ヴァイオレットは幸せですか?

藤川みはな

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第二章

闇に染まった王子

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▶︎シモン◀︎

ヴァイオレットは教会へと送られ、
弟のカイルは監禁中。

順調に計画は進んでいるが
また邪魔が入るかもしれないな。

何か対策を立てなければ。

そう思案しつつ
廊下を歩いているとミレイユとすれ違った。

「あら、シモン」

ゆったりとした動作でこちらを振り向く。
私はすぐに笑顔を作った。

「母上、偶然ですね」

ミレイユはゆっくりとこちらに近づき
にっこりと微笑んだ。

笑みを返そうとした時鈍い衝撃が頰に走った。

彼女に、ぶたれたのだ。

「母上、一体何を……」

ミレイユは笑顔を称えたまま、
しかし冷たい色が宿った瞳で口を開いた。

「わたくしの息子を返しなさい」

おかしいな。
私の魔法で息子は1人しかいないと
洗脳していたはずなのに。

「はて、一体何のことでしょうか」

「とぼけても無駄ですよ、殿下」
ミレイユの背後から聞き覚えのある声がした。

そこには怒気を孕んだ瞳で
私を睨むアルフレッド公爵とイザベル夫人がいた。

ふふふ。
さすがはこの国の切れ者たちだ。
どうやら気付いたようだな。

やはり人間という生き物は面白い。
思い通りにいかないのなんて生まれて初めてだ。

「アゼリア公爵に、夫人も。
何やらお話があるようですね」

「とぼけないで……!!
私の娘に何をするつもりなの!!」

イザベルが私に掴みかかろうとするが
アルフレッドが右手で制した。

「落ち着け、イザベル。
君にまで危害が及ぶかもしれない」

「イザベルの怒りももっともよ。
わたくしの息子が、
まさかこんなことをするなんて……。

申し訳ないでは済まされないわ」

ミレイユが苦しそうに胸元を握りしめ
涙をポロポロと溢す。

「ミレイユ様……」

「ヴァイオレットとカイル殿下を解放しろ!
さもないとお前を殺す!」

ああ、面倒臭いな。

魔法を発動しようとするが、
何かに縛られているかのように魔力が放出されない。

そうか。

天井を見あげると幼女の姿の精霊が私を睨んでいる。

なるほど。
この精霊によって
守りの加護が授けられているからか。

守りの加護は魔法を防ぐ。
だから、ヴァイオレットには魔法を使わずに
魔力を凝縮した粉を飲ませたのだ。

しかし、厄介だな。
精霊は悠久の時を生きる不死身の存在。

たとえ神であっても殺すことはできない。
しかし、その法則を覆す方法がある。

初代王であるフォルトゥナは
精霊達を虐殺した。
その罪によって王家は
子孫代々穢れをその身に宿している。

穢れ、言い換えれば呪い。
呪いは普通操ることはできないが……

私ならばたやすい。

『精霊よ、眠りにつけ』

その途端、精霊は力が抜けたように床に横たわる。
その瞼は閉じられていた。

「シモンっ!!!」

五月蝿いな。

「母上、少し黙っていてください」

魔法で母上を眠らせる。

「きゃあっっ!!王妃様!!!」

床に倒れ込んだミレイユを見てイザベルが
騒ぎ立てる。

何ごとかと使用人たちが集まり始めた。
まずいな。

「皆、ここで見たことは忘れて」

呪文に似た言葉を投げかけると
使用人たちはぼんやりした表情で頷き
この場を後にした。

「あなた……
本当にシモン殿下ですか……?」

「ふふふ、やだなぁ。
何を言ってるんですか。
私は生まれた時からずっとですよ」

私は目の前にいる2人を葬るために
手を翳した。

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