その手をとって、反撃を

gacchi(がっち)

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13.待ち望んでいた(ロドルフ)

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夜会があった翌日は当然のように昼過ぎまで寝ていた。
そろそろ起きて食事でもと思っていたら、侍従に起こされる。
もう少しで起きるところだったのに何だと聞けば、
父上が呼んでいるという。

……まさか、昨日のことがバレたのか?
ナディアを令息たちがいる部屋に連れて行って、
不貞しているのを目撃した上で婚約破棄するつもりだった。

王命に近い婚約だったから、
そうでもなければ婚約解消できない。

ナディアが悪いわけではないのだが、
どうしてもナディアの見た目を好きになれなかった。

背が低く太っていて、目鼻が押しつぶされているようだった。
銀色の髪だけは綺麗といってもいいが、とりえはそれだけ。
クラデル侯爵家の血筋なのに魔力なし。

いくらなんでもこれはひどすぎる。
俺の妃ということは、将来の王妃なのに。
勝手に婚約を決めた父上を恨んでもいいだろうと思う。

俺は幼馴染のレベッカと婚約したかったのに、
当時のレベッカは侯爵家の一人娘。
俺の妃候補にすることすらできなかった。

だけど、今は違う。
レベッカに弟が生まれ、俺に嫁いでも問題はなくなった。
ナディアと婚約解消して、レベッカと婚約をする。
こんな簡単なことなのに父上だけがうなずいてくれない。

ジネットの協力も得て、うまくいくはずだったのに。
まさか部屋を間違えるなんて思わなかった。

レベッカと一緒に部屋をのぞいた時、
そこにいるのが魔術師の塔の元管理人だと気がついて、
必死に謝って逃げた。

……もしや、父上の呼び出しはこっちか?
シリウス様が父上に苦情を言ったのかもしれない。

謝れば許してもらえるだろうか。
部屋を間違っただけだし、それほど叱られないだろう。

父上の執務室に入ると、やはり怒っているのか険しい顔をしている。
俺と同じ金髪青目だけど顔立ちは似ていない。
俺は母上に似たんだといつも思う。

「……そこに座れ」

「はい」

「お前とナディア嬢の婚約は解消する」

「は?」

「いや、もうすでに解消している」

「本当ですか!」

やっとナディアから解放される。
どうして父上の気が変わったのかはわからないけれど、
これでレベッカと婚約することができる。

「……はぁ。お前がナディア嬢を嫌がっているのはわかっていたが」

「ええ、そうですね。俺はレベッカと婚約したかったのですから」

「レベッカ嬢か……しばらくは婚約できないぞ」

「どうしてですか?」

「王子妃教育を受けていないだろう。
 これから王子妃教育を受けても二十歳までには終わらない。
 お前はレベッカ嬢が王子妃教育を終えるまで、結婚することはできない」

「……それは……仕方ないです」

忘れていた。
王子妃教育は三つに分かれている。
ただの王子妃になるためのもの。王太子妃になるためのもの。
最後は王妃になるためのもの。

ナディアは王太子妃になるための教育まで終わっていた。
あと一年もすれば王妃になる教育が終わるところまで来ていた。
もう七年以上も教育されているのだから当然だ。

それをレベッカがしなくてはいけない……。
王子妃になるための教育が終われば結婚はできるだろうが、
俺が王太子になるためには妃が王太子妃の教育を受けてなくてはならない。

「王家の色を持っているロドルフを王太子にする予定だった。
 だが、レベッカ嬢では間に合わないだろう」

「それは!やってみなければわかりません!」

「……二年後、王太子妃の資格がなければ、マルセルを王太子に任命する。
 アナイスは王太子妃の教育まで終えているからな」

第一王子のマルセル兄上は王家の色で生まれてこなかった。
だから俺が王太子になるはずだったのに。
兄上の妃アナイスはルグラン公爵家出身で王家の色を持っている。
まさか妃の問題で俺が王太子から外されるかもしれないとは。

だが、まだ決まったわけじゃない。
レベッカが王子妃教育を終わらせればいいだけのこと。

「……レベッカは優秀です。だから、問題ありません」

「優秀か……まぁいい。
 ダメならマルセルを王太子にするだけだ。
 ああ、今後はナディア嬢には関わらないように」

「関わるつもりはありません」

顔を見るのも嫌だったくらいだ。
婚約解消したのに関わる理由なんてない。

「お前だけじゃない。レベッカ嬢にも言っておけ。
 妃としてふさわしいかどうか、これからの行動で判断されることになる。
 誰かを陥れようとするような者は王家に必要ないからな」

「……わかりました」

やはり昨日のことがバレていたのか、父上はため息をついた。
これは本気で怒っているかもしれない。
レベッカにもナディアに手を出さないように言っておかないと。

それでも婚約解消したとわかればレベッカは喜ぶだろう。
早く知らせようと執務室を出たら、向こうから兄上が歩いてくるのが見えた。

「ロドルフ!婚約解消したって本当か?」

「ああ、うん。やっと婚約解消できたよ」

笑顔で聞かれて、兄上も婚約解消を喜んでくれているのだと思った。
あまり仲は良くなかったが、心配してくれていたのかもしれない。

「そうか……ナディアを手放してくれてありがとう」

「は?何を言っているんだ?」
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