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14.聖女の理由(あかり)
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久しぶりにアパートに帰ったら、家の前にママがいた。
「なんでママがこんなとこに」
「何をしていたのよ!あかり!!」
「何って……」
「子どもを放っておいてどこに行っていたの!」
やばい。しばらく放っておいたのがバレている。
……もしかして、死んじゃった?
「……どうしてママがここに来たの?住所は知らせてなかったよね?」
「何を言っているの。
アパートを借りる時に美恵子にサインをもらったでしょう。
だから警察が美恵子に連絡をしてくれたのよ!」
あーそうだった。
叔母さん、内緒にしてくれるって言ってたのに嘘つき。
「もしかして、結愛、死んじゃった?」
「死ぬところだったのよ!!」
なんだ、死んでないんだ。
警察って、また誰かが通報したのかな。ホント、うざい。
「……このアパートは引き払うわ。あかりも帰りましょう」
「帰るってなんでよ」
「一人で子育てできないんでしょう?
結愛ちゃんと一緒に帰って来なさい。面倒見てあげるから」
「嫌よ……私は帰らないわ」
「あかり!!」
冗談じゃない。あんな家に帰りたくなんかない。
走って、走って、彼氏の家に戻ったら鍵がかかっていた。
そうだった。邪魔だからって追い出されたんだった。
仕方なく女友達のところに行く。
前に行った時にむかつくことを言われてそれっきりだけど、
他に行くところもない。
「真子~泊めて?」
「なによ、また一人でふらふらして。
結愛ちゃんが可哀想だと思わないの?」
あーまた同じことを言うんだ。
でも、もう結愛のことは心配ない。
「ママが結愛を連れて行ったみたい。
だから、心配しなくていいよ」
「ああ、そうなんだ、じゃあもう大丈夫だね」
安心したのか真子は部屋に入れてくれた。
お腹が空いたといえばオムライスを作ってくれる。
口うるさいけれど、これだから友達をやめられない。
まともな食事ってどのくらいぶりだろう。
三日ぶりくらいな気がする。
黙って食べていたら、真子がまた説教を始めた。
「あかりもさぁ、家に帰れば?」
「やだよ」
「あんなまともな家に生まれたくせに贅沢だよ。
お金持ちのお父さんに優しいお母さん。
なんでもやってもらっていたから、あかりは何にもできないんじゃん?」
「うるさいな……」
「家出したのだって、ただの反抗期なんでしょ?
なんだっけ、遅刻するなって怒られたとか。しょぼ」
「うっさい」
「謝って帰りなよ。あかりは親に養ってもらった方がいいって。
夜職だってまともに続かないじゃん」
「ああ、もう!うるさい!」
「ちょっと、どこに行くのよ!」
行く場所なんてないって思い出したのは、真子の家を出てから十分後だった。
もう戻る気にはなれない。
とぼとぼと暗くなってきた道を歩く。
どうしようかな。しばらくしていなかったけど、パパ活すればいいかな。
いや、それでまたぶさいくを産んだら困る。
結愛だって、もう少し可愛かったら愛せるのに。
どうみてもぶさいくで、父親はパパ活したぶさいくのおっさんのどれか。
そんなの妊娠したあかりが悪いってみんなが言う。
仕方ないじゃん。
気がついた時にはもう無理だったし、家に帰ったら怒られるに決まってる。
新しい彼氏がパパになってくれるって言ったけど、
一緒に暮らし始めたらやっぱり無理って出て行かれた。
悪いと思っていたのか、まとまったお金を置いて行ってくれたから、
半年は暮らせたけど。もうお金もほとんどない。
結愛が可愛かったら、子役とかで売れたかもしれないのにな。
あかりの半分も可愛くなかった。
考えているうちにすっかり夜になってしまった。
仕方なくパパ活していた時のたまり場へ向かう。
「え?新しい店がたってる……」
たった二年なのに、そこはすっかり変わってしまっていた。
綺麗な店が建って裏路地は封鎖されている。
パパ活しているような女の子は誰もいなかった。
「どうしよう……ああ、もうめんどくさくなった。
…………死んじゃおっかな」
つぶやいたら、それがいい気がしてきた。
歩道橋の上から飛びおりよう。
そう思って歩き始めたのに……気がついたら豪華な部屋で寝かされていた。
「何、ここ。もしかして、ママに連れ戻された?」
「聖女様、意識が戻られましたか?」
「え?」
誰も部屋にいなかったはずなのに、声をかけられた。
「私どもは王宮の女官です。
聖女様は池に落ちてこられたのですが、覚えていらっしゃいますか?」
「聖女……あかりが?まさか、ここ異世界だって言わないよね?」
「その通りです」
「は?」
とりあえず、女官だという人たちには出て行ってもらって、窓から外を見る。
見たことがない建物や服装……本当にここが異世界なのだとしたら。
聖女って、イケメンと恋愛するのが仕事でしょう?
待って……子どもがいるとかバレないよね。
鏡を見て姿を確認する。うん、大丈夫。
本当は十九歳だけど、十六歳って言っておこう。
日本人は若く見られるって聞いたことあるし、若い方が好かれるよね。
できるだけ悲しいふりをして、同情してもらおう。
そして、異世界に呼んだ責任をとって、一生面倒をみてもらおう。
ママも結愛もいない世界。
うれしくて笑いが止まらない。
「なんでママがこんなとこに」
「何をしていたのよ!あかり!!」
「何って……」
「子どもを放っておいてどこに行っていたの!」
やばい。しばらく放っておいたのがバレている。
……もしかして、死んじゃった?
「……どうしてママがここに来たの?住所は知らせてなかったよね?」
「何を言っているの。
アパートを借りる時に美恵子にサインをもらったでしょう。
だから警察が美恵子に連絡をしてくれたのよ!」
あーそうだった。
叔母さん、内緒にしてくれるって言ってたのに嘘つき。
「もしかして、結愛、死んじゃった?」
「死ぬところだったのよ!!」
なんだ、死んでないんだ。
警察って、また誰かが通報したのかな。ホント、うざい。
「……このアパートは引き払うわ。あかりも帰りましょう」
「帰るってなんでよ」
「一人で子育てできないんでしょう?
結愛ちゃんと一緒に帰って来なさい。面倒見てあげるから」
「嫌よ……私は帰らないわ」
「あかり!!」
冗談じゃない。あんな家に帰りたくなんかない。
走って、走って、彼氏の家に戻ったら鍵がかかっていた。
そうだった。邪魔だからって追い出されたんだった。
仕方なく女友達のところに行く。
前に行った時にむかつくことを言われてそれっきりだけど、
他に行くところもない。
「真子~泊めて?」
「なによ、また一人でふらふらして。
結愛ちゃんが可哀想だと思わないの?」
あーまた同じことを言うんだ。
でも、もう結愛のことは心配ない。
「ママが結愛を連れて行ったみたい。
だから、心配しなくていいよ」
「ああ、そうなんだ、じゃあもう大丈夫だね」
安心したのか真子は部屋に入れてくれた。
お腹が空いたといえばオムライスを作ってくれる。
口うるさいけれど、これだから友達をやめられない。
まともな食事ってどのくらいぶりだろう。
三日ぶりくらいな気がする。
黙って食べていたら、真子がまた説教を始めた。
「あかりもさぁ、家に帰れば?」
「やだよ」
「あんなまともな家に生まれたくせに贅沢だよ。
お金持ちのお父さんに優しいお母さん。
なんでもやってもらっていたから、あかりは何にもできないんじゃん?」
「うるさいな……」
「家出したのだって、ただの反抗期なんでしょ?
なんだっけ、遅刻するなって怒られたとか。しょぼ」
「うっさい」
「謝って帰りなよ。あかりは親に養ってもらった方がいいって。
夜職だってまともに続かないじゃん」
「ああ、もう!うるさい!」
「ちょっと、どこに行くのよ!」
行く場所なんてないって思い出したのは、真子の家を出てから十分後だった。
もう戻る気にはなれない。
とぼとぼと暗くなってきた道を歩く。
どうしようかな。しばらくしていなかったけど、パパ活すればいいかな。
いや、それでまたぶさいくを産んだら困る。
結愛だって、もう少し可愛かったら愛せるのに。
どうみてもぶさいくで、父親はパパ活したぶさいくのおっさんのどれか。
そんなの妊娠したあかりが悪いってみんなが言う。
仕方ないじゃん。
気がついた時にはもう無理だったし、家に帰ったら怒られるに決まってる。
新しい彼氏がパパになってくれるって言ったけど、
一緒に暮らし始めたらやっぱり無理って出て行かれた。
悪いと思っていたのか、まとまったお金を置いて行ってくれたから、
半年は暮らせたけど。もうお金もほとんどない。
結愛が可愛かったら、子役とかで売れたかもしれないのにな。
あかりの半分も可愛くなかった。
考えているうちにすっかり夜になってしまった。
仕方なくパパ活していた時のたまり場へ向かう。
「え?新しい店がたってる……」
たった二年なのに、そこはすっかり変わってしまっていた。
綺麗な店が建って裏路地は封鎖されている。
パパ活しているような女の子は誰もいなかった。
「どうしよう……ああ、もうめんどくさくなった。
…………死んじゃおっかな」
つぶやいたら、それがいい気がしてきた。
歩道橋の上から飛びおりよう。
そう思って歩き始めたのに……気がついたら豪華な部屋で寝かされていた。
「何、ここ。もしかして、ママに連れ戻された?」
「聖女様、意識が戻られましたか?」
「え?」
誰も部屋にいなかったはずなのに、声をかけられた。
「私どもは王宮の女官です。
聖女様は池に落ちてこられたのですが、覚えていらっしゃいますか?」
「聖女……あかりが?まさか、ここ異世界だって言わないよね?」
「その通りです」
「は?」
とりあえず、女官だという人たちには出て行ってもらって、窓から外を見る。
見たことがない建物や服装……本当にここが異世界なのだとしたら。
聖女って、イケメンと恋愛するのが仕事でしょう?
待って……子どもがいるとかバレないよね。
鏡を見て姿を確認する。うん、大丈夫。
本当は十九歳だけど、十六歳って言っておこう。
日本人は若く見られるって聞いたことあるし、若い方が好かれるよね。
できるだけ悲しいふりをして、同情してもらおう。
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ママも結愛もいない世界。
うれしくて笑いが止まらない。
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