21 / 57
21.新しい使用人
しおりを挟む
アルフレッド様の宮に最初に増えたのは護衛の二人だった。
アントシュ国からの旅でも一緒だったジルとルウイ。
旅の途中、私が人質にされそうだった時、
アルフレッド様がテントの中で襲撃者を切り倒した。
その後片付けに呼ばれていた騎士の二人だった。
ジルとルウイはベルコヴァの地方貴族の二男で、
剣の腕で王宮騎士に採用されたけれど中央貴族には知り合いもなく、
おかげでどこの派閥にも取り込まれていなかった。
面接はアズが聞き取りを行い、アルフレッド様と私はそれを近くで見ていた。
私はその者が嘘を言っているかどうかを精霊に見てもらい、アズに伝える。
ジルとルウイがアルフレッド様の宮を希望したのは、
襲撃者を一人で倒してしまうアルフレッド様の強さにあこがれ、
どうしても仕えたいと思ったからだそうだ。
もちろん、アルフレッド様が王位を継がないことも知っているし、
私が婚約者だということにも異論はない、
そこまでアズは確認してから二人を採用していた。
二人が護衛でついてくれるようになったおかげで、
アルフレッド様は剣の稽古をするようになった。
以前は毎日剣技場で稽古をしていたそうなのだが、
私をアズだけに任せて宮においておくことはできないし、
かといって剣技場までつれていくのも難しかった。
二人が護衛してくれることでアルフレッド様もようやく安心して、
今まで通りの稽古ができるようになった。
私はその間、リマと刺繍をしたり、花の世話をしていた。
そのうち、侍女が増え、文官が増え、
私がベルコヴァに来てから三年になるころには、
アルフレッド様の宮の使用人は四十人ほどになっていた。
私も十六歳になり、他の貴族令嬢と同じように学園に通うことになる。
「それで、学園には誰を連れて行くんだ」
「護衛はジルとルウイを。侍女は交代で連れて行きます」
学園には馬車で通うことになっている。
そのため、護衛と侍女を連れて行くように言われていた。
「ジルとルウイか。まぁ、いいだろう」
「初めのころから一緒にいましたからね。
私の行動に慣れていますし、ちょうどいいかと」
「そうだな……わかっているだろうが」
「学園では精霊のことは言いません。
もちろん、精霊に力を使わせることもしません。
安心してください」
「そうじゃない。逆だ。
何かあったら自分の身を守ることを優先させるんだ」
「え?精霊の力を使ってもいいと?」
「もちろんだ」
てっきり使うなと注意されるのだと思ったのに、
使ってもいいと言われて驚いてしまう。
アントシュ国でも精霊の力を見たことがある者は少ないけれど、
それでも国民は精霊の力を信じている。
だが、ここベルコヴァでは精霊の力を信じる者は少ない。
アントシュ国で言われているのはおとぎ話だと思われている。
そんな学園で精霊の力を使えばどうなってしまうかわからない。
「問題になりませんか?」
「兄上には許可を取った。
……シンディと同じ教室になるからな。
何をしてくるかわからない」
「シンディ様に使うわけにはいかないと思いますが」
「危ないと思ったら、相手がシンディであってもかまわない。
まぁ、その前に守れとジルとルウイには言っておくが」
できるならそうしてくれたほうがいい。
精霊の力はまだうまく使いこなせない。
傷つけてしまうだけならまだしも、殺してしまうかもしれない。
あの時、アントシュで叔父様に殺されそうになった時、
私に剣を向けてきた騎士は血まみれになって倒れた。
死んではいないと思うが、あの後のことは知らない。
また何かあった場合、力加減ができるとは思えない。
誰かを殺してしまうんじゃないかと、それが怖かった。
初めて学園に通う日、アルフレッド様とアズとリマに見送られ、
ジルとルウイ、侍女のメアリーと馬車に乗る。
王宮に来てから初めての外出。
窓から見えるものがすべてめずらしくてメアリーに聞いてしまう。
「アルフレッド様にお願いすれば外出できるのではないのですか?」
「できると思うけれど、宮の中で満足してしまうのよ。
本と庭があれば十分楽しいんだもの」
「学園に通うようになったらお友達と出かけたくなると思いますよ」
「そうかしら」
ベルコヴァに来てから三年。
陛下に呼ばれる晩餐会以外は宮に閉じこもっていた。
アルフレッド様が心配するからというのもあるが、
私自身、その方が落ち着くからそうしていただけのこと。
友達を作るということがよくわからない。
同世代の令嬢とは関わってこなかったし、
何よりも同じ教室にシンディ様がいる。
シンディ様が社交界に私の噂を流しているとは聞いている。
アルフレッド様を独占しているわがまま姫、
アントシュからのただの人質、あとはなんだったかな。
そんな感じで悪口ばかり言われているようなので、
令嬢たちからは敬遠されそうな気がしている。
馬車が学園に着いて、ジルの手を借りて降りる。
近くにいた令息令嬢が皆こちらを見ているのがわかる。
「おい、あの髪色」
「銀色って……人質姫か」
「学園に通うって話、本当でしたのね」
「うそ……あんなに綺麗だなんて聞いていないわ」
「ちょっと、変なことを言うとシンディ様に怒られるわよ」
こそこそと話しているのが聞こえてくる。
今のところ悪意は感じないけれど、いい気分でもない。
教室まで案内するとメアリーは侍女待機室に行ってしまう。
ジルとルウイは廊下で警護してくれるけれど、
教室内までは入ってこない。
教室に入ると、また一斉に見られる。
しばらくはこうして見られるのは我慢しなきゃと思っていると、
奥の席にシンディ様が座っているのが見えた。
一瞬目が合ったと思ったけれど、すぐにそらされた。
あいかわらず嫌われているらしい。
大好きな叔父様を奪ったのだから、それも当然か。
アントシュ国からの旅でも一緒だったジルとルウイ。
旅の途中、私が人質にされそうだった時、
アルフレッド様がテントの中で襲撃者を切り倒した。
その後片付けに呼ばれていた騎士の二人だった。
ジルとルウイはベルコヴァの地方貴族の二男で、
剣の腕で王宮騎士に採用されたけれど中央貴族には知り合いもなく、
おかげでどこの派閥にも取り込まれていなかった。
面接はアズが聞き取りを行い、アルフレッド様と私はそれを近くで見ていた。
私はその者が嘘を言っているかどうかを精霊に見てもらい、アズに伝える。
ジルとルウイがアルフレッド様の宮を希望したのは、
襲撃者を一人で倒してしまうアルフレッド様の強さにあこがれ、
どうしても仕えたいと思ったからだそうだ。
もちろん、アルフレッド様が王位を継がないことも知っているし、
私が婚約者だということにも異論はない、
そこまでアズは確認してから二人を採用していた。
二人が護衛でついてくれるようになったおかげで、
アルフレッド様は剣の稽古をするようになった。
以前は毎日剣技場で稽古をしていたそうなのだが、
私をアズだけに任せて宮においておくことはできないし、
かといって剣技場までつれていくのも難しかった。
二人が護衛してくれることでアルフレッド様もようやく安心して、
今まで通りの稽古ができるようになった。
私はその間、リマと刺繍をしたり、花の世話をしていた。
そのうち、侍女が増え、文官が増え、
私がベルコヴァに来てから三年になるころには、
アルフレッド様の宮の使用人は四十人ほどになっていた。
私も十六歳になり、他の貴族令嬢と同じように学園に通うことになる。
「それで、学園には誰を連れて行くんだ」
「護衛はジルとルウイを。侍女は交代で連れて行きます」
学園には馬車で通うことになっている。
そのため、護衛と侍女を連れて行くように言われていた。
「ジルとルウイか。まぁ、いいだろう」
「初めのころから一緒にいましたからね。
私の行動に慣れていますし、ちょうどいいかと」
「そうだな……わかっているだろうが」
「学園では精霊のことは言いません。
もちろん、精霊に力を使わせることもしません。
安心してください」
「そうじゃない。逆だ。
何かあったら自分の身を守ることを優先させるんだ」
「え?精霊の力を使ってもいいと?」
「もちろんだ」
てっきり使うなと注意されるのだと思ったのに、
使ってもいいと言われて驚いてしまう。
アントシュ国でも精霊の力を見たことがある者は少ないけれど、
それでも国民は精霊の力を信じている。
だが、ここベルコヴァでは精霊の力を信じる者は少ない。
アントシュ国で言われているのはおとぎ話だと思われている。
そんな学園で精霊の力を使えばどうなってしまうかわからない。
「問題になりませんか?」
「兄上には許可を取った。
……シンディと同じ教室になるからな。
何をしてくるかわからない」
「シンディ様に使うわけにはいかないと思いますが」
「危ないと思ったら、相手がシンディであってもかまわない。
まぁ、その前に守れとジルとルウイには言っておくが」
できるならそうしてくれたほうがいい。
精霊の力はまだうまく使いこなせない。
傷つけてしまうだけならまだしも、殺してしまうかもしれない。
あの時、アントシュで叔父様に殺されそうになった時、
私に剣を向けてきた騎士は血まみれになって倒れた。
死んではいないと思うが、あの後のことは知らない。
また何かあった場合、力加減ができるとは思えない。
誰かを殺してしまうんじゃないかと、それが怖かった。
初めて学園に通う日、アルフレッド様とアズとリマに見送られ、
ジルとルウイ、侍女のメアリーと馬車に乗る。
王宮に来てから初めての外出。
窓から見えるものがすべてめずらしくてメアリーに聞いてしまう。
「アルフレッド様にお願いすれば外出できるのではないのですか?」
「できると思うけれど、宮の中で満足してしまうのよ。
本と庭があれば十分楽しいんだもの」
「学園に通うようになったらお友達と出かけたくなると思いますよ」
「そうかしら」
ベルコヴァに来てから三年。
陛下に呼ばれる晩餐会以外は宮に閉じこもっていた。
アルフレッド様が心配するからというのもあるが、
私自身、その方が落ち着くからそうしていただけのこと。
友達を作るということがよくわからない。
同世代の令嬢とは関わってこなかったし、
何よりも同じ教室にシンディ様がいる。
シンディ様が社交界に私の噂を流しているとは聞いている。
アルフレッド様を独占しているわがまま姫、
アントシュからのただの人質、あとはなんだったかな。
そんな感じで悪口ばかり言われているようなので、
令嬢たちからは敬遠されそうな気がしている。
馬車が学園に着いて、ジルの手を借りて降りる。
近くにいた令息令嬢が皆こちらを見ているのがわかる。
「おい、あの髪色」
「銀色って……人質姫か」
「学園に通うって話、本当でしたのね」
「うそ……あんなに綺麗だなんて聞いていないわ」
「ちょっと、変なことを言うとシンディ様に怒られるわよ」
こそこそと話しているのが聞こえてくる。
今のところ悪意は感じないけれど、いい気分でもない。
教室まで案内するとメアリーは侍女待機室に行ってしまう。
ジルとルウイは廊下で警護してくれるけれど、
教室内までは入ってこない。
教室に入ると、また一斉に見られる。
しばらくはこうして見られるのは我慢しなきゃと思っていると、
奥の席にシンディ様が座っているのが見えた。
一瞬目が合ったと思ったけれど、すぐにそらされた。
あいかわらず嫌われているらしい。
大好きな叔父様を奪ったのだから、それも当然か。
733
あなたにおすすめの小説
何も決めなかった王国は、静かに席を失う』
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。
だが――
彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。
ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。
婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。
制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく――
けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。
一方、帝国は違った。
完璧ではなくとも、期限内に返事をする。
責任を分け、判断を止めない。
その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。
王国は滅びない。
だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。
――そして迎える、最後の選択。
これは、
剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。
何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる