ヴァイオレットは幸せですか?

藤川みはな

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雨宮梨花の人生 後編

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わたしたち姉妹は叔母の家で暮らすことになった。
わたしたちの家は火事で全焼してしまったから。
思い出の品も全部燃えてしまった。
家族さえも。

だけど、後ろばかり向いてなんていられない。
前を向け、わたし!

翠だけは守らないと。
私のたった1人の家族なんだから。
私が強くないとあの子を守れない。

翠が小学2年生になったとき
「叔母さんとお姉ちゃんの嘘つき!!」
わたしたちにこう言い放った。
「どうしたの、翠」
叔母が優しく声を掛けるけど
翠は泣きながら言った。

「お父さんとお母さんは死んじゃったんでしょ?」

とうとう知られてしまった。
わたしは叔母と顔を見合わせる。

「叔母さんとお姉ちゃんが話してるの聞いたよ
わたしに、いつまで隠しておくかって」

翠がわたしを睨む。
確かに、その話は昨晩した。
てっきり、翠は寝ていると思っていたのに。

「お姉ちゃんも叔母さんも大嫌いっ!!」

そう言って家を飛び出す。
「待って、翠!!」
「待ちなさい!翠!」
叔母とわたしの声が響く。

わたしは翠を追いかけた。
後ろから叔母さんの呼びとめる声が聞こえるけど
わたしは足を止めなかった。

道路を飛び出す翠に迫る車。

もう何も失いたくない。

「翠っ!!」
わたしは大声を上げて翠を突き飛ばす。
その時、大きな衝撃がわたしを襲う。
わたしは宙を飛び、落下した。
身体中が痛い。
頭を地面にぶつけたのか赤い血溜まりが見えた。

「お姉ちゃんっ!」

涙目の翠が見える。

「ごめんね……翠。今……まで……隠してて。」
わたしが謝ると翠は頭を横に振った。
「もういいよ、お姉ちゃん。頭から血が出てるよ。ごめんなさい、翠のせいで、翠が飛び出したせいで。」
「翠……は、悪くない……よ」
あぁ、意識が朦朧としてきた。
そのとき、野次馬たちをかき分け、
息を切らした叔母が目に入る。
「梨花!!」
叔母は駆け寄り「大丈夫?!すぐに救急車を呼ぶからっ!!」とスマホを操作する。

「叔母さん……翠を……よろしく…… 
お願い……します」

わたしは力無く微笑む。
「そんな、死ぬみたいなこと言わないでよ!!」
叔母さんが泣きながら声を上げた。

叔母さん、ごめんなさい。
もうすぐ、わたしは死にます。
大切な姉夫婦を亡くし、さらに、
わたしまで死ぬのはとても辛いと思う。
だけど、わたしにはわかっている。
助かる術はないのだと。

死んだお父さんとお母さんもそんな気持ちに
なったのだろうか。

「翠、あなたは……悪くない……から、だから……自分を……責めない……でね」

微笑むと翠は涙を零した。
「お姉ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい。」

救急車のサイレンが遠くから聞こえる。
わたしは、翠の頬に手を伸ばし涙を拭った。

どうか、この子の人生が豊かなものと
なりますように。
決して、両親、わたしと同じ轍を踏むことなく
幸せに生活していきますように。
そう願った。

「任せなさい」

凛とした声が聞こえた気がした。

感覚がなくなっていき、意識が遠くなる。

そうして、雨宮梨花としての一生を終えた。




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