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四章 遺跡編突入(1)生物のいない深い森
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遺跡のある森は、見上げると首が痛くなるような背の高い巨木群が広がっていた。生い茂った木々には、蔦科の植物が絡みつき、太いものであると、まるで蛇がぶらさがっているかのようにも見えた。
早朝にアビードの街を出発した馬車は、午後の早い時間に目的地の森に到着していた。入ってすぐの場所は、あまり木々が入り組んでいなかったので、そこに馬車が停められた。
下車したラビは、持ってきた剣を腰に備えた。何かあった場合に馬だけでも逃げられるよう手綱を調整し、各々の剣と武器を確認するセドリック達を後ろに、高い木々を見上げてぐるりと見渡す。
『生物の気配がしねぇな』
馬車の上から隣へと降り立ったノエルが、そう言って漆黒の優雅な毛並みを持った尻尾を一回振った。ラビもそれは感じていたので、「そうだね」と相槌を打った。
深い森は、木々から木漏れ日が降り注いで明るいにもかかわらず、どこか閑散として物寂しさに満ちていた。ホノワ村にある森にはなかった、風の通り抜ける音の他はないという状況には違和感を覚える。
「ここまで静かなのは、オレ初めてかも。それに、空気がすごく澄みすぎてる感じもする」
『その感覚は間違ってないぜ。来るまで確信はなかったが、ここは『聖域』だな、空気は一切の穢れも含んでない。おかげで森の中にある遺跡が、元は神殿の役割を果たしていた場所である可能性が、ぐんと高くなった』
その時、カサリと地面の草を踏む足音が聞こえて、ラビは振り返った。
そこには、相変わらず無愛想な様子で、美麗な顔を顰めたユリシスがいた。細い眼鏡を掛け直しながら、こちらの足辺りに目を向けてくる。
「声が聞こえますね」
『聞こえるようにしてやってんだよ』
ノエルが、呻るようにして言い返した。
親友の声が誰かに聞こえている。姿は見えていないのに、存在を受け入れられている様子は、やはり新鮮で、ラビはこっそり目に留めていた。しかし、ふと、こちらを見た彼が沈黙し、ついでのようにユリシスまでじっと見下ろしてきた。
数秒ほど黙っていたノエルが、ゆっくりと口を開いた。
『……おい。おいラビ、感動してます、って露骨に表情に出ちまってるぞ』
「あなたは、この大きな犬に関わると、途端にバカみたいに素直になりますね」
『俺は犬じゃねぇ、狼だっつってんだろッ』
あとラビをバカ呼ばわりするな、とノエルが叱って尻尾を振るった。
またしても腰のあたりを打たれたユリシスが、ガバリとそちらに目を向けて「獣の尾のような衝撃を感じましたがッ」と口にした。ノエルはひらりと飛んで、しれっとした表情でラビの反対側へと移動する。
サーバルが、用意を整えたところで、チラリと肩越しにそちらへと目を向けて、困ったようにこう呟いた。
「相変わらず、あの組み合わせになると騒がしいなぁ……」
すると、一番の後輩であるテトが、華奢な身体に必要最低限の備えがされた非常用の小さなリュックを背負ったところで、素直さ丸出しで大先輩のサーバルを見た。
「犬って馬車酔いしないのかって、気にしている感じでしたけどね」
「…………テト、多分それ、嫌味で口にしたんだと思うよ」
むしろ、俺には忌々しげに言っているようにしか見えなかった、と、サーバルは下車した際のユリシスの様子について感想を述べた。その脇をジンがだらしない様子で通過しながら、アドバイスを口にする。
「サーバルさん。テトって、マジで人の悪意に気付かない時があるんで、諦めた方がいいっすよ」
そう言った彼が近くまで歩み寄って、そこから改めて辺りを見やる。
ラビは、すぐそこまで来たジンに気付いて振り返り、そういえば、と思い付いた表情で声を掛けた。
「その遺跡って、ここからどのくらいで着くの?」
「あ? え~っと、どうだったかな……。多分、そんなに遠くないとか、なんとか……?」
気取っていないため、まるで普段の威嚇するような少年っ気もなく尋ねられて、ジンが少し戸惑った様子で答える。
タイミング悪くユリシスは離れてしまっており、副隊長であるセドリックと、最年長組の屈強な騎士であるヴァンが、小さく言葉を交わす場に合流して調査進行の話し合いに参加したところだった。
ジンは、質問を近くで聞いていたテトへ目を向けた。すると彼は、覚えていないという微塵の後ろめたさもない視線をサーバルへと送った。察知した彼が、自身を見つめるラビ達三人に気付いて、緊張感のない後輩達だなぁ、と柔らかな苦笑を浮かべて口を開いた。
「資料によると、徒歩で四十分の距離にあるらしいよ。迷わずに進めば、もっと早いんじゃないかな」
『人間の目では分からないだろうが、僅かに人が出入りしていた頃の道の痕跡がある。それを辿れば、恐らく真っ直ぐ着く』
ノエルがそう言い、巨大な木の根に飛び乗って、赤い瞳で森の奥を見据えた。
唐突に声を聞いたサーバルが、ガバリとそちらに目を向けた。見えない姿を探すように視線を往復させた後、「そうか、あの黒大狼、声だけは聞こえるように出来るんだっけ……」と、どこか呆気に取られた声で呟いた。
その時、話し合いを終えてセドリックがやって来た。
声で場所を特定したのか、ここにいる誰よりも正確に、まるで見えているみたいにノエルの凛々しい立ち姿へと目を向ける。そんな幼馴染の様子を、ラビはじっと目を留めてしまっていた。
「ノエル、俺達の先頭に立って、案内役を頼んでもいいですか?」
『最初からそのつもりさ。ただし、俺はラビの歩調に合わせるからな』
その答えを聞いて、セドリックが一瞬きょとんとした後、ふっと目元を和らげて「そうして頂けると助かります」と答えた。その様子を見たわけでもないのに、ノエルが横顔を顰めて『自分の事みたいに嬉しく言いやがって』と愚痴った。
ラビは、彼らとは歩幅に差があると思い付けないまま、続いてセドリックに微笑みかけられて不思議になった。その表情は、昔から変わらない持ち前の優しさが滲み出ていて、相変わらずとても穏やかに笑う幼馴染だなぁと思った。
この森に動物は生息していない。
アビードの街から出発する直前にも、全員で確認して共有したその資料を思い返すように、ヴァンが思案気にざっと辺りを見やってこう言った。
「今のところ、注意すべき害獣の脅威がないってのは、有り難いな。とっとと先に進める」
「とはいえ、警戒されるのは、突然現われるという害獣タイプの蛇ですかね。『砂の亡霊』と呼ばれているだけあって、全部が蛇の姿をしているのかは分かりませんが、高い確率でそうなのでしょう」
ユリシスが、考えつつ相槌を打つ。
途中で引き返した過去の調査隊の記録から、森で他の生物が確認されたという記述はなかった。そんな中で『砂の亡霊』という表現や、彼らを追いやったという『唐突に現われる大量の蛇』が警戒すべき問題だった。
当時、害獣を専門にしていた国家獣師でさえ、逃げ帰ったらしい。現われる場所や、タイミングは分かっていない。それは遺跡の近くで発生するのか、当の遺跡内で起こるのかも予想が難しかった。
『仕掛けがあるモノであれば、迂闊にそいつを動かさなければいい。ただ、それが一定の距離に来た生物を対象に、結界みてぇに反応するパターンの術だったら厄介だな。その場合、術の元をどうにかしないと、次から次に湧き出てくる』
「まるで魔法みたいな話ですね」
セドリックが、素直な感想を口にした。ノエルが数秒ほどむっとした様子で黙り込んで、それから『…………魔術ってのは、そんなモンだ』と、あまり口にしたくない話題だと言わんばかりの口調で呟き、こう続けた。
『注意すべきは、それだけじゃねぇぞ。遺跡ってのは、人間が物理的に仕掛けた罠も多い。だから出来るだけ、物には触れたりしない方がいい』
つまり慎重である事が必要だ。そう改めて気を引き締めたところで、ラビ達はノエルと共に森の奥へと足を進めた。
※※※
アビードの街で騒ぎを起こした三人の盗賊は、二十代中盤を越えた三歳年上の長男ベックが、リーダーとして率いている兄弟三人の小さな盗賊団だ。どうにか脱出を果たした彼らは、ラビ達の馬車が遺跡に向かうと知って、こっそり追っていた。
「文化的な遺跡だっていうからノーマークだったが、騎士団がああやって、わざわざお忍びみたいな馬車で調べに向かっているって事は、お宝があるに違いねぇ。やられてもただじゃ起きねぇのが、俺のポリシーだ」
「さすが兄貴ッ。縄をぶちぎった執念も半端じゃねぇな」
向こうに停められた馬車を、木に身を隠して覗きこんでいた次男が、尊敬の目を向ける。そのそばで、二十歳になったばかりの三男が「でもさ、兄貴達」と呼んだ。
「ここに『とんでもない化け物が出る』って話は、本当なんかな?」
「んなの、ただの迷信だろ。見てみろよ、動物だって一匹もいやしねぇ」
そう促されて、尋ねた三男は、次男と共に森の中の様子を改めて確認した。ローブ姿ではなくなった騎士服の男達と、見た目の小ささからは想像もつかない、騎士見習いのような軍服に身を包んだ『凶暴な少年』が去ったそこは、静まり返っている。
「とりあえず、あいつらに付いていれば『遺跡』とやらに辿り着ける。勘付かれないよう距離を開けて、出来るだけ風下から後を追うぞ」
ベックは、弟達に声を掛けた。そうして、逃げ足と忍び足だけは一流の、たった三人の兄弟盗賊団は動き出したのだった。
早朝にアビードの街を出発した馬車は、午後の早い時間に目的地の森に到着していた。入ってすぐの場所は、あまり木々が入り組んでいなかったので、そこに馬車が停められた。
下車したラビは、持ってきた剣を腰に備えた。何かあった場合に馬だけでも逃げられるよう手綱を調整し、各々の剣と武器を確認するセドリック達を後ろに、高い木々を見上げてぐるりと見渡す。
『生物の気配がしねぇな』
馬車の上から隣へと降り立ったノエルが、そう言って漆黒の優雅な毛並みを持った尻尾を一回振った。ラビもそれは感じていたので、「そうだね」と相槌を打った。
深い森は、木々から木漏れ日が降り注いで明るいにもかかわらず、どこか閑散として物寂しさに満ちていた。ホノワ村にある森にはなかった、風の通り抜ける音の他はないという状況には違和感を覚える。
「ここまで静かなのは、オレ初めてかも。それに、空気がすごく澄みすぎてる感じもする」
『その感覚は間違ってないぜ。来るまで確信はなかったが、ここは『聖域』だな、空気は一切の穢れも含んでない。おかげで森の中にある遺跡が、元は神殿の役割を果たしていた場所である可能性が、ぐんと高くなった』
その時、カサリと地面の草を踏む足音が聞こえて、ラビは振り返った。
そこには、相変わらず無愛想な様子で、美麗な顔を顰めたユリシスがいた。細い眼鏡を掛け直しながら、こちらの足辺りに目を向けてくる。
「声が聞こえますね」
『聞こえるようにしてやってんだよ』
ノエルが、呻るようにして言い返した。
親友の声が誰かに聞こえている。姿は見えていないのに、存在を受け入れられている様子は、やはり新鮮で、ラビはこっそり目に留めていた。しかし、ふと、こちらを見た彼が沈黙し、ついでのようにユリシスまでじっと見下ろしてきた。
数秒ほど黙っていたノエルが、ゆっくりと口を開いた。
『……おい。おいラビ、感動してます、って露骨に表情に出ちまってるぞ』
「あなたは、この大きな犬に関わると、途端にバカみたいに素直になりますね」
『俺は犬じゃねぇ、狼だっつってんだろッ』
あとラビをバカ呼ばわりするな、とノエルが叱って尻尾を振るった。
またしても腰のあたりを打たれたユリシスが、ガバリとそちらに目を向けて「獣の尾のような衝撃を感じましたがッ」と口にした。ノエルはひらりと飛んで、しれっとした表情でラビの反対側へと移動する。
サーバルが、用意を整えたところで、チラリと肩越しにそちらへと目を向けて、困ったようにこう呟いた。
「相変わらず、あの組み合わせになると騒がしいなぁ……」
すると、一番の後輩であるテトが、華奢な身体に必要最低限の備えがされた非常用の小さなリュックを背負ったところで、素直さ丸出しで大先輩のサーバルを見た。
「犬って馬車酔いしないのかって、気にしている感じでしたけどね」
「…………テト、多分それ、嫌味で口にしたんだと思うよ」
むしろ、俺には忌々しげに言っているようにしか見えなかった、と、サーバルは下車した際のユリシスの様子について感想を述べた。その脇をジンがだらしない様子で通過しながら、アドバイスを口にする。
「サーバルさん。テトって、マジで人の悪意に気付かない時があるんで、諦めた方がいいっすよ」
そう言った彼が近くまで歩み寄って、そこから改めて辺りを見やる。
ラビは、すぐそこまで来たジンに気付いて振り返り、そういえば、と思い付いた表情で声を掛けた。
「その遺跡って、ここからどのくらいで着くの?」
「あ? え~っと、どうだったかな……。多分、そんなに遠くないとか、なんとか……?」
気取っていないため、まるで普段の威嚇するような少年っ気もなく尋ねられて、ジンが少し戸惑った様子で答える。
タイミング悪くユリシスは離れてしまっており、副隊長であるセドリックと、最年長組の屈強な騎士であるヴァンが、小さく言葉を交わす場に合流して調査進行の話し合いに参加したところだった。
ジンは、質問を近くで聞いていたテトへ目を向けた。すると彼は、覚えていないという微塵の後ろめたさもない視線をサーバルへと送った。察知した彼が、自身を見つめるラビ達三人に気付いて、緊張感のない後輩達だなぁ、と柔らかな苦笑を浮かべて口を開いた。
「資料によると、徒歩で四十分の距離にあるらしいよ。迷わずに進めば、もっと早いんじゃないかな」
『人間の目では分からないだろうが、僅かに人が出入りしていた頃の道の痕跡がある。それを辿れば、恐らく真っ直ぐ着く』
ノエルがそう言い、巨大な木の根に飛び乗って、赤い瞳で森の奥を見据えた。
唐突に声を聞いたサーバルが、ガバリとそちらに目を向けた。見えない姿を探すように視線を往復させた後、「そうか、あの黒大狼、声だけは聞こえるように出来るんだっけ……」と、どこか呆気に取られた声で呟いた。
その時、話し合いを終えてセドリックがやって来た。
声で場所を特定したのか、ここにいる誰よりも正確に、まるで見えているみたいにノエルの凛々しい立ち姿へと目を向ける。そんな幼馴染の様子を、ラビはじっと目を留めてしまっていた。
「ノエル、俺達の先頭に立って、案内役を頼んでもいいですか?」
『最初からそのつもりさ。ただし、俺はラビの歩調に合わせるからな』
その答えを聞いて、セドリックが一瞬きょとんとした後、ふっと目元を和らげて「そうして頂けると助かります」と答えた。その様子を見たわけでもないのに、ノエルが横顔を顰めて『自分の事みたいに嬉しく言いやがって』と愚痴った。
ラビは、彼らとは歩幅に差があると思い付けないまま、続いてセドリックに微笑みかけられて不思議になった。その表情は、昔から変わらない持ち前の優しさが滲み出ていて、相変わらずとても穏やかに笑う幼馴染だなぁと思った。
この森に動物は生息していない。
アビードの街から出発する直前にも、全員で確認して共有したその資料を思い返すように、ヴァンが思案気にざっと辺りを見やってこう言った。
「今のところ、注意すべき害獣の脅威がないってのは、有り難いな。とっとと先に進める」
「とはいえ、警戒されるのは、突然現われるという害獣タイプの蛇ですかね。『砂の亡霊』と呼ばれているだけあって、全部が蛇の姿をしているのかは分かりませんが、高い確率でそうなのでしょう」
ユリシスが、考えつつ相槌を打つ。
途中で引き返した過去の調査隊の記録から、森で他の生物が確認されたという記述はなかった。そんな中で『砂の亡霊』という表現や、彼らを追いやったという『唐突に現われる大量の蛇』が警戒すべき問題だった。
当時、害獣を専門にしていた国家獣師でさえ、逃げ帰ったらしい。現われる場所や、タイミングは分かっていない。それは遺跡の近くで発生するのか、当の遺跡内で起こるのかも予想が難しかった。
『仕掛けがあるモノであれば、迂闊にそいつを動かさなければいい。ただ、それが一定の距離に来た生物を対象に、結界みてぇに反応するパターンの術だったら厄介だな。その場合、術の元をどうにかしないと、次から次に湧き出てくる』
「まるで魔法みたいな話ですね」
セドリックが、素直な感想を口にした。ノエルが数秒ほどむっとした様子で黙り込んで、それから『…………魔術ってのは、そんなモンだ』と、あまり口にしたくない話題だと言わんばかりの口調で呟き、こう続けた。
『注意すべきは、それだけじゃねぇぞ。遺跡ってのは、人間が物理的に仕掛けた罠も多い。だから出来るだけ、物には触れたりしない方がいい』
つまり慎重である事が必要だ。そう改めて気を引き締めたところで、ラビ達はノエルと共に森の奥へと足を進めた。
※※※
アビードの街で騒ぎを起こした三人の盗賊は、二十代中盤を越えた三歳年上の長男ベックが、リーダーとして率いている兄弟三人の小さな盗賊団だ。どうにか脱出を果たした彼らは、ラビ達の馬車が遺跡に向かうと知って、こっそり追っていた。
「文化的な遺跡だっていうからノーマークだったが、騎士団がああやって、わざわざお忍びみたいな馬車で調べに向かっているって事は、お宝があるに違いねぇ。やられてもただじゃ起きねぇのが、俺のポリシーだ」
「さすが兄貴ッ。縄をぶちぎった執念も半端じゃねぇな」
向こうに停められた馬車を、木に身を隠して覗きこんでいた次男が、尊敬の目を向ける。そのそばで、二十歳になったばかりの三男が「でもさ、兄貴達」と呼んだ。
「ここに『とんでもない化け物が出る』って話は、本当なんかな?」
「んなの、ただの迷信だろ。見てみろよ、動物だって一匹もいやしねぇ」
そう促されて、尋ねた三男は、次男と共に森の中の様子を改めて確認した。ローブ姿ではなくなった騎士服の男達と、見た目の小ささからは想像もつかない、騎士見習いのような軍服に身を包んだ『凶暴な少年』が去ったそこは、静まり返っている。
「とりあえず、あいつらに付いていれば『遺跡』とやらに辿り着ける。勘付かれないよう距離を開けて、出来るだけ風下から後を追うぞ」
ベックは、弟達に声を掛けた。そうして、逃げ足と忍び足だけは一流の、たった三人の兄弟盗賊団は動き出したのだった。
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