これが運命ではなかったとしても

gacchi(がっち)

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17.出会ってしまった

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「では、私がアルフレッド様の婚約者になったことは?」

「…………は?」

予想通り聞いていなかったらしい。
とても可愛らしい顔立ちなのに、眉間のしわが怖い。
そんなことを思っていたら、いきなりティーカップを投げつけられた。

「何をするんだ!!」

幸い、私にぶつかる前にアルフレッド様が弾いてくれる。
ティーカップはそのまま地面に落ちてカシャンと割れた。

「その女がアル兄様の婚約者だなんて認めないわよ!!」

「お前が認めなくてもかまわない」

「……どうしてよ。アル兄様の妃になるのは私だって言ってたのに!」

「お前が言うたびに俺は否定していたはずだが?」

「でもっ……」

あ、泣くのかなと思ったけれど、シンディ様は表情を一変させて私をにらみつけた。

「お父様とお母様が認めるわけないわ。
 それに、この私も何があっても認めないわ。
 私がこの国を継ぐんだから!アル兄様の結婚なんて認めさせないわ」

そう言うと、くるりと背を向けて中へと入る。
そこにアキムとアズが到着した。

「アキム!ついてきなさい!」

「はい!」

アキムは逆らうことなくシンディ様についていった。
二人が扉から外に出たのを確認して、アルフレッド様が大きく息を吐いた。

「何があったのですか?」

「シンディに俺たちが婚約したことを伝えたら、
 何があっても認めないと言われた。
 兄上のところに行って、このことを伝えてきてくれないか?
 説得はどうなったんだと」

「えぇ……それを私が伝えるのですか……」

「冗談だ。俺が用があると伝えてくれ。
 今から執務室に行ってもかまわないかと」

「わかりました」

アズがいなくなると、また二人きりになる。
アルフレッド様の部屋に戻り、アズが戻って来るのを待つ。

そういえば信用できない者はこの部屋にいれないと言っていた。
出会ってまだ二週間しかたっていないけれど、
私を信用してくれたのならうれしい。

アルフレッド様がシンディ様を嫌うのはよくわかったけれど、
あれだけはっきり認めないと言われてしまったら……。
エッカルト国王も考え直すかもしれない。

アルフレッド様が今すぐ話したいと言ったのは、
シンディ様よりも先に話がしたいのだろう。

それからまもなくアズが戻って来た。
今すぐ執務室にきてほしいということだった。

アルフレッド様が一人で行くのかと思っていたら、
私も呼ばれているという。

二人で執務室に向かうと、そこにはぐったりした様子のエッカルト国王がいた。

「ああ、来たか。シンディが悪かったな」

「いえ、シンディはここに来ましたか?」

「アルフレッドの婚約者は自分だと叫ぶだけ叫んで出て行った」

「そうですか。俺たちはもう婚約しているのはわかっていますよね?」

昨日の時点で婚約が調ったのはわかっているけれど、
国王なら何とでもなるはず。
だが、国王はシンディ様のわがままを聞く気はないようだった。

「大丈夫だ。シンディには泣いてもらう」

「……意外でした。考え直せと言われるのかと」

「お前が考え直してくれるのならな?」

「いえ、無理です」

「だろうな」

ここには国王とアルフレッド様しかいないからか、
昨日の謁見室での会話よりも二人の距離が近い。

「どうしてシンディにそこまでこだわっていたんですか?
 あいつがこの国を継ぐと言っていたんですが、嘘ですよね。
 ラウレンツがいるのに」

「国を継ぐ?いや、シンディにそんなことは言っていない」

「言っていない?では、王妃が言ったとか?」

「……それも考えにくいな。
 シンディはキャロライナの実子ではないからな」

「そういえばシンディも養女でしたね……」

シンディ様が養女?

「あの……もしかして、私が聞いてはいけない話だったのでは?」

「いや、ルーチェ姫には聞いてもらいたい。
 シンディはアントシュ国に留学中に世話になった侍女が産んだ娘、
 ということになっているが本当は違う」

「違うというのは?」

「シンディはルーチェ姫の双子の妹だ」

「……え?」

「兄上、それは本当に!?」

私に妹がいるなんて話は聞いたことがない。
お母様は私を産んですぐに亡くなっている。
にわかには信じられないけれど、国王の表情は嘘をついているようには見えない。

「十三年前、父上が亡くなったと知らせが来て国に戻ることになった。
 その次の日にルーチェ姫とシンディが産まれた。
 アントシュ国では双子の王族は不幸を招くと言われているそうだ。
 本当ならどちらかを殺さなくてはいけないが、
 王妃が命がけで産んだのに殺したくはないとダニエル殿が」

「それで引き取ったと?」

「ダニエル殿に恩返しができるのならと喜んで引き受けた。
 シンディは侍女が産んだことにしてベルコヴァに連れて帰った。
 キャロライナにも本当のことは伝えていない。
 どこから双子だということがばれるかわからないからな……」

「ほ、本当にシンディ様は私の妹なのですか?」

「二人は双子だったが、産まれた時から髪色も目も顔立ちも違っていて、
 離れて育てれば誰も気がつかないと思った。
 王女だから国を出ることもない。一生会うこともなく終わるだろうと……」

叔父様がクーデターなどしなかったら、私はこの国にこなかった。
シンディ様のことも知らないで終わったに違いない。

「シンディ様にこのことを言うのですか?」

「言わなければならない。
 私はシンディのことは可愛い娘だと思っているが、
 引き取ったのはダニエル殿の娘だったからだ。
 同じダニエル殿の娘であるルーチェ姫を傷つけることはできない。
 それをシンディにわかってもらわなくては」

「兄上、今度こそ説得を頼みますよ?」

「ああ、わかった」



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