これが運命ではなかったとしても

gacchi(がっち)

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41.追い詰められる

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「だって、アル兄様は冷酷王子なのよ。
 女嫌いで、誰にも優しくなくて、誰のことも愛せないの。
 結婚しても、まともな結婚生活なんて送れるわけないんだから!」

「そんなことないわ。だって、アルフレッド様は優しいもの。
 出会ってからずっと、私には優しかったわ!」

「嘘つかないで!」

ああ、だめだ。私が何を言っても聞いてくれない。
この騒ぎに貴族たちが興味を持ってしまった。
誰もが耳をすませて私たちの争いの結果を気にしている。

私たちが争っていることに耐えられなくなったのか、アルフレッド様が口を開いた。

「まったく……誰が女嫌いだと言ったんだ」

「え?」

「俺は女嫌いというわけじゃない」

「……そんなわけは」

「俺が一度でも女嫌いだと言ったことがあるのか?」

そう聞かれたシンディ様は心当たりがないのか、口をきゅっとつぐんだ。

「俺は女嫌いだから令嬢や夫人に、シンディに冷たくしていたわけじゃない。
 周りにいる女たちが嫌いだから女嫌いだと誤解されていただけだ」

「……どういうこと?」

「俺がお前に冷たかったのは、お前が嫌いだったからだ」

「え……でも、私が小さいころは優しかったじゃない。
 途中から急に冷たくなったのは、女嫌いだから仕方がないんだって……」

「それが理由じゃない」

その時、二人の会話を邪魔するように陛下と王妃様の入場が告げられた。

さすがに陛下の入場を優先するしかなく、皆が扉の方に注目する。
すぐに扉が開き、陛下と王妃様が入場してきたが、陛下の顔色が悪い。

どうやらシンディ様が騒ぎを起こしていると知って、
慌てて入場してきたらしい。

本来なら、陛下が入場したら夜会の宣言が始まるのだけど、
シンディ様は変わらずこちらを向いてにらみつけている。
それを見た陛下がアルフレッド様とシンディ様を引き離すように割って入る。

「いったい何を騒いでいるんだ。
 シンディ、部屋へ戻りなさい!」

「そんな!」

「いいから、おとなしく部屋に戻りなさい」

シンディ様さえいなければ場がおさまると思ったのか、
陛下はシンディ様に部屋に戻るようにと繰り返した。
だが、その言葉を聞いて再び怒り出してしまう。

「どうして私が部屋に戻らなくちゃいけないのよ!
 アル兄様が私以外の女をエスコートするのが悪いんじゃない!」

「悪いわけないだろう!婚約者なんだぞ!」

「だって、ルーチェ様が婚約者になったのは、身分を守るためなんでしょう!?
 アントシュ国がなくなって、王族でも貴族でもなくなってしまったから、
 この城で保護するために仕方なくアル兄様の婚約者ということにして、
 王女にしてあげただけなんでしょう!?」

「……何を言って」

「可哀想だと思ったから、アル兄様の宮に滞在することも許してあげたけど、
 でもアル兄様と結婚するのはこの私よ!だって、それが運命なんだから!!」

「シンディ、何を言っているんだ?」

誰もがシンディ様が言ったことが理解できずに呆気に取られている。
シンディ様はそれにも気づかずにまだ言い続ける。

「私とアル兄様は結婚して、この国を継ぐの。
 ずっと前からそう決められていたのに、
 ルーチェ様に邪魔されるのはもううんざりなのよ!」

「シンディ、お前何を言っているんだ。
 邪魔しているのはルーチェじゃない」

「嘘よ!アル兄様はルーチェ様に騙されているんだわ。
 アル兄様を愛せるのは私しかいないのよ!」

「……またそれか。なぁ、俺の気持ちはどうなるんだ?」

「え?」

これ以上ない低い声でアルフレッド様が怒っているのがわかる。
ああ、もう限界なんだ。シンディ様に振り回されるのは。

「そういえば騎士の一人がこう言っていたな。
 シンディ様は誰からも嫌われているから嫁ぎ先がないらしい、
 それなら俺がもらってやろうかなと。そいつを紹介してやろうか?」

「は?そんな奴お断りよ!」

「どうしてだ?高位貴族だし、悪い奴じゃないぞ。
 結婚してやればいいじゃないか。求婚されてうれしいだろう?」

「嫌よ!どうしてそんな言い方でうれしいと思うのよ!
 馬鹿にされているとしか思えないわ!」

「……そうだろう?お前が俺に言っているのはそれと同じだ」

「え?」

「誰からも嫌われている、だから引き取ってやる。
 そんな風に言ってくる奴を嫌いになるのは当然のことだろう。
 俺はお前がそう言ってきた時から大嫌いになったんだよ」

「…………え?」

本当に気づいていなかったのだろうか。
シンディ様は驚いた顔をしている。

「あれは俺が十二歳で王族のお披露目をした後だった。
 兄上が俺を王太子にすることも考えていると言ったことで、
 今まで俺に声もかけなかった貴族たちから娘はどうかと言われるようになった。
 それと同じころ、シンディもおかしくなっていった。
 俺は冷酷王子だから妃が見つからない、仕方ないから自分が結婚するんだ、
 まだ六歳のお前がそう言い出したんだ」

「だって、事実じゃない。令嬢たちはみんなアル兄様のことを怖がっていたし、
 嫁いでもいいと言った令嬢なんていなかったじゃない。
 だから、私だけはそばにいてあげるって言ったのに、何がおかしいのよ」

「ここまで言ってもわからないのか。
 俺は俺を侮辱してくるような者と結婚するほど落ちぶれていないぞ」

「アル兄様は落ちぶれてなんかないわよ!」

「お前がそう言っているんだ。どうして理解できないんだ?」

「私は侮辱なんて……だってそれが事実だって言われたから」

「言われたから?」

誰がそんなことを六歳のシンディ様に?

「ねぇ、そうでしょう?お母様!」

え?王妃様が?

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