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今日はついに、レンタル彼氏とのデートだ。
私は天性の喪女だ。
生まれてこの方、異性に好かれた記憶がない。きっとこれから先、私に近づいてくる男性がいたとしても、それはお金目当てか宗教勧誘目的だろう。謎の壺かイルカの絵か、意外と質は良いらしい洗剤でも買わされるに違いない。
二次元のイケメンと恋愛をしているだけでも十分に心は潤う。それでも、人生で一度くらいは三次元でもときめきが欲しい。
そう思って、レンタル彼氏をレンタルしてみた。レンタル彼氏なら、最初からお金を払っているから騙される心配もないし。
胸がドキドキでいっぱいになって、いつもよりもおしゃれをして出かけた。
ファンデーション浮いてないかな?チークが濃過ぎてオカメさんになってないかな?
久しぶりにまともに化粧をしたせいで、不安が尽きない。何となく、集合時間よりもかなり早く着いてしまった。
「待たせちゃってごめんね」
レンタル彼氏が息を切らせながら近寄ってくる。
一時間前に待ち合わせ場所にいる私がおかしいだけで、まだ集合の三十分前だ。それなのに、レンタル彼氏は随分と申し訳なさそうにしている。
「いえ……!まだ全然時間前なので本当に大丈夫です……!それより、まだ三十分前なのですが、前倒しで解散早めますか?それとも、三十分の分、延長料金払ったらいいですか?……ってあれっ……?」
レンタル彼氏としっかりと目が合う。
写真を見た時には、個人情報保護のためか顔を隠していたから気付かなかった。
この人、大学一イケメンと言われてる同学の男子だ……!
「あ……あばばっ……」
「緊張してる?」
「いや……えっと……櫻井さん……ですよね……」
「えっ……?よく気付いてくれたね……!髪型とか服装とか雰囲気変えてみたのに……」
「いや、その、櫻井さんは有名人ですから……」
冷静に考えたら、デリカシーがなさすぎる発言をしてしまった。レンタル彼氏をやっていることが同学にバレるなんて、櫻井さんにとって最悪だろう。何か妙に嬉しそうだから、実はイケメンにとってはノーダメなのかもしれないけど。
それに、私もレンタル彼氏を利用してたことがバレたら困る。ここはちゃんと伝えないと……。
「あの、私誰にも言いませんから!その、正規料金に上乗せでお金は払うので、櫻井さんも私がレンタル彼氏を利用したことは、周りには内緒にしてください!」
「えっ……あっ……うん。お金は一円もいらないけど、分かった。内緒にしておくね?」
櫻井さんは腑に落ちてはいないようだったけれど、とりあえず了承してくれた。よかった。
「レンタル彼氏、時給高いですもんね……!顔がよかったらやってみようってなりますよね!」
何となく、櫻井さんをフォローした方がいいかと思って、レンタル彼氏というアルバイトへの理解を示してみる。自分でも何を言ってるのか分からないけど。
「いや、お金のためじゃないよ?」
「えっ……じゃあどうしてですか……?」
お金目的以外で好きでもない人とデートをするものなのかな?あまり詮索するものではないと分かっているのに、つい聞いてしまう。
「だって君、この前学科の女の子達にさ、レンタル彼氏とデートしてみようかなって言ってたじゃん。だからレンタル彼氏になってみた」
「行動力の化身!」
やばっ……。思わず声に出してツッコんじゃった……。てかそれより……!
「もしかして私、あの時そんなに声大きかったですか……!?」
「いや、むしろだいぶ小声だったから安心して。高性能なマイクにしてたから上手く音を拾ってくれただけだよ♡」
「マイク……?えっと……何で私がレンタル彼氏を利用するって言ったら、櫻井さんがレンタル彼氏になるんですか……?」
「それ言わせるの~?そんなの、君とデートしたかったからに決まってるでしょ♡」
は?
一瞬フリーズしてしまったけど、どうしてそこまでして私とデートしたかったのか……。そんなの、答えは一つしかないだろう。
「あの、櫻井さんって、もしかして、罰ゲームに対して、かなりストイックなタイプなんですか……?」
「罰ゲーム……???いや、ただ君と一緒に遊びたかっただけなんだけど……」
「えっ……いや……ありえないですけどね、もしももしも仮にそうだとしても、その場合は普通に誘いますよね……?盛大なドッキリを仕掛けるためにレンタル彼氏としてやってきたんですよね?」
「えっ……いや……前に誘ったけど……断られちゃったから……。正攻法じゃ無理かなって思って……」
前に誘った……?こんなイケメンに声をかけられたことなんて一度もなかっ……いや、あったわ!
思い出した。まだ櫻井さんのことを認識する前のことだ。食堂でぼっち飯をしていたら、イケメンに声をかけられた。こっそり動画を回されてる可能性を考えてすぐに逃げたんだった。怖過ぎて記憶から消してた……。
困惑する私をよそに、櫻井さんは何故か嬉しそうな顔をしている。
「まあでもさ、僕は君と付き合いたい、いや、結婚したいし、君はレンタル彼氏なんて利用するくらいには彼氏が欲しい。だからさ、付き合おっか♡」
「えっ……何でそうなるんですか……!?」
「ダメ?君はレンタル彼氏を利用する時に、僕のプロフィールを見て僕にしてくれたくらいには、ちょっと雰囲気変えた僕のことを見てもすぐに気付いてくれるくらいには、僕に興味を持ってくれてるんだよね?」
「いやっ……その……それは不可抗力というか……。あの……今日のことはお互いになかったことにして……また他人に戻りませんか……?それが絶対いいと思うんです……」
櫻井さんの思考が全く読めない。怖い。とにかくこの場から逃れたくて私がそう言うと、櫻井さんは急に明らかな作り笑顔で語りかけてくる。
「でも僕ね、他人に戻るにはさ、君のこと、知り過ぎちゃったんだよね」
「それってどういう……?」
「僕ね、君の裏垢知ってるよ。推しの〇〇くんが~とか書いてるやつ。最近新しいグッズが出たみたいで随分と嬉しそうにしてたね」
「えっ……」
怖い。怖い。その垢は、リアルの友人には誰にも教えていない。だから誰にも漏れるはずがない。どうして、櫻井さんはその垢を知っているの?
「それからね、君がどの会社のインターンに行ってて、何社に御社が第一志望って嘘ついてるかも知ってるし、それから……そうだなぁ……君が某サイトでどんな過激な音声作品をダウンロードしてるかも知ってるよ?最近だとMeTubeでもそういうの聴いてるよね?たまにボイス?の人にいいねしてるけどさ、あれ僕も嫉妬しちゃうし、できたらやめて欲しいんだよね。それから……」
「あの……もう……やめてください……」
どうして私は黒歴史を次々と晒されているのか。怖い。もう帰りたい。
「君が僕のお願いを聞いてくれるなら、こういう話、これからも全部内緒にしてあげる。ねえ、僕のお願い、聞いてくれるかな?」
「…………はい……。もう何が何だか分かりませんが……何となく櫻井さんの言いたいことは分かりました……」
「本当に!?よかった……!君って鈍感だし、僕のこと怖がっててコミュニケーションを取るのも難しかったからさ……。やっと気持ちが伝わって嬉しいよ……!」
何で脅されてるんだろう?何で私がタゲられたんだろう?
そんな疑問は置いておいて、今私がすべきことは一つしかない。きっとこの人は私の……を求めているのだから。
「僕のお願いはね……その……僕の……」
「ATMになれってことですよね!ちょっとお金下ろしてきます!」
「何でそうなるの!?」
私は天性の喪女だ。
生まれてこの方、異性に好かれた記憶がない。きっとこれから先、私に近づいてくる男性がいたとしても、それはお金目当てか宗教勧誘目的だろう。謎の壺かイルカの絵か、意外と質は良いらしい洗剤でも買わされるに違いない。
二次元のイケメンと恋愛をしているだけでも十分に心は潤う。それでも、人生で一度くらいは三次元でもときめきが欲しい。
そう思って、レンタル彼氏をレンタルしてみた。レンタル彼氏なら、最初からお金を払っているから騙される心配もないし。
胸がドキドキでいっぱいになって、いつもよりもおしゃれをして出かけた。
ファンデーション浮いてないかな?チークが濃過ぎてオカメさんになってないかな?
久しぶりにまともに化粧をしたせいで、不安が尽きない。何となく、集合時間よりもかなり早く着いてしまった。
「待たせちゃってごめんね」
レンタル彼氏が息を切らせながら近寄ってくる。
一時間前に待ち合わせ場所にいる私がおかしいだけで、まだ集合の三十分前だ。それなのに、レンタル彼氏は随分と申し訳なさそうにしている。
「いえ……!まだ全然時間前なので本当に大丈夫です……!それより、まだ三十分前なのですが、前倒しで解散早めますか?それとも、三十分の分、延長料金払ったらいいですか?……ってあれっ……?」
レンタル彼氏としっかりと目が合う。
写真を見た時には、個人情報保護のためか顔を隠していたから気付かなかった。
この人、大学一イケメンと言われてる同学の男子だ……!
「あ……あばばっ……」
「緊張してる?」
「いや……えっと……櫻井さん……ですよね……」
「えっ……?よく気付いてくれたね……!髪型とか服装とか雰囲気変えてみたのに……」
「いや、その、櫻井さんは有名人ですから……」
冷静に考えたら、デリカシーがなさすぎる発言をしてしまった。レンタル彼氏をやっていることが同学にバレるなんて、櫻井さんにとって最悪だろう。何か妙に嬉しそうだから、実はイケメンにとってはノーダメなのかもしれないけど。
それに、私もレンタル彼氏を利用してたことがバレたら困る。ここはちゃんと伝えないと……。
「あの、私誰にも言いませんから!その、正規料金に上乗せでお金は払うので、櫻井さんも私がレンタル彼氏を利用したことは、周りには内緒にしてください!」
「えっ……あっ……うん。お金は一円もいらないけど、分かった。内緒にしておくね?」
櫻井さんは腑に落ちてはいないようだったけれど、とりあえず了承してくれた。よかった。
「レンタル彼氏、時給高いですもんね……!顔がよかったらやってみようってなりますよね!」
何となく、櫻井さんをフォローした方がいいかと思って、レンタル彼氏というアルバイトへの理解を示してみる。自分でも何を言ってるのか分からないけど。
「いや、お金のためじゃないよ?」
「えっ……じゃあどうしてですか……?」
お金目的以外で好きでもない人とデートをするものなのかな?あまり詮索するものではないと分かっているのに、つい聞いてしまう。
「だって君、この前学科の女の子達にさ、レンタル彼氏とデートしてみようかなって言ってたじゃん。だからレンタル彼氏になってみた」
「行動力の化身!」
やばっ……。思わず声に出してツッコんじゃった……。てかそれより……!
「もしかして私、あの時そんなに声大きかったですか……!?」
「いや、むしろだいぶ小声だったから安心して。高性能なマイクにしてたから上手く音を拾ってくれただけだよ♡」
「マイク……?えっと……何で私がレンタル彼氏を利用するって言ったら、櫻井さんがレンタル彼氏になるんですか……?」
「それ言わせるの~?そんなの、君とデートしたかったからに決まってるでしょ♡」
は?
一瞬フリーズしてしまったけど、どうしてそこまでして私とデートしたかったのか……。そんなの、答えは一つしかないだろう。
「あの、櫻井さんって、もしかして、罰ゲームに対して、かなりストイックなタイプなんですか……?」
「罰ゲーム……???いや、ただ君と一緒に遊びたかっただけなんだけど……」
「えっ……いや……ありえないですけどね、もしももしも仮にそうだとしても、その場合は普通に誘いますよね……?盛大なドッキリを仕掛けるためにレンタル彼氏としてやってきたんですよね?」
「えっ……いや……前に誘ったけど……断られちゃったから……。正攻法じゃ無理かなって思って……」
前に誘った……?こんなイケメンに声をかけられたことなんて一度もなかっ……いや、あったわ!
思い出した。まだ櫻井さんのことを認識する前のことだ。食堂でぼっち飯をしていたら、イケメンに声をかけられた。こっそり動画を回されてる可能性を考えてすぐに逃げたんだった。怖過ぎて記憶から消してた……。
困惑する私をよそに、櫻井さんは何故か嬉しそうな顔をしている。
「まあでもさ、僕は君と付き合いたい、いや、結婚したいし、君はレンタル彼氏なんて利用するくらいには彼氏が欲しい。だからさ、付き合おっか♡」
「えっ……何でそうなるんですか……!?」
「ダメ?君はレンタル彼氏を利用する時に、僕のプロフィールを見て僕にしてくれたくらいには、ちょっと雰囲気変えた僕のことを見てもすぐに気付いてくれるくらいには、僕に興味を持ってくれてるんだよね?」
「いやっ……その……それは不可抗力というか……。あの……今日のことはお互いになかったことにして……また他人に戻りませんか……?それが絶対いいと思うんです……」
櫻井さんの思考が全く読めない。怖い。とにかくこの場から逃れたくて私がそう言うと、櫻井さんは急に明らかな作り笑顔で語りかけてくる。
「でも僕ね、他人に戻るにはさ、君のこと、知り過ぎちゃったんだよね」
「それってどういう……?」
「僕ね、君の裏垢知ってるよ。推しの〇〇くんが~とか書いてるやつ。最近新しいグッズが出たみたいで随分と嬉しそうにしてたね」
「えっ……」
怖い。怖い。その垢は、リアルの友人には誰にも教えていない。だから誰にも漏れるはずがない。どうして、櫻井さんはその垢を知っているの?
「それからね、君がどの会社のインターンに行ってて、何社に御社が第一志望って嘘ついてるかも知ってるし、それから……そうだなぁ……君が某サイトでどんな過激な音声作品をダウンロードしてるかも知ってるよ?最近だとMeTubeでもそういうの聴いてるよね?たまにボイス?の人にいいねしてるけどさ、あれ僕も嫉妬しちゃうし、できたらやめて欲しいんだよね。それから……」
「あの……もう……やめてください……」
どうして私は黒歴史を次々と晒されているのか。怖い。もう帰りたい。
「君が僕のお願いを聞いてくれるなら、こういう話、これからも全部内緒にしてあげる。ねえ、僕のお願い、聞いてくれるかな?」
「…………はい……。もう何が何だか分かりませんが……何となく櫻井さんの言いたいことは分かりました……」
「本当に!?よかった……!君って鈍感だし、僕のこと怖がっててコミュニケーションを取るのも難しかったからさ……。やっと気持ちが伝わって嬉しいよ……!」
何で脅されてるんだろう?何で私がタゲられたんだろう?
そんな疑問は置いておいて、今私がすべきことは一つしかない。きっとこの人は私の……を求めているのだから。
「僕のお願いはね……その……僕の……」
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