ヴァイオレットは幸せですか?

藤川みはな

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雨宮梨花の人生 前編

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わたしはヴァイオレット・アゼリア。
由緒正しい公爵家の一人娘です。
わたしには前世の記憶があります。
日本人の高校生、雨宮梨花としての記憶が。

どんなふうに、わたしが死んで、ヴァイオレットに生まれ変わったのかをお話ししましょう。

         ◯◯◯

わたしは、目の前の光景に呆然としていた。

「嘘、でしょ……?」

わたしの家が燃えている。
これは、夢なのではないか、とさえ思った。

部活帰りにわたしの家の周りに集まる人々に、
何の騒ぎだろうと、不安を覚えながら
人ごみをかき分け、見上げると家を包む
橙色の炎が見えたのだ。
消防車と警察まで来ていた。

家族は、無事だろうか。
不安に胸が押しつぶされそうだ。
震える手で父に電話をかける。

……繋がらない。

「お父さん、お願いだから電話に出てよ!」

どうしたらいいの?

母と妹のすいにも電話をかけるが、
繋がらない。

「そんな……」

わたしは家の中に入ろうとした。
けれど、警察に止められてしまう。
「お嬢ちゃん、危ないよ!」
「離してください!家族が中に
いるかもしれないんです!」
「今、消火活動をしているから、待ちなさい、ね?
きっと無事だから。」
優しく声をかけてくれるけど、不安は募るばかり。

どうしよう。
最悪の光景が頭に浮かぶ。
大丈夫、きっと無事だよ。
わたしは自分に言い聞かせ、深呼吸した。

すると中から、小さな女の子が消防隊員に
抱きかかえられ出てきた。

「翠っ!」

わたしは妹にかけ寄る。
翠の顔は煤まみれだった。

「おねえちゃん……こわかったよぉ」

翠が顔を歪め涙を流す。
わたしはホッと安堵した。
翠が無事で良かった。
「もう、大丈夫だからね。怖かったね」
わたしは翠の頭を撫でた。
そして、消防隊員に視線を移した。
「あの、父と母は無事なのでしょうか。」
彼は口籠もり、視線を逸らす。
「ご両親は……」
嫌な予感が胸を騒がせる。
「きっと、無事ですよね?」
彼はわたしを安心させるように微笑んだ。
「あぁ……」

すぐそばを担架を担ぐ消防隊員が通った。
ブルーシートで隠されてはいるものの
隙間からチラリと手が見えた。
真っ黒に焦げた指に、指輪らしきものが見える。

まさか。

「おねえちゃん?どうしたの?」
抱きかかえている翠が心配そうにわたしを見つめる。
「だ、大丈夫よ」
どうしよう。
まさか、父と母は。
息が荒くなり、呼吸が苦しい。

「ちょっと、大丈夫?顔色悪いよ」

近所の人が声をかけてくれる。

限界だったのだろう。
そこで、わたしはプツンと意識を絶ったのだった。


目を覚ますと白い天井。
視線を横に向けると、翠が涙を目に溜めてわたしを見ていた。叔母は驚いたような顔をしている。
「お姉ちゃん!!」
「梨花!!」

「翠、それから叔母さんまで」

「目を覚まして良かったわ、あなた
丸一日寝ていたのよ」
叔母は瞳をうるうるさせていた。
「丸一日も…」
ふいにあの光景が蘇った。

「叔母さん!お父さんとお母さんは無事なの!?」

すると叔母は顔を歪めた。

え?

「おばさん、おとうさんとおかあさんはだいじょうぶなんでしょ?」

翠が言うけど、反応がない。
「叔母さん?」

最悪の事態が頭をかする。
「な、なんか言ってよ」

叔母さんはその場に崩れ落ちて嗚咽を漏らした。

叔母さんのその反応こそが答えだった。
父と母は亡くなったのだ。
「嘘でしょ……」
「おばさん、どうしたの?」
翠が心配そうにしている。
まだ幼い翠は何もわからない。
その方がいい。

「お父さんと、お母さんは、旅行に行ったのよ」

叔母さんが言う。
翠に配慮してのことだろう。
だけど、涙は抑えきれないようだ。

「そう」

わたしは必死に涙を堪えた。
2人も泣いていては翠が不思議がる。
詮索されないようにするにはこれしかない。

「おばさん、どうしてないてるの?」

翠が不思議そうに尋ねると叔母は
「二人が遠くに行って、ちょっと
悲しくなっちゃったの」と言った。
嘘だけど、その言葉は事実だった。







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