これが運命ではなかったとしても

gacchi(がっち)

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19.真実は(シンディ)

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「お母様!聞いてちょうだい!」

「まぁ、どうしたの?怖い顔をしているわね」

突然部屋に来た私に、お茶の最中だったお母様が驚きながら迎え入れてくれる。
向かい側の椅子に座り、アル兄様のことを訴えた。

「聞いてちょうだい!アル兄様が婚約するって言うのよ!
 アントシュから連れて来た王女と!
 しかも、それをお父様が認めるって言っているの!」

「まぁ……アルフレッド様が婚約?」

「やっぱり、お母様も聞いてなかったのね!
 お母様なら認めないと思ったもの!」

「ええ、知らなかったわ。それは本当なの?」

柔らかそうな金色の髪をゆったりとまとめたお母様が首をかしげる。
いつも微笑みを絶やさないのに、めずらしく眉を下げた。

「さっき、アル兄様の宮に行ったら王女がいたの。
 アントシュの王女なのに、お父様が養女にしたから第一王女になったって……」

「養女?それはおかしいわね。
 私たちの養女にするなら私に話が来るはずなのに」

「……お父様は何を考えているのかしら」

「婚約したというのは事実なの?」

「少なくとも王女とアル兄様、お父様はそう言っているわ。
 ねぇ、お母様。私はどうしたらいいの?」

「そうねぇ……とりあえず、シンディはお茶でも飲みなさい。
 顔色が悪いわ」

お母様が控えていた侍女にお茶を淹れるように命じる。
出されたお茶はたっぷりとミルクと蜂蜜が入ったもので、
飲んでいるうちに落ち着いてきた。

「お母様、どうしたらいいと思う?」

「少し様子を見ましょうか」

「黙って見ているの?」

「だって、あのアルフレッド様なのよ?
 王女だって、本当のことを知れば怖くなって逃げるんじゃないかしら」

「……そうかも」

アル兄様は実の母親を閉じ込めている。
それもまだ六歳だった頃にだ。

当時、亡くなった国王の代理として権力を持っていた母親を、
騙すようにして議会を納得させ、すべての権力を取り上げた。

母親だけではなく、母親についていた侍女たちもすべて塔に入れ、
それから十三年も閉じ込めたままだ。

それによって血も涙もない、冷酷王子と呼ばれている。
アル兄様は誰も信じないし、そばに置かない。
女嫌いでかわいそうな人……。

「アルフレッド様を理解して、そばにいてあげらえるのはあなただけよ。
 なにかの気の迷いで他の女に行っているのかもしれないけれど、
 アルフレッド様だってシンディが大事だって気づくと思うわ」

「……本当に?」

「もちろんよ。アルフレッド様の妃になるのはあなたよ。
 お父様もわかっていると思うわ。
 きっと政治的な理由でそうしなきゃいけなかったのね」

「政治的な理由……もしかして、アル兄様も?」

「きっと、そうね。
 私たちに言えない理由があるのかもしれない。
 大騒ぎしないで、少し様子を見ましょう?」

「……お母様は私の味方よね?」

「もちろんよ」

いつも通り微笑んでくれるお母様を見て、ほっとする。
アル兄様が急におかしくなってしまったと思ったら、
お父様もいつもと違って話を聞いてくれなくて……。

でも、お母様だけは変わらない。

そうだよね。
考えてみれば女嫌いのアル兄様が婚約なんてするわけがない。
あれは婚約しているふりをしているに違いない。
きっと時期が来たら王女はアントシュに戻るはず。

「あなたは焦らずにアルフレッド様を信じればいいわ」

「はい、お母様」

お茶を飲み終わった時にはもうすっきりしていた。

「じゃあ、帰ります。あら、アキムは戻らないの?」

「王妃様へ報告しなければいけないことがありますので」

「そう。じゃあ、いいわ」

アキムを置いて、迎えに来た侍女たちと自分の部屋へと戻る。
明日からどうしよう。
アル兄様が帰って来たのなら、会いに行きたいけれど、
会いに行ったらきっとあの女もいるはず。

部屋に戻ったらお父様から手紙が届いていた。
私だけ読んだら誰にも見せずに燃やすようにと書かれていた。

……私がアントシュの第二王女?
あの女の妹だというの……?

信じられなかったけれど、お母様が違うのは知っていた。
身分の低い侍女から生まれたというのは嫌で、
お母様を本当の母親のように思っているけれど……。

そうじゃない。ちゃんと母親も身分が高い王女だったんだ。
そのことだけはうれしい
だけど、お父様は本当のお父様じゃなかった……。

私を引き取ったのはアントシュの国王への恩返し。
だから、同じアントシュの王女であるあの女とは同じ扱い……。
理解はするけれど、ずっと娘として暮らしてきたのにと思うとくやしい。

あーでも、こんな秘密が隠されているのなら、
アル兄様の婚約も偽装だと確信した。

手紙にはアントシュの国王と王太子を探しているとあった。
見つかれば、あの女はアントシュに戻るに違いない。

それまではアル兄様のそばにいるのは仕方ないのだろうけど、
……事情がわかったとしても、それでもやっぱり嫌だと思ってしまう。

手紙を燃やすように命じてから、そばにいた侍女に問いかける。

「ねぇ、どうすれば追い出せると思う?
 あの女、城から追い出せないかしら」
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