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25.拒絶したい
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授業が終わり、マリエット達と帰ろうとしたら、
シュゼット様に呼び止められた。
「待って、ジュリアンヌ様……いいえ、お姉様」
「……は?」
「お姉様に用があるの。帰るのは少し待ってくれる?」
「シュゼット様、何を言っているの?」
甘えるようなシュゼット様の様子に、お姉様?
今度は何を言い出したのかと警戒する私にシュゼット様はにっこり笑った。
「え?聞こえなかった?
お姉様に用があるから帰らないでって言ったの」
「いえ、聞こえたけれど、どうしてお姉様と呼んだの?」
「お姉様でしょう?レイモンお義兄様に聞いたの。
ジュリアンヌ様がイフリア公爵家の長女だって。
だから、私にとってお姉様ってことになるでしょう?」
そういうことか。
ようやく私がイフリア公爵家生まれだと知ったらしい。
だけど、お姉様と呼ばれる理由はない。
「たしかに私はイフリア公爵家生まれだけど、
もう戸籍はレドアル公爵家にあるの。
だから、シュゼット様のお姉様ではないわ」
「戸籍?そんなものはどうでもいいわ。
お父様が同じなんだから姉妹でしょう?」
「っ!?」
なんてことを。
シュゼット様がお父様の実子かもしれないというのは知っているけど、
こんな人前でその話をするとは思わなかった。
青ざめた顔の令息たちが慌ててシュゼット様を止めにはいる。
「シュゼット様!何を言っているんですか!?
ジュリアンヌ様をお姉様と呼んではいけません!」
「どうして?姉妹なのは間違ってないでしょう?
だから仲良くしようと思ったの」
「だから、姉妹ではありません!」
「姉妹よ? ねぇ、そうよね?お姉様」
令息たちに止められても何が悪いのか理解できていないらしい。
きょとんとした顔のシュゼット様が何度も姉妹だと繰り返す。
お父様とお母様の結婚は王命だった。
その結婚生活中に愛人を作り、子まで産ませていたことが公になれば、
いくら伝統派の筆頭家当主といえど処罰しないわけにはいかない。
派閥間の仲が良くない状況で筆頭家当主が処罰なんてことになれば。
ただでさえ弱まっている伝統派の力が削がれることになる。
伝統派の令息たちが必死で止めるのもわかる。
なのに、シュゼット様はそれを理解しようともしない。
ため息がでそうだけど、これだけははっきりしないと。
「シュゼット様がどう思おうと、姉妹ではないわ。
姉だと思うのは迷惑なの。やめてくれる?」
「どうして?せっかく仲良くしてあげようと思ったのに」
「仲良くしなくていいわ」
「ひどいっ。どうしてそんなに性格が悪いの?
お姉様はずっと病気でひとりぼっちだったからって、
そんなにひねくれなくてもいいじゃない」
「これはひねくれているから言っているんじゃないわ。
……シュゼット様に常識がないから言っているのよ」
「ほら!私の悪口言った!ひねくれているじゃない!ひどいわ!」
淑女として微笑を絶やしてはいけないのに、我慢しきれずにため息をついてしまう。
でも、これだけ理解できない相手なら仕方ない気がする。
「もういいかしら。帰りたいのよ」
「待って!お姉様はさみしかったからそんな性格になったのよね?
だから、一緒にいてくれる人を紹介しようと思って!」
「紹介?何を言っているの?」
「お姉様がジェラルド様を離さないのは、
他に一緒にいてくれる人がいないからでしょう?」
「……そ、それは」
その言葉は間違っているとは言えなかった。
私にはジェラルド兄様しかいなかったから、兄様を離してあげられない。
それは多分、事実だもの……。
「だからね、もうお姉様がジェラルド様を困らせることがないように、
ずっとそばにいてくれる人を紹介してあげようと思って」
「それは……シュゼット様が気にすることではないわ。
私、もう帰るから」
「待って!」
無理やり教室から出て行こうとしたら、シュゼット様に腕をつかまれる。
その力が意外と強くて、驚きながら振り返る。
「どうして私の話をちゃんと聞いてくれないの?
待ってって言ってるでしょう」
逃さないという表情を見て、ぞくりとする。
私を見るシュゼット様の緑の目が、なぜか黒く見えて、
マゼンタ様を思い出してしまう。
「私はお姉様のためにしてあげようとしているのに、
どうして素直に従ってくれないのかしら。
姉なら妹のお願いは聞くものでしょう?」
「……離して」
「だから、会わせたい人がいるって言っているでしょう?
すぐにここに来るわ」
「いいから、離して」
「離したら帰ってしまうつもりでしょう?
もう、本当にお姉様ってば意地悪なんだから」
「私はあなたのお姉様じゃないわ!」
「シュゼット様、手を離してください!」
マリエットとコリンヌが必死になってシュゼット様の手を離そうとしてくれる。
それなのに力強いシュゼット様の手はなかなか離れない。
ようやく離れたと思ったら、教室に知らない令息が入って来た。
金髪の髪を一つに結んだ身体の大きな……
「待たせてしまったかな?」
「遅いわよ!大変だったんだから!」
「悪い悪い。あぁ、君がジュリアンヌだね?
俺はサミュエルだ。婚約者だったの覚えているかい?」
ずんずんと大股でこちらに向かって来る令息に、
身体が硬直して動けない……
「ん?どうかしたのか?」
手が伸ばされて……悲鳴をあげたいのに声もでない。
「……ひ………いや……」
大きな手が私の髪にふれそうになって、意識を失った。
シュゼット様に呼び止められた。
「待って、ジュリアンヌ様……いいえ、お姉様」
「……は?」
「お姉様に用があるの。帰るのは少し待ってくれる?」
「シュゼット様、何を言っているの?」
甘えるようなシュゼット様の様子に、お姉様?
今度は何を言い出したのかと警戒する私にシュゼット様はにっこり笑った。
「え?聞こえなかった?
お姉様に用があるから帰らないでって言ったの」
「いえ、聞こえたけれど、どうしてお姉様と呼んだの?」
「お姉様でしょう?レイモンお義兄様に聞いたの。
ジュリアンヌ様がイフリア公爵家の長女だって。
だから、私にとってお姉様ってことになるでしょう?」
そういうことか。
ようやく私がイフリア公爵家生まれだと知ったらしい。
だけど、お姉様と呼ばれる理由はない。
「たしかに私はイフリア公爵家生まれだけど、
もう戸籍はレドアル公爵家にあるの。
だから、シュゼット様のお姉様ではないわ」
「戸籍?そんなものはどうでもいいわ。
お父様が同じなんだから姉妹でしょう?」
「っ!?」
なんてことを。
シュゼット様がお父様の実子かもしれないというのは知っているけど、
こんな人前でその話をするとは思わなかった。
青ざめた顔の令息たちが慌ててシュゼット様を止めにはいる。
「シュゼット様!何を言っているんですか!?
ジュリアンヌ様をお姉様と呼んではいけません!」
「どうして?姉妹なのは間違ってないでしょう?
だから仲良くしようと思ったの」
「だから、姉妹ではありません!」
「姉妹よ? ねぇ、そうよね?お姉様」
令息たちに止められても何が悪いのか理解できていないらしい。
きょとんとした顔のシュゼット様が何度も姉妹だと繰り返す。
お父様とお母様の結婚は王命だった。
その結婚生活中に愛人を作り、子まで産ませていたことが公になれば、
いくら伝統派の筆頭家当主といえど処罰しないわけにはいかない。
派閥間の仲が良くない状況で筆頭家当主が処罰なんてことになれば。
ただでさえ弱まっている伝統派の力が削がれることになる。
伝統派の令息たちが必死で止めるのもわかる。
なのに、シュゼット様はそれを理解しようともしない。
ため息がでそうだけど、これだけははっきりしないと。
「シュゼット様がどう思おうと、姉妹ではないわ。
姉だと思うのは迷惑なの。やめてくれる?」
「どうして?せっかく仲良くしてあげようと思ったのに」
「仲良くしなくていいわ」
「ひどいっ。どうしてそんなに性格が悪いの?
お姉様はずっと病気でひとりぼっちだったからって、
そんなにひねくれなくてもいいじゃない」
「これはひねくれているから言っているんじゃないわ。
……シュゼット様に常識がないから言っているのよ」
「ほら!私の悪口言った!ひねくれているじゃない!ひどいわ!」
淑女として微笑を絶やしてはいけないのに、我慢しきれずにため息をついてしまう。
でも、これだけ理解できない相手なら仕方ない気がする。
「もういいかしら。帰りたいのよ」
「待って!お姉様はさみしかったからそんな性格になったのよね?
だから、一緒にいてくれる人を紹介しようと思って!」
「紹介?何を言っているの?」
「お姉様がジェラルド様を離さないのは、
他に一緒にいてくれる人がいないからでしょう?」
「……そ、それは」
その言葉は間違っているとは言えなかった。
私にはジェラルド兄様しかいなかったから、兄様を離してあげられない。
それは多分、事実だもの……。
「だからね、もうお姉様がジェラルド様を困らせることがないように、
ずっとそばにいてくれる人を紹介してあげようと思って」
「それは……シュゼット様が気にすることではないわ。
私、もう帰るから」
「待って!」
無理やり教室から出て行こうとしたら、シュゼット様に腕をつかまれる。
その力が意外と強くて、驚きながら振り返る。
「どうして私の話をちゃんと聞いてくれないの?
待ってって言ってるでしょう」
逃さないという表情を見て、ぞくりとする。
私を見るシュゼット様の緑の目が、なぜか黒く見えて、
マゼンタ様を思い出してしまう。
「私はお姉様のためにしてあげようとしているのに、
どうして素直に従ってくれないのかしら。
姉なら妹のお願いは聞くものでしょう?」
「……離して」
「だから、会わせたい人がいるって言っているでしょう?
すぐにここに来るわ」
「いいから、離して」
「離したら帰ってしまうつもりでしょう?
もう、本当にお姉様ってば意地悪なんだから」
「私はあなたのお姉様じゃないわ!」
「シュゼット様、手を離してください!」
マリエットとコリンヌが必死になってシュゼット様の手を離そうとしてくれる。
それなのに力強いシュゼット様の手はなかなか離れない。
ようやく離れたと思ったら、教室に知らない令息が入って来た。
金髪の髪を一つに結んだ身体の大きな……
「待たせてしまったかな?」
「遅いわよ!大変だったんだから!」
「悪い悪い。あぁ、君がジュリアンヌだね?
俺はサミュエルだ。婚約者だったの覚えているかい?」
ずんずんと大股でこちらに向かって来る令息に、
身体が硬直して動けない……
「ん?どうかしたのか?」
手が伸ばされて……悲鳴をあげたいのに声もでない。
「……ひ………いや……」
大きな手が私の髪にふれそうになって、意識を失った。
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