35 / 59
嘘に染まる
しおりを挟む▶︎カイル◀︎
侍従のシリウスから渡された書類に目を通すが
全然頭に入ってこない。
俺は頭を抱え、ため息をついた。
「カイル様、そんなにヴァイオレット嬢の
ことが心配なんですか~?」
シリウスがニヤニヤしているのが気に食わない。
「そんなんじゃねぇよっ」
ヴァイオレットがまさか闇の力を持つなんて。
判明したのはヴァイオレットが
魔力暴走を起こした日だ。
溢れ出る黒いモヤは闇の色。
闇の女神オプスキュリテを彷彿させる。
俺はヴァイオレットから溢れ出る力を
制御するため、イザベル夫人の封魔具を
ヴァイオレットに付けようとしたが
俺は闇の防壁に跳ね返され腕を
激しく打撲した。
自分の周りに強固な結界を張り巡らせ
闇が噴き出る源、ヴァイオレットのもとへ
向かった。
王族の魔法は決して破ることができない。
それほど高魔力を保持しているのだ。
しかし、強い闇の勢いに押されながらも
進んでいくと結界に亀裂が入っているのが見えた。
嘘だろ。王族の結界を破ることができるほど
強い魔力を持っているのか?
そう思うと同時に闇が強く噴き出して
俺は派手に転んでしまった。
これ以上は進めない。
そう判断した俺は浮遊の呪文を唱え
闇に包まれたヴァイオレットの首に
ペンダントを装着した。
すると、何とか闇は
ヴァイオレットの身体の中に
吸収され、魔力暴走を鎮めることができたのだった。
ヴァイオレットはなぜ魔力暴走を起こしたのか。
それだけが引っかかり、俺は公爵に
調査をすると申し出た。
ヴァイオレットが飲んでいた紅茶を調べてみて
驚いた。大公爵家の魔力の気配が微かに
残っていたからだ。
「まさか…」
俺はある人物を疑わずにはいられなかった。
白金ブロンドに灰色の瞳の令嬢。
俺の幼馴染のアリス・オリヴィアだ。
以前、彼女は俺が好きだと胸の内を明かしてくれたが
俺はヴァイオレットが好きなことに
気づき振ってしまった。
あのときは本当に胸が痛んだ。
そのことでヴァイオレットを恨んでも
不思議ではない。
誕生日パーティーのときも
ヴァイオレットと俺の近くに来たのだって
もしかしたら…
いや、考えるのはよそう。
今日、ヴァイオレット達は大公爵家に
事情を聞きに行くそうだ。
アリスの友として彼女が無実であることを
願わずにはいられない。
そうでなければ、いけないんだ。
俺はギュッと唇を噛み締めた。
「カイル殿下…」
シリウスが心配そうな声で呟く。
「どうしたんだい、カイル」
顔を上げると扉の前に、兄上が立っていた。
シリウスが後ろに下がり、頭を下げる。
「兄上…」
兄上のことだ。
また何か目論んでいるのだろう。
「ここに何の用だ」
「冷たいなぁ。僕はただ弟を心配して来ただけだよ」
兄上がソファーに座ったので仕方なく俺も
兄上の前に座る。
俺と兄上に紅茶が淹れられ、
兄上はシリウス以外の使用人を
部屋の外へと下がらせる。
それを見届けると兄上は俺に向かって微笑んだ。
「どうやら、アリス嬢の誕生日パーティーで
事件が起きたらしいね」
「それが兄上に何の関係がある」
「実は、気になって僕も調べていたんだけど
今朝、連絡が来てね、アリス嬢が倒れたって」
その言葉の意味が一瞬理解できなかった。
アリスが、倒れた?
「どうやら誕生日パーティーでアリス嬢以外
の何者かが魔法で毒を混入させたらしいね」
「は!? 毒?! でも銀のスプーンを
入れても毒の反応はなかったんだぞ!!」
思わず立ち上がる。
「そうみたいだね。
でも銀に反応しない毒もあるんだよ。」
銀に反応しない毒なんてあるのか?
違和感を覚えるが今はそんなことを
考えている場合じゃない!
「……アリスはどんな状態なんだ?」
「さぁ……。そんなに気になるんなら
様子を見て来たら?寝室で寝かされていると思うよ」
緊急事態だってのに、なんでそんな
呑気なんだよっ!
「馬車を出せ、大公爵家へと向かう」
俺は部屋を飛び出し赤いカーペットがどこまでも続く長い廊下を駆け抜けた。
アリス、どうか無事でいてくれ!
4
あなたにおすすめの小説
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
神様 なかなか転生が成功しないのですが大丈夫ですか
佐藤醤油
ファンタジー
主人公を神様が転生させたが上手くいかない。
最初は生まれる前に死亡。次は生まれた直後に親に捨てられ死亡。ネズミにかじられ死亡。毒キノコを食べて死亡。何度も何度も転生を繰り返すのだが成功しない。
「神様、もう少し暮らしぶりの良いところに転生できないのですか」
そうして転生を続け、ようやく王家に生まれる事ができた。
さあ、この転生は成功するのか?
注:ギャグ小説ではありません。
最後まで投稿して公開設定もしたので、完結にしたら公開前に完結になった。
なんで?
坊、投稿サイトは公開まで完結にならないのに。
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
没落貴族は最果ての港で夢を見る〜政敵の公爵令嬢と手を組み、忘れられた航路を拓いて帝国の海を制覇する〜
namisan
ファンタジー
日本の海運会社に勤めていた男は、事故死し、異世界の没落貴族の三男ミナト・アークライトとして転生した。
かつては王国の海運業を牛耳ったアークライト家も、今や政争に敗れた見る影もない存在。ミナト自身も、厄介払い同然に、寂れた港町「アルトマール」へ名ばかりの代官として追いやられていた。
無気力な日々を過ごしていたある日、前世の海運知識と経験が完全に覚醒する。ミナトは気づいた。魔物が蔓延り、誰もが見捨てたこの港こそ、アークライト家再興の礎となる「宝の山」であると。
前世の知識と、この世界で得た風を読む魔法「風詠み」を武器に、家の再興を決意したミナト。しかし、その矢先、彼の前に最大の障害が現れる。
アークライト家を没落させた政敵、ルクスブルク公爵家の令嬢セラフィーナ。彼女は王命を受け、価値の失われた港を閉鎖するため、監察官としてアルトマールに乗り込んできたのだ。
「このような非効率な施設は、速やかに閉鎖すべきですわ」
家の再興を賭けて港を再生させたい没落貴族と、王国の未来のために港を閉鎖したいエリート令嬢。
立場も思想も水と油の二人が、互いの野望のために手を組むとき、帝国の経済、そして世界の物流は、歴史的な転換点を迎えることになる。
これは、一人の男が知識と魔法で巨大な船団を組織し、帝国の海を制覇するまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる