治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新

文字の大きさ
45 / 58

44話 心配する人その二、治療係とジークハルト

しおりを挟む
 呪いの副作用(?)による懐き具合からするに、進んで治療方法を受け入れるだろう。

「この前、私がしたいように治療の協力につき合うと約束してくださいましたし」

 思い返して口にしたら、フィサリウスの笑顔が初めて固くなった。

「あれ? どうかなさいましたか?」
「あんな賭けをした身が心配だな、と思って……」
「心配?」
「あの時のジークの様子からするに、彼、次は本気で」

 そこでフィサリウスの顔色が悪くなった。同時に言葉を止められてしまって、エリザは気になった。

 エリザが心配しつつ小首を傾げたら、彼が口を開く。

「一つ確認したいんだけど、君は、いちおう成人しているわけだね?」
「なんかその確認怖い気がするんですけど……そうです、十八歳です。この国の女性の成人は十八からなんですよね?」
「男も同じだけどね。いや、こう、まじまじと見ても君はもう少し年齢が低く見えるからさ」

 彼が腕を抱え、顎に手をあてて、じーっと見つめてくる。

 なんて失礼な王子様なんだ。

「身長が低いのは仕方ないんです、たぶん。いずれ伸びます、成長が少々遅いタイプなんです、たぶん」
「たぶんが二つ――希望論?」
「なんて失礼王子様なんだ」

 エリザは思わず、口に出した。

 けれど、やはりフィサリウスは対応が甘くて、笑っただけだった。けれどその表情はすぐに曇っていく。

「解除薬については、もう材料集めに入ってもらっているから、でき次第すぐにでも君へ届けさせるよ。受け取ったら、それをジークに飲ませてね。はぁ」
「不吉な溜息を吐かないでください。なんなんですか?」

 あれだけ親友の『呪い』を解きたいとしていたのに、露骨に乗り気でなくなった彼にエリザは顔を顰めた。

 するとフィサリウスが、真剣な顔をして身を乗り出した。

「君にはすごく世話になっているし、もう僕の友人でもある。だから、その解除薬を飲ませたあとで無理やりとかいう展開になって、初めてなのにとてもつらいことになったとか愚痴る相手がいなかったら、私に頼ってくれていいからね。ジークのことは一発殴るから」
「え、どういうこと? その解除薬には何か副作用があったりするの!?」

 エリザが気になって尋ねたら、彼は真顔になった。

「副作用はないよ。魔力石を使うんだから」

 だから、この国では常識らしいその『魔力石』もエリザはよく分からないのだ。

 そのへんの状況も説明して欲しいのだが、今の彼とは話しがかみ合わなさそうだと想像しただけで疲れてしまった。

「私は怪力の指輪があるし、何か起こっても大丈夫ですよ」

 とりあえず、そう言って指輪を見せた。

 フィサリウスが顔の中心に力を入れるような、また妙な顔をした。

「君のその指輪は、私が想像している場面では役に立たなくなる気がするんだ。そもそも君の話からすると、私としては、守ってくれる絶対の味方にだったら外れると推測――」

 だが彼の台詞に、扉のノック音が続いた。

 外から騎士が、時間を告げてきた。

 それを聞いたエリザは、一気にそちらへ意識がぎゅんっと引っ張られて、ハッとして立ち上がった。

「うわぁあぁまずいっ! ジークハルト様の訓練指導が終わっちゃう!」

 エリザが扉を開け放つと、騎士がびっくりしたように目を丸くした。

「うわっ、ごめんなさいっ。それじゃあ私行きますからっ」
「走ると危ないから、気をつけて!」

 飛び出したエリザは、聞こえてきたフィサリウスの声に「はいーっ!」と言いながら大急ぎで走っていた。

 訓練され、鍛えられた自分が転ぶなんてことはないと思っての返事だった。


 それを廊下から見送ったフィサリウスに、護衛についていた騎士が言う。

「……大丈夫ですかね?」
「まぁ、誰かに介抱された、なんていう噂が流れて、ジークの耳に入らなければ相手は生き続ける」
「【赤い魔法使い】様ではなくて、相手の誰かが……」

 騎士たちがゾッとする。

 ところで、と訪れていた騎士が続けた。

「婚約申請書の件で、王家の承認を求める書面が来ています」

 フィサリウスは、そう言われて差し出された封筒にしばし沈黙した。

「…………早いな」

 思わず落とされた彼の呟きに、事情を知る専属の護衛騎士たちもまた、先程走っていった相手を心配するように黙り込んでしまったのだった。

              ◆

 ようやくジークハルトの術が解けると知れて、エリザは上機嫌だった。

 訓練場へと向かいながら、この吉報を早くジークハルトに伝えたいと思った。それからルディオだ。

 ジークハルトに『呪い』の件を打ち明けてしまったことは、フィサリウスはとくに問題視しなかった。

 解除の件について、二人に堂々と進展を話せるようになったのもエリザは嬉しい。

(師匠のもとを出てから――ルディオも、ジークハルト様も、初めてできてすごく仲のいい友達だから)

 もしかしたら、ジークハルトの方は、術が解けた時には少しよそよそしい距離感を置かれるかもしれない。

 そこには、正直言うと少し寂しい気持ちは湧く。

 ジークハルトが信頼してくれている態度を、可愛いなと感じていたのは本音だ。

 そして日頃のジークハルトの頑張りや成長を見ていたからこそ、すっかり情が湧いてしまっていた。

 あんなに一緒に居たがられたのも、エリザには初めての経験だったから。

 でも彼の独り立ちを望んでいるのも本当だ。

 呪いがなくなったら、ジークハルトは家を継ぐ人間として誰かと婚約できる。

 蕁麻疹や失神や恐怖心が出るかもと細かく女性に怯える必要はないし、今を、自由に生きられる。

 ルディオも、ジークハルトと結婚させられる心配がなくなって安心するだろう。

 ジークハルトを治療するのが、エリザの目標なのだ。

 女性とも会話ができるようになってきたし――あとは、原因の根本になっている『呪い』を解けば自分の役目は終わりだと、エリザは思っている。

(呪いを解いたら、私じゃなくても彼を導ける――)

 訓練場に向かってみると、先に廊下へルディオが上がってきた。

「おっ、走ってどうした?」

 すでに濡れたタオルで身体も拭いたあとらしい。

 エリザはぱぁっと表情を明るくした。彼の城から続いた数人の騎士たちが、可愛いといってざわついたが視界に入らなかった。

「ちょっとこっち来て! 聞いて欲しいことがあるからっ」

 訓練場と反対側の廊下の端により、支柱を背に呪いの解除方法を発見したことについて教えた。

「おー、さすがは殿下。国で一番の魔法使いで、そのうえ研究者だもんなぁ」
「呪いが解けたらお祝いでね!」

 そうしたらジークハルトは、今よりも女性に怯えなくなって済む。

 だが、ルディオは親友の呪いがなくなることを喜んだばかりなのに、なんだか先程見たフィサリウスみたいな反応をした。

「吉と出るか、凶と出るかによるなぁ……」
「はい?」
「もしかしたら騒ぎになって、それどころじゃなくなるかもだし?」

 いったいなんの『騒ぎ』だというのだろう。

 訝って顔を顰めていたエリザは、不意に後ろから腕が回ってきて驚いた。

「う、うわぁあぁあ!? 私が気配を感じないとかいったい何者――」
「こんなところで二人、何をしているんです?」

 肩越しにハッと見上げて、エリザはなんだと拍子抜けした。

「ジークハルト様!」
「ルディオは僕の親友ですが、楽しく内緒話をされていると妬けますね」
「あはは、冗談が冴えてますね~」

 エリザは笑った。そばでルディオが、唇にきゅっと力を入れて黙り込んでいた。

 ジークハルトが「ふうん?」と首を傾げる。

「エリオは上機嫌ですね」
「実はですね、ジークハルト様の『呪い』の解除方法が見つかりました!」

 声を潜めつつ、手をバンザイして伝えたら、ジークハルトがエリザの笑顔につられたようににこっと笑った。

「さっき殿下から解除薬を用意すると、お話があったんです」
「フィーから?」

 エリザは、ジークハルトに呪解薬が近々手に入ることを伝える。

「いや、そもそも後ろから抱き締められたままなのをツッコミしろよ」

 刷り込みって怖い……とルディオが呟いた。訓練省から続々上がって来る騎士たちが、自分の小さな治療係に抱きついているぞと囁かれていた。

「とりあえず、呪解薬が届いたら飲んでもらいますからね。使用上の注意などがあれば、私がきちんと聞いておきますからご安心ください!」

 エリザは、元気いっぱいマントコートの上から胸を叩いた。

「そうでしたか。僕は魔法は専門外なのでよくは分かりませんが、その解除というものでエリオが納得するなら、望むままにしてください」

 ジークハルトが、やけにきらきらとした満面の笑みを浮かべた。

「とても楽しみです」

 そう言って彼がぎゅっと抱き締め、にーっこりと笑う。

 美しい笑顔なのだが、どこか胡散臭いように感じてしまうのは彼の顔立ちがあまりに整い過ぎているせいだろうか。

 本人の同意も得たので、後は解除薬を飲ませるだけだ。

 きっと彼が美人過ぎるせいだろうとエリジは納得することにした。

「そうですね、私も嬉しいです」

 エリザはにこっと笑い返した。隣にいたルディオが、嫌な予感を隠しきれないように表情筋を強張らせていた。

(それにしても私、本当に、女の魅力が微塵にも感じられていないくらい懐かれてるよなぁ)

 彼の腕の中に囲われたままであることについて、エリザはそんなことを思った。

 先日、ベッドで一緒に仮眠を取らされてしまった時に痛感した。この程度の密着ではまったくバレる気配さえない、と。

 呪いが強まったせいで、ジークハルトの精神年齢かエリザの前で急激にがくんと下がるせい。

 そう考えると、弟が兄にくっついている感じなんだろうなぁと微笑ましくなった。

「さっ、次はいったん執務室ですよね? 行きましょうか」

 エリザはくりんっと廊下の奥を向く。

「いや、その腕に突っ込まないんかい」

 同じく足を進め出したルディオが、指摘してきた。

 呪いが強まっているから仕方がないのだ。そう答えようとしたのだが、エリザは手を引かれ、肩を抱かれて流れるようにジーハルトに隣へと移動させられた。

(この姿勢は……エスコートでは?)

 彼女の頭に、疑問符がいっぱい浮かんだ。

「……あのー、ジークハルト様?」

 すぐ隣の、随分上にある彼の顔を見上げた。

「はい、なんですか?」
「こんなふうに手を取られなくても、私歩けますよ」
「こういう時は僕が案内しないと」
「道順知ってますけど?」

 エリザが答えるごとに、その隣でルディオが「回答にことごとくツッコミたくなるっ」と、何やら独り言をくぐもらせていた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。 そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。 そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。 「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」 そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。 かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが… ※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。 ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。 よろしくお願いしますm(__)m

全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のセーラは、1人崖から海を見つめていた。大好きだった父は、2ヶ月前に事故死。愛していた婚約者、ワイアームは、公爵令嬢のレイリスに夢中。 さらにレイリスに酷い事をしたという噂まで流されたセーラは、貴族世界で完全に孤立していた。独りぼっちになってしまった彼女は、絶望の中海を見つめる。 “私さえいなくなれば、皆幸せになれる” そう強く思ったセーラは、子供の頃から大好きだった歌を口ずさみながら、海に身を投げたのだった。 一方、婚約者でもあるワイアームもまた、一人孤独な戦いをしていた。それもこれも、愛するセーラを守るため。 そんなワイアームの気持ちなど全く知らないセーラは… 龍の血を受け継いだワイアームと、海神の娘の血を受け継いだセーラの恋の物語です。 ご都合主義全開、ファンタジー要素が強め?な作品です。 よろしくお願いいたします。 ※カクヨム、小説家になろうでも同時配信しています。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?

氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。 しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。 夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。 小説家なろうにも投稿中

お妃候補を辞退したら、初恋の相手に溺愛されました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のフランソアは、王太子殿下でもあるジェーンの為、お妃候補に名乗りを上げ、5年もの間、親元を離れ王宮で生活してきた。同じくお妃候補の令嬢からは嫌味を言われ、厳しい王妃教育にも耐えてきた。他のお妃候補と楽しく過ごすジェーンを見て、胸を痛める事も日常茶飯事だ。 それでもフランソアは “僕が愛しているのはフランソアただ1人だ。だからどうか今は耐えてくれ” というジェーンの言葉を糧に、必死に日々を過ごしていた。婚約者が正式に決まれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる!そう信じて。 そんな中、急遽一夫多妻制にするとの発表があったのだ。 聞けばジェーンの強い希望で実現されたらしい。自分だけを愛してくれていると信じていたフランソアは、その言葉に絶望し、お妃候補を辞退する事を決意。 父親に連れられ、5年ぶりに戻った懐かしい我が家。そこで待っていたのは、初恋の相手でもある侯爵令息のデイズだった。 聞けば1年ほど前に、フランソアの家の養子になったとの事。戸惑うフランソアに対し、デイズは…

最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~

猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。 現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。 現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、 嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、 足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。 愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。 できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、 ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。 この公爵の溺愛は止まりません。 最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

恐怖侯爵の後妻になったら、「君を愛することはない」と言われまして。

長岡更紗
恋愛
落ちぶれ子爵令嬢の私、レディアが後妻として嫁いだのは──まさかの恐怖侯爵様! しかも初夜にいきなり「君を愛することはない」なんて言われちゃいましたが? だけど、あれ? 娘のシャロットは、なんだかすごく懐いてくれるんですけど! 義理の娘と仲良くなった私、侯爵様のこともちょっと気になりはじめて…… もしかして、愛されるチャンスあるかも? なんて思ってたのに。 「前妻は雲隠れした」って噂と、「死んだのよ」って娘の言葉。 しかも使用人たちは全員、口をつぐんでばかり。 ねえ、どうして?  前妻さんに何があったの? そして、地下から聞こえてくる叫び声は、一体!? 恐怖侯爵の『本当の顔』を知った時。 私の心は、思ってもみなかった方向へ動き出す。 *他サイトにも公開しています

処理中です...