしている。
「イフリア公爵家には知らせてあるの?」
「いや、知らせていない。犯人がアジェ伯爵夫人だということもあって、
対応をどうしようか悩んでいる。
王命もからんでいるからな。公爵家だけで処罰を決めることは難しい」
「じゃあ、ジュリアンヌはこのまま見つからなかったことにしてほしいの」
「どういうことだ?」
「イフリア公爵家からは離縁すると言われたわ。
ジュリアンヌをきちんと見ていなかった私の責任だと。
王命による結婚だから、私のせいにしないと離縁できないから言い出したのでしょうけど。
でも、私もそのほうが都合がいいと思うのよ。
あのままイフリア公爵家にいたら、またジュリアンヌが危険な目にあうかも」
「また危険な目にあうなんて許さないぞ!」
「ええ、私もそう思うわ。だから、お兄様。お願いよ。
離縁した後、ジュリアンヌもレドアル公爵家に入れてくれないかしら」
「ジュリアンヌの籍も入れるとなると向こうの説得が問題だな」
「でも、今は行方不明だし、おそらく生きていないと思っているはずよ。
私が親権をもって離縁したほうが向こうも助かるんじゃないかしら」
「……イフリア公爵家の籍から外した後でなら、
死んで見つかってもイフリア公爵家は関係なくなる、からか」
「きっとヴィクトルはそう思うでしょう」
まるでジュリアンヌが死んだ方がいいような言い方だが、
娘がいなくなっても探しもしなかった公爵ならそうかもしれない。
叔母上はあきらめたような冷めた顔をしているが、父上は悔しそうに唇をゆがめた。
「いくら愛人が大事だとはいえ、なんという非道なことを……。
王命でなければあんな奴に嫁がせることは許さなかったというのに」
「……それはもう言っても仕方ないもの。お兄様のせいじゃないわ。
離縁とジュリアンヌの籍のこと、向こうとの話し合いを任せてもいい?」
「わかった。二人ともうちで引き取ろう。
マーガレット、ジェラルドもそれでいいな?」
「私は大賛成よ。娘をこんな目にあわせても平気な家に戻せるものですか。
籍を入れるのなら、私たちの養女にしてしまいましょう。
生きているとわかった後で返せと言われないように」
「ジュリアンヌが俺の妹になるってことですか。賛成です。
もう二度とこんなことされないように、俺が守ります」
「よし、それではそうしよう。俺の養女として引き取ることにする。
ロズリーヌもそれでいいな?」
「ありがとう、お兄様、お義姉様。
ジェラルド、この子を守ってあげてね」
「はい!」
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