その手をとって、反撃を

gacchi(がっち)

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4.夜会の開始

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陛下と王妃に続いてマルセル様とアナイス様が入場し、
ロドルフ様と私が最後に入場する。

王族席の近くにレベッカ様がいるのが見える。
ロドルフ様と私が一緒に入場するのが嫌なのか、
にらむような目で見られる。

どうせ入場だけなのにと思ったけれど、私が婚約者なのは変わらない。
婚約解消するまでは憎まれても仕方ないのかもしれない。

陛下の挨拶が終わり、王族によるファーストダンスが始まると思ったら、
今日は違うようだ。
陛下が大広間の扉の方を向いた。

「今日はこの国にとって大事な方をお招きしている」

お招きした?陛下よりも身分が高い方……?

大広間の扉が再び開いたと思ったら、現れたのは紺色のローブ姿の男性だった。
銀色の髪を束ね、前髪からのぞく切れ長の目は紫色。
この色は……クラデル侯爵家の色。

もしや、この人は……

「魔術師の塔の管理人を下りたシリウス殿だ」

おおおと歓声があがる。
そういえば、魔術師の塔の管理人は社交を一切しないけれど、
管理人を下りた時にだけ挨拶のために夜会に顔を出すと聞いたことがある。

先日、魔術師の塔の管理人が交代したのは知っていた。
甥でもある弟子にその座を譲った若き魔術師。まだ二十代だったはず。

たしか、お母様の従兄弟にあたる方だったはずだが、
私はクラデル侯爵家とは交流がなかった。

魔力があればクラデル侯爵家の保護下に入ることもできるのだが、
クラデル侯爵家の血を引いていても魔力なしの私は近寄ることもできない。

満面の笑みの陛下に迎え入れられたシリウス様は不機嫌そうな顔のままだが、
美しい顔立ちに令嬢たちが魅入られている。
あのレベッカ様でさえ、シリウス様に見惚れているのがわかった。

「では、夜会を開始しよう。シリウス殿もぜひ楽しんでいただきたい」

「……ああ」

シリウス様の紹介が終わり、王族によるファーストダンスが始まる。
マルセル様とアナイス様が前に出るが、ロドルフ様と私は動かない。

「ロドルフ、お前たちも前に出なさい」

陛下からそう声をかけられ、驚く。
ファーストダンスは踊らなくてもいいのではなかったの?

「父上、ナディアは足を負傷しているため踊れません」

「そうなのか?」

「は、はい。転んで右ひざを打ってしまいまして……」

「そういうことであれば、仕方ない」

納得したのか、マルセル様たちだけでファーストダンスが始まる。

……今のはどういうこと?
私はロドルフ様に怪我をしたなんて報告していない。
救護室から連絡がいくこともありえない。

もしかして、ロドルフ様の侍従が私の背中を押したのは、
侍従が嫌がらせでしたのではなく、ロドルフ様の命令だった?

そのことに気がついて血の気がひいた。
そこまで嫌われているなんて思わなかった。

一言いってくれたら、怪我のふりをすることだってできるのに。
わざと怪我をさせてまでファーストダンスを踊りたくなかったなんて。

陛下にも認められたからか、ロドルフ様はレベッカ様のところに行ってしまう。
それを見て、陛下が深いため息をついた。

もう、本当に限界。
一刻も早く婚約解消を認めてもらわないと……。

ファーストダンスが終わったら控室に行こう。
そして早いうちに帰ることにしよう。


ファーストダンスが終わり、夜会が開始される。
騒がしい中、大広間から出ると控室に向かう。
誰もいない控室に入ると、ようやく落ち着く。

私がロドルフ様に嫌われているからか、
私の控室には侍女も護衛もつかない。
一人の方が気楽でいいと思いながらお茶を淹れる。

二杯目のお茶を飲み終えるころ、廊下が騒がしくなる。
夜会を抜け出して控室で逢瀬を楽しむ人たちがいるのは知っている。
そろそろ帰ってもいい頃かもしれない。

ドアがノックもされずに開けられたと思ったら、
入ってきたのはジネットだった。

「やっぱりこんなところにいたのね」

「どうしたの?」

「いいから、一緒に来て」

「え?」

どこに連れて行こうとしているのか、ジネットが私の手を引く。

「何があったの?」

「わからないけど、レベッカ様に連れて来てって言われたの」

「レベッカ様が私を?どうして?」

「いいから、黙ってついてきて!」

どこまで行くつもりなのか、控室を奥の方まで進む。

奥に行けば行くほど高位貴族用の控室になるのだが、
レベッカ様のバラチエ侯爵家の控室に向かっているのかもしれない。
わざわざ夜会の最中に呼び出さなくても、学園で話せばいいのに。

ああ、でも、王族の婚約者として入場したから、
文句を言いたくなったのかもしれない。
私に言われても困るんだけど……。

憂鬱な気持ちでついていくと、ジネットは部屋の前で止まる。

「ここよ。一人で中に入って」

「ここに?」

「いいから、早く、ほら!」

いろいろと疑問に思ったけれど逆らってもいいことはない。
背中を押されるようされて、ドアを開けて中に入る。

入ってすぐの応接間には誰もいなかった。
レベッカ様は奥の部屋にいるのだろうか?

バタンと音がして、ドアが閉められる。

「……ジネット?」

ドアを開けようとしたが、開かない。
もしかして閉じ込められた?

私をこんな部屋に閉じ込めてどうするつもりなんだろうと思ったら、
後ろから知らない男性の声がした。

「罠にかけようとしていたようだな」

「え?」



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