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本編
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体調が悪い……。熱っぽい……。ふわふわする……。
もうすぐ深夜に差し掛かるという頃、私の体調は終わっていた。
原因はいくつか考えられるけど、とりあえず体調が悪いことに変わりはない。
「こんな時、誰かいたらな……」
思わずボソっとつぶやいてしまう。病に冒されていると、人はどうしても気弱になる。誰かの手を握りたい。
ふと手を伸ばすと、私の手を掴むものがある。
「えっ!?」
手の主は、近所のストーカーくんだ。愛称なんてつけている場合ではないかもしれないけれど、彼は目立つ害はないので、気軽にストーカーくんと呼んでいる。そういえば名前は知らない。
「僕がいるからね……!」
ストーカーくんにギュッと手を握られる。一周回って頼りになるかもしれないけど、別にいても嬉しくない。頼んでなくてもそばにいるのはいつもだろ。
「家、侵入したの……?」
「うん。監視カメラで君のことを見守ってたら、君が熱を測ったかと思うと、お布団にこもっちゃったからさ。心配で来た」
「そうなんだ……。全文犯罪行為で草……」
聞かなきゃ良かった。こいつ盗撮もしてるんだ。今度画面越しにブラクラでも見せてやろうかな……。
「あっ、君の体調が良くなるように色々買ってきたからさ。はい、ポ○リ」
「ありが……ひっ……!」
ポ○リ、それはいかにも清涼感、透明感たっぷりの飲み物なはず。
だが、ストーカーくんが差し出してくれたものは、明らかに異質だ。
透明な容器に「愛してる」「早く良くなってね♡」から始まって、もはや脳が理解を拒否するほどの怪文書がびっしりと書き込まれている。
「君が寝ている間に愛込めといた!あ、もちろん自前のペン使ったから安心してね!君のペンのインクは使ってないから!」
「いや、これもう呪詛だろ……。もしくは耳なし芳一かと思ったわ……」
ストーカーくんからもらったポ○リを飲む。ストーカーくんの激重感情とは違って爽やかな味で美味しい。ちょっと甘ったるいけど。
「まあ、色々思うところはあるけど、ありがとうね。1人で心細かったし、助かったよ」
思わずお礼を言ってしまう。助かってるのは本当だから。
「君からお礼を言ってもらえるなんて……!ありがとう!僕は当然のことをしたまでだよ……!」
「いや、盗撮と住居侵入は当然のことじゃないからね……」
それからストーカーくんは、数日間、私をずっと見守って看病してくれて(見つめすぎだったけど……)、私の病は全快した。
ストーカーくんにお礼を言おうと、以前ストーカーくんからの怪文書(手紙)に書かれていた住所を頼りにストーカーくんの家へ向かう。
(今の私、完全に、心霊スポットに自分から飛び込むバカな大学生みたい……)
何となくストーカーくんに優しくなってる自分が気恥ずかしくて、思わず自嘲する。
ピンポンをしても返事がない。慌てて扉を開けると扉には鍵がかかっていなくて、ストーカーくんが玄関に倒れている。
「えっ?大丈夫!?救急車……!」
咄嗟にスマホを手に取ると、ストーカーくんに静止される。
「僕は大丈夫だよ……。君が来てくれただけで嬉しいから……。それにしても……君が来てくれるなんて……。こんなんもう天国じゃん……」
「いや、マジで天国に行きそうになってるから救急車呼ぶよ」
電話をかけると、救急車が来る。私はストーカーくんをつれて病院に向かった。
1週間後、ストーカーくんが退院ということで、私も病院へ迎えに行く。
医師の話を聞く限り、ストーカーくんは倒れる前から発熱していて、それでも私の看病を寝ずにやって、そして私が全快したのを見届けて家に帰るところで倒れたようだ。
何だかんだストーカーくんのことが心配で家まで付き添ってみる。私はストーカーくんに感謝をしているのだ。
ストーカーくんがベッドに横たわるのを見届けて、帰ろうとする。その前に、ストーカーくんに声をかける。
「ストーカーくんってさ、名前、何て言うの?」
こんな身を呈してまで私を守ってくれた彼に、歩み寄りたいと思ったのだ。
「えへへ。嬉しい。僕の名前はね……」
その時、窓の隙間から風が吹く。強風だったようで、救急車を呼ぶ際に、一旦ストーカーくんの机に置いていたバッグが落ちる。
バッグを拾おうとしたその時気付く。
バッグから散乱したものは、ティッシュ、熱さまシート、ポ○リなどだった。それらは全部、私の使用済みの……。
「うわあああああああああああ!やっぱキモい!この変態ストーカーが!!!」
私とストーカーくんの一瞬交わりかけた糸は、ストーカーくんの自爆によって爆散した。
もうすぐ深夜に差し掛かるという頃、私の体調は終わっていた。
原因はいくつか考えられるけど、とりあえず体調が悪いことに変わりはない。
「こんな時、誰かいたらな……」
思わずボソっとつぶやいてしまう。病に冒されていると、人はどうしても気弱になる。誰かの手を握りたい。
ふと手を伸ばすと、私の手を掴むものがある。
「えっ!?」
手の主は、近所のストーカーくんだ。愛称なんてつけている場合ではないかもしれないけれど、彼は目立つ害はないので、気軽にストーカーくんと呼んでいる。そういえば名前は知らない。
「僕がいるからね……!」
ストーカーくんにギュッと手を握られる。一周回って頼りになるかもしれないけど、別にいても嬉しくない。頼んでなくてもそばにいるのはいつもだろ。
「家、侵入したの……?」
「うん。監視カメラで君のことを見守ってたら、君が熱を測ったかと思うと、お布団にこもっちゃったからさ。心配で来た」
「そうなんだ……。全文犯罪行為で草……」
聞かなきゃ良かった。こいつ盗撮もしてるんだ。今度画面越しにブラクラでも見せてやろうかな……。
「あっ、君の体調が良くなるように色々買ってきたからさ。はい、ポ○リ」
「ありが……ひっ……!」
ポ○リ、それはいかにも清涼感、透明感たっぷりの飲み物なはず。
だが、ストーカーくんが差し出してくれたものは、明らかに異質だ。
透明な容器に「愛してる」「早く良くなってね♡」から始まって、もはや脳が理解を拒否するほどの怪文書がびっしりと書き込まれている。
「君が寝ている間に愛込めといた!あ、もちろん自前のペン使ったから安心してね!君のペンのインクは使ってないから!」
「いや、これもう呪詛だろ……。もしくは耳なし芳一かと思ったわ……」
ストーカーくんからもらったポ○リを飲む。ストーカーくんの激重感情とは違って爽やかな味で美味しい。ちょっと甘ったるいけど。
「まあ、色々思うところはあるけど、ありがとうね。1人で心細かったし、助かったよ」
思わずお礼を言ってしまう。助かってるのは本当だから。
「君からお礼を言ってもらえるなんて……!ありがとう!僕は当然のことをしたまでだよ……!」
「いや、盗撮と住居侵入は当然のことじゃないからね……」
それからストーカーくんは、数日間、私をずっと見守って看病してくれて(見つめすぎだったけど……)、私の病は全快した。
ストーカーくんにお礼を言おうと、以前ストーカーくんからの怪文書(手紙)に書かれていた住所を頼りにストーカーくんの家へ向かう。
(今の私、完全に、心霊スポットに自分から飛び込むバカな大学生みたい……)
何となくストーカーくんに優しくなってる自分が気恥ずかしくて、思わず自嘲する。
ピンポンをしても返事がない。慌てて扉を開けると扉には鍵がかかっていなくて、ストーカーくんが玄関に倒れている。
「えっ?大丈夫!?救急車……!」
咄嗟にスマホを手に取ると、ストーカーくんに静止される。
「僕は大丈夫だよ……。君が来てくれただけで嬉しいから……。それにしても……君が来てくれるなんて……。こんなんもう天国じゃん……」
「いや、マジで天国に行きそうになってるから救急車呼ぶよ」
電話をかけると、救急車が来る。私はストーカーくんをつれて病院に向かった。
1週間後、ストーカーくんが退院ということで、私も病院へ迎えに行く。
医師の話を聞く限り、ストーカーくんは倒れる前から発熱していて、それでも私の看病を寝ずにやって、そして私が全快したのを見届けて家に帰るところで倒れたようだ。
何だかんだストーカーくんのことが心配で家まで付き添ってみる。私はストーカーくんに感謝をしているのだ。
ストーカーくんがベッドに横たわるのを見届けて、帰ろうとする。その前に、ストーカーくんに声をかける。
「ストーカーくんってさ、名前、何て言うの?」
こんな身を呈してまで私を守ってくれた彼に、歩み寄りたいと思ったのだ。
「えへへ。嬉しい。僕の名前はね……」
その時、窓の隙間から風が吹く。強風だったようで、救急車を呼ぶ際に、一旦ストーカーくんの机に置いていたバッグが落ちる。
バッグを拾おうとしたその時気付く。
バッグから散乱したものは、ティッシュ、熱さまシート、ポ○リなどだった。それらは全部、私の使用済みの……。
「うわあああああああああああ!やっぱキモい!この変態ストーカーが!!!」
私とストーカーくんの一瞬交わりかけた糸は、ストーカーくんの自爆によって爆散した。
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