こんなのはハーレムと呼ばない。

gacchi(がっち)

文字の大きさ
12 / 17

12.どうしようもない

しおりを挟む
「もうすぐおとなになるから、でてけって。」

「…一人で住んでるのか?」

「うん。」

まだ小さいこんな子どもを一人で?
でも待てよ…もうすぐ大人になるって言ってたな。
虐待された結果、身体の成長が遅れているってことなのか?
少し話し方も幼いし…。

これ以上聞くのはまずいような気がして、魚が焼けるのをじっと待った。
いい匂いがしてきて、中まで火が通っているか確認した後、
目を輝かせているルゥに渡す。

「あぁ、焼けたようだ。
 熱いから気をつけろよ。
 こことここを持って、かぶりつくんだ。」

「!!」

「うまいだろう?」

「!!」

初めて食べた魚がよっぽどおいしかったのか、無言でうなずきながら食べている。
その姿を見て、捨て犬を拾ってしまったような気になる。

しまった…一人だってわかっているのに、家に帰せるのか?
もうすでに半分ほだされてしまっているかもしれない。
どうするかな…。
孤児院に連れて行くのは可能だけど、この黒髪黒目じゃなぁ。
よほどの才能がなければ孤児院でも迫害されるのは目に見えている。

最終的に俺が冒険者として育てるのか、まで妄想がいったところで我に返った。
ここで出会ってしまった以上、なんらかの手助けはしなきゃいけないだろうな。

だが、ルゥは魚を食べ終えると、帰ると言い出した。
もう辺りは真っ暗で、こんな中を一人で帰すのはさすがに不安だった。

「…じゃあ、送っていこう。」


ルゥが案内する後をついていくと、崖の下に着いた。

「ここだよ。」

そこは…洞窟とは言えないほど小さなくぼみだった。
その近くに焚火の跡があって、くぼみのところにぼろきれのような布が見えた。
もしかして…あれにくるまって寝ているのか?ちょっと待て、ここで?

「ルゥ、ここに来たのはいつからだ?」

「わかんない。」

「雪が降ったことはあるか?」

「ゆき?ってなに?」

「…わかった。」


少なくとも、ルゥはこの山に雪が降ることを知らない。
まだ暖かい時期に捨てられたのだろう。その証拠にルゥの服は薄着だった。


…もうじき、この山は雪に閉ざされる。
こんなところで寝ていたら、すぐに死ぬだろう。
きっとルゥの親は…それを知っていて、ここに捨てた。

「はぁぁぁぁ。」

「?」

「ルゥ、帰るぞ?」

「…かえってるよ?」

ルゥは首をかしげてくぼみを指さしているけど、それは家じゃない。
そんなところに置いていけるわけないだろう。

「もっといいところがある。俺の家に行こう。
 何か持っていきたいものがあれば俺が持ってやる。
 何かあるか?」

「…これ。」

引っ越しさせるために大事なものを持ってこさせたら、
小さなナイフと鍋、汚れ切った布だった。
これがルゥの全財産だったようだ。

「よし、わかった。行こう。」

ルゥの手をつないだら、細くて小さくて冷たくて。
薄着なだけじゃなく、ところどころ破れている服では寒くて仕方ないだろう。
ずっと身体を洗っていないようだし、髪も汚れきっている。
早く帰って何とかしなければと思った。


木小屋に連れて帰り、まずはお風呂に入れてやると…

「ルゥ…ごめん、女の子だったか。
 うわ、こっち向くな。いいから、湯船に入れ!」

ちょっとだけ、連れて帰ったことを後悔することになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。

月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。 まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが…… 「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」 と、王太子が宣いました。 「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」 「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」 「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」 設定はふわっと。

勇者の幼馴染は領主の息子に嫁ぎました

お好み焼き
恋愛
結局自分好みの男に嫁いだ女の話。

乙女ゲー終了後に獣人大公に売られた子爵令嬢ですが、前世を思い出したのでなんとか最後までヤりきってみせます!

お好み焼き
恋愛
断罪された乙女ゲームの悪役オードリー、が売られたその後。 前世を思い出したけど、冤罪じゃなく普通に悪事を働いていたから、その後は何が何でも誤魔化して生きるしかないよね、みたいな緩い話。予告なく性描写が出ます。

忘れるにも程がある

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたしが目覚めると何も覚えていなかった。 本格的な記憶喪失で、言葉が喋れる以外はすべてわからない。 ちょっとだけ菓子パンやスマホのことがよぎるくらい。 そんなわたしの以前の姿は、完璧な公爵令嬢で第二王子の婚約者だという。 えっ? 噓でしょ? とても信じられない……。 でもどうやら第二王子はとっても嫌なやつなのです。 小説家になろう様、カクヨム様にも重複投稿しています。 筆者は体調不良のため、返事をするのが難しくコメント欄などを閉じさせていただいております。 どうぞよろしくお願いいたします。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

ジルの身の丈

ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。 身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。 ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。 同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。 そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で─── ※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...