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アリスとヴァイオレット
しおりを挟むそれから、大公爵夫妻に謝罪され、
アリス様はわたしに対する毒殺未遂で
本来なら牢獄に捕えられるけど、
未成年だということとわたしの口添えにより
自宅での三ヶ月の謹慎という処罰を与えられた。
アリス様は自分の罪に責任を感じて
自室に閉じこもっているらしい。
だから、わたし達は彼女を元気づけるため
今日はアリス様の邸宅に遊びに来ている。
相変わらず大きいなー!と見上げていると
「なんで!??」
フロルちゃんがギャンっと吠えた。
「え?なんでって、友達の家に遊びに行くの
普通じゃない」
「いやいやいや!
相手はレティちゃんを殺そうとした人だよ?!
そんな人のところに遊びに行く?普通!!
しかもアリス様謹慎中だよ!!
帰ろうよ、レティちゃん!」
フロルちゃんがグイグイとわたしの手を引っ張る。
「フロルちゃんも話してみたらわかるよ。
アリス様はそんなに悪い人じゃないって」
「いや、殺そうとした時点で悪者じゃないっ!」
そんなフロルちゃんを無視して、執事さんに
案内をお願いする。
そんなわたしを見たフロルちゃんは
軽くため息をついた。
「レティちゃんって優しすぎるのが玉に瑕だ」
アリス様の部屋に案内されると
そこには簡素な水色ワンピースに身を包み
本を読んでいるアリス様と目が合った。
「ヴァイオレット嬢!??」
アリス様は紺色のソファーから立ち上がる。
「遊びに来ちゃいました!」
「遊びに来たって……わたくしは
あなたを害そうとした悪女ですよ!!」
「アリス様は悪女なんかじゃありませんよ」
ふわりと笑うとアリス様は毒気を抜かれたような
表情になった。
そしてため息をついてわたし達に
ソファーに腰掛けるように促した。
「ヴァイオレット嬢、先日は
本当にごめんなさい。わたくし、
あなたに酷いことを」
涙ながらに頭を下げるアリス様。
「ほんとそうよ!!」
フロルちゃんが怒りに任せて立ち上がった。
「わたしの親友を殺そうとするなんて
許せない!! いくら自分の好きな人が
レティちゃんを好きだからって!!」
「え? カイルは
わたしのこと好きじゃないよ?」
わたしの言葉に二人は固まる。
「ヴァ、ヴァイオレット嬢……?
あのとき、話を聞いていましたでしょう?」
「はい。聞いてましたよ。
だから、誤解されてるな~って
思いながら聞いてました」
それを聞くや否やアリス様は床に崩れ落ちた。
「反応があっさりしている
とは思っていましたが……」
フロルちゃんは遠い目をして
「先が思いやられる」と呟いた。
なんのこと?
「とにかく、アリス様。
アリス様は充分反省なさったのでしょう?
なら、もう謝罪はいりません。
アリス様は本来、優しい方だと
わたしはわかっています。
だから、もう一度、わたしと
友達になってくれませんか?」
フロルちゃんが「えっ!」と
声を上げるけど気にせずアリス様に
向かって手を差し出すと
アリス様は灰色の瞳を潤ませた。
「……もう一度、信じてくださるのね。あなたは。
わたくしは許されないことをしたというのに。
……でも、わたくしにはあなたの友達になる資格が」
「わたしが許した、
というだけではいけませんか?
わたし結構アリス様が好きなんですよ」
にっこり笑うとアリス様は「でも」と俯く。
「いいんですよ、過去のことは。
わたしが許すって言っているんです!
それともわたしと友達になるのは嫌ですか?」
「嫌だなんて!!」
「ならお友達になってくれますよね?」
アリス様は戸惑った表情を浮かべていたけど
口を真一文字に結んだ。
「ごめんなさい。わたくしは
あなたの思いには応えられない。」
「アリス様……分かりました。
じゃあ、明日また来ます」
「え? 明日も行くの??」
フロルちゃんは眉を八の字にしている。
「ヴァイオレット嬢、
もうここに来てはいけません。
あなたを害そうとした者と一緒にいては
お父様とお母様も心配します」
「いいえ!わたしは明日も来ます。
アリス様が自分を許せるようになるまで。
わたしはアリス様の心の拠り所と
なりたいんです。
今まで辛かったのでしょう?
だからあんなことをしてしまった。
それは罪でもあるけど
わたしはアリス様を許したいんです。
アリス様の優しさを嘘だとは思えません」
ふわりと笑うと、アリス様は俯いた。
「……カイル殿下が
好きになったのも納得ですわ。
わたくしはあなたに対して
許されないことをしてしまった。
だけど、許されるのなら」
そこでアリス様は顔を上げた。
泣きそうに顔を歪めてアリス様は唇を開いた。
「あなたとお友達になりたい」
わたしはアリス様を優しく抱きしめる。
「ありがとうございます、アリス様。
わたし、とっても嬉しいです。
過去のことはもう水に流しましょう。
これから一から友達になりましょう」
それからアリス様は子供のように泣き続けていた。
それは多分、アリス様が初めて見せた
年相応の少女の姿だった。
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