ヴァイオレットは幸せですか?

藤川みはな

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「我が娘の十三歳の誕生日パーティーに
ようこそおいでくださいました、
王妃様、カイル殿下、
それに公爵家のイザベル夫人、
ヴァイオレット嬢」

アリス様と同じ、灰色の瞳の四十代くらいの
男性と女性がわたしたちを出迎える。
男性はなかなかダンディだ。
栗色の髪をオールバックにしている。

女性の方は波打ったプラチナブロンド
の髪を腰まで伸ばし海のような吊り上がった
青い瞳を持っている。
桃色の豪華なドレスを見に纏い笑顔を絶やさない。
美人さんだ…。

最近、貴族年鑑をを見ているのでこの方達が
大公爵様と大公爵夫人だとわかる。

勉強しておいて良かった。

「本日は、お招きいただきありがとう。
パーシヴァル。アナスタシア。
アリスの誕生日おめでとう」

王妃様が柔らかく微笑んだ。
わたしとお母様は淑女の礼をする。
お父様はお仕事があるそうで後から来るらしい。

「「お招きいただきありがとうございます」」

「いえいえ、こちらこそアリスの
誕生日に来てくださってありがとうございます。
娘も喜びますわ」

笑みを浮かべる大公爵夫妻。
でも、なぜかその笑顔に違和感を覚えた。

「アリスはいないのですか?」
カイルが辺りを見回す。
「あぁ、アリスは…」

「お兄様、いい加減になさって!!」
どこからか声が聞こえてきた。

その声はアリス様の声に間違いない。

色とりどりのバラが咲き誇る中庭でアリス様と
背の高い男性の姿が見える。

「嫌だ! 誕生パーティーには男もいるんだろう!
もし、アリスを見初めて縁談を
申し込む男がいたらどうするんだ!
今からでもパーティーを中止にしろぉぉぉっ」

…なんだかウチのお父様のようですね…。

「どうやら、息子に引き止められていたようですな」
パーシヴァル様が苦笑いを浮かべた。

「申し訳ありません、お見苦しいところを」
アナスタシア様も困ったような顔をして
視線を中庭に向けた。

「いえいえ、お気になさらず。
兄妹で仲が良いのはいいことですわ」
お母様がニコニコする。

「アリス、アルヴァン! お客様の前だぞ!」
パーシヴァル様が声を上げるとアリス様とアルヴァンとよばれた男性はこっちに気付いたようだ。
すぐに駆け寄ってきた。

「申し訳ありません、兄がパーティーを中止にしろと騒いでしまって…お出迎えが遅くなりました。
本日は、わたくしの誕生パーティーにお越しいただきありがとうございます。」

淑女の礼をするアリス様の所作は洗練されていて
とても綺麗だった。

アリス様はプラチナブロンドの髪に
紫の薔薇を二輪挿し
同じ色のドレスを見に纏っている。
スカート部分にはパールが散りばめられていて
とても素敵。

「あっ!殿下! また来たのですか!
アリスは嫁にやりませんよ!!いってっ!!」

アルヴァン様の頭上にゲンコツが降る。
そりゃそうだよね。
王族に対して失礼だもの。
わたしもちょっと前まで
ゲンコツされる側でした……。

アルヴァン様は栗色の毛先がカールした髪と
海色の青い瞳をしていた。
顔立ちは少しだけアナスタシア様に似ている。
歳はアリス様の二つ上で十五歳らしい。

「本当は一番上の兄、
アルトもいたら良かったのですけれど
お兄様はセレスティア王国のアイリーン
王女に婿入りしてしまったのでなかなか難しくて…」

えぇっ!
アルト様、お姫様に婿入りしたの?!
すごい!

でも、アリス様は心なしか寂しそうな顔をしている。

「アリス様、お誕生日おめでとうございます!!
安心してください。
今日のパーティーは寂しさも忘れるくらい
アリス様を楽しませますから!」

そう笑ってみせるとアリス様はにっこり笑った。

「ありがとう、ヴァイオレット嬢」

だから、あんな事件が起きるなんて
思いもしなかった。
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