こんなのはハーレムと呼ばない。

gacchi(がっち)

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5.伯爵令嬢ジョセフィーヌ

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「やっと見つけましたわよ!」

「今度はお前か…。」

十七か所目の領地について二か月目。
二十五の依頼を達成したところだった。

俺の腕をつかんでいたのはジョセフィーヌ・ハンブルックだった。
たまたま盗賊に襲われかかったいたところを助けただけでつきまとわれているが、
伯爵家の一人娘だ。見えないところに護衛がついているはずだ。
あきらめて自分の領地に帰ればいいのに、まだ追いかけてくるとは…。

「どうやってここがわかったんだ?」

リーナほどではないが、いつもどうやって追いかけてきているのか気になっていた。
その手段をつぶさなければまた追いかけてこられる可能性がある。

「それは簡単ですわ!
 我がハンブルック家の力を使えばギルドの情報も手に入りますのよ?」

「…それは、お前の家の領地にある冒険者ギルドから、
 お前の家のものが情報を引き出しているってことか?」

「そうですわ!だからどこに逃げても無駄ですのよ?」

ふふふ。と胸を張ってこたえるジョセフィーヌに頭が痛くなる。
こいつは馬鹿なのか。

「冒険者ギルドでは冒険者の情報は秘匿されているはずだな?
 いくら領主とは言えど、情報を引き出せるわけないだろう?」

「いいえ?お父様にできないことなんて無いですわ。
 ギルドから情報を引き出すなんていくらでもできますのよ。」

ここまで話してもらえればいいだろう。
カウンター近くで話していたのだから、受付の中にいるものたちにも聞こえたはずだ。

「話は聞こえていたな?」

一番近くにいた受付の男性に聞くと、大きくうなずく。

「ええ。聞こえていました。
 どうしますか?訴えるのなら王都のギルド本部がおすすめです。」

「何か違うのか?」

「王都のギルド本部はギルド長が王弟殿下なんです。
 そのため権力でうやむやにされる恐れがありません。
 このギルドからでも手続きできますよ?」

「じゃあ、手続きを頼む。」

「かしこまりました。」

俺と受付の男が話している間、ジョセフィーヌはぽかんとしている。
話をよくわかっていないようだ。

「いったい何の話ですの?」

「お前の父親を訴えるって話だ。」

「は?」

「いいか?冒険者ギルドっていうのは独立したものなんだ。
 貴族相手だとしても冒険者の情報を渡すなんてことは許されない。
 それをお前の父親がしたってことは、俺は訴えることができる。
 脅したにしろ結託していたにしろ、処罰は免れないな。」

「処罰ですって?嘘でしょう?」

「嘘なわけないだろう。
 間違いなく爵位ははく奪されるだろうな。」

冒険者ギルドへの脅しは絶対に許されない。
本部のギルド長が王弟殿下ならば横やりが入ることもないだろうし、
まず間違いなく爵位ははく奪だろう。
調べられた結果、それによって損害があれば賠償金も払わなければならないし、
ギルドの罰金も科せられることになる。

「…そんな。どうして…?」

「俺の居場所を勝手に調べたりするからだ。」

「だってそうでもしないとユアンに会えないじゃない!」

「会う必要はないだろう?」

「ユアンはわたくしの婿でしょう!?」

「最初から断っているよな?嫌だって。」

「伯爵家の婿になるのを断るなんてありえないわ!」

「でたよ…これだから貴族は嫌いなんだ。」

「え?…もしかして、わたくしは貴族だから避けられていましたの?」

「いや、貴族じゃなくても嫌だけど、貴族ならもっと嫌だって話。」

「どうしてですの?わたくしはこんなに好きだって言っているのに。」

ぽろぽろと涙をこぼしているジョセフィーヌに同情の声も聞こえる。
荒くれの冒険者から見たら、華麗なお嬢様に惚れられて、
何の文句があるんだとでも言いたいだろう。
俺だって他人の話ならそう思ったかもしれない。

「一方的に好きだって言われて婿になれだなんて命令されて、
 冒険者が惚れるわけないだろう?
 断っても断ってもしつこくつきまとわれて、
 お前はわたくしのものだなんて言われて、
 どこをどうみたら好きになる要素があると思ってんだよ。
 嫌いになるに決まってんだろう!」

思わず叫んだ俺に、今度は冒険者たちから同情の目で見られる。
自由を好む冒険者たちならこの苦しみをわかってくれるだろう。
勝手に貴族の婿入りを決められて喜ぶ冒険者がいるものか。

「ひどいですわ…。」

「ひどいのはお前だよ。
 貴族の権力使ってまで追い掛け回して。
 …だが、これでもう終わりだな。
 爵位をはく奪されたら、
 もう俺を追いかける余裕なんてないはずだ。」

「いや…いやよ。ねぇ、助けなさいよユアン!」

「なんで助けるんだ?
 むしろこれでようやく俺が助かるのに。」

どうして自分が助けてもらえると思っているのか、心底疑問に思う。
首をかしげて答えると、ジョセフィーヌは崩れ落ちて床に座る。

あ、そこ汚いぞと思いながら、手を貸してやる気にはならない。

「じゃあ、さよなら。」

「あ、待ちなさい!」

それでもしつこく命令してくるジョセフィーヌを無視して外に出る。
ここも早く領地から出ないとな…そう思いながら依頼に向かう。


その後、伯爵は身分をはく奪され平民落ちとなった。
冒険者ギルドのギルド長の家族を人質にして、脅していたことが判明したからだ。
莫大な賠償金と罰金により、資産もすべて没収になり領地から追放された。

それからしばらくして…王都の高級娼館にて元貴族の娼婦がいるという噂が流れたが、
それがジョセフィーヌなのかは確認していない。
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