チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗

文字の大きさ
59 / 101

第59話 アイテムボックス拡張、習得完了

しおりを挟む
 魔王の秘書が俺のパーティに入りたい?
 なんの冗談じょうだんだ。


「今直ぐにとは言いません。三日後にまた来ますので、それまでに考えておいて下さると助かります」


 秘書……カルニフェクスはきびすを返す。

 本当に戦いに来たわけではなさそうだ。


「……っ」


 突然の出来事に、俺は混乱していた。
 軽い立ちくらみを覚え、頭を押さえているとルニフェクスは「では」と丁寧ていねいに頭を下げて……去った。どこへ行く気だ? 追い駆けるべきか。いや……けど、あそこまで堂々とされると、なんだか倒し辛いっていうか、倒す気にもなれなかった。


 というか、あれは魔族ではなさそうだぞ。

 どちらかといえば『人間』のような。


「……まさか。魔族とのハーフか」


 そうであるならば納得がいく。ルニフェクスには人間らしい感情があった。あの柔らかな笑みとか、色っぽい仕草とか……そうとしか思いようがない。


 今まで出会ってきた魔王軍のモンスターとか大幹部は、冷酷なヤツ等ばかりだった。感情だって、あそこまで発露はない。あるのは邪悪だけだ。


 ぼうっと考えていると――


「おはようございます、アウルムさん」


 背後から挨拶あいさつされ、俺はビクッとなる。


「お、おはよぉ!?」

「……? どうしたんです? 声が上擦うわずってヘンですよ~」

「いや、なんでもないんだよ。それより早いね、フルク」


 なんとか誤魔化すと、彼女は楽しそうに美しい銀髪を揺らしながら俺の前へ。……アクアマリンの瞳が俺の姿を鮮明に映し出す。


「わたしはいつもこの時間帯です。朝食を作ったりとか、屋敷のお掃除したり色々大変ですよ~、マルガさんと交代制ですけど」


 そういえば、そうだったな――なんて思っていると、フルクは俺の目の前で祈るポーズを。


「俺に祈られても、なにも出ないぞ」
「毎日祈っていますから。今日はアウルムさんがいるので、神様の代りです」

「勇者だけどな」

「尚更良いですね。うんうん、今日は素晴らしい一日となりましょう。わたしが保証してあげます」


 花のような笑顔を貰って、俺はつい赤面する。……それはズルイって。


「そ、そか。聖女様からのお墨付きなら……きっと良い事がありそうだな。よし、マルガが起きたら、EXダンジョンだ。【アイテムボックス拡張】も習得して貰おうと思うんだ……フルクはどう思う?」

「いいと思いますよ。わたしは支援で手がいっぱいですし、元からそれほど多くのアイテムを持てるわけではありませんから」


「分かった。じゃあ、決まりだな」


 そうとなれば、マルガが起きるまでマッタリだ。


 ◆


 ――三時間後――


 ようやく全員集合だ。


「大変申し訳ございません。わたくしとした事が……寝坊を」


 まだポケポケした表情でマルガは謝る。
 なかなか起きて来ないと思えば、昨日の疲労が溜まっていたらしい。あんな激しい戦いがあったのだ、仕方ないと言えば仕方ない。


「いや、構わないよ。けど、マルガ……」
「はい……」

「その自慢のクリーム色の髪、ちょっとボサボサっとしてるな。そんな慌てていたのか」
「……はぅ」


 指摘するとマルガは顔を赤くして恥じらった。


「……急いでいたもので。そ、それより……EXダンジョンへ参られるのですよね!?」

「そうだな。さっそく出発するけど――その前に、マルガにこれを託す」


 俺は【アイテムボックス拡張】の宝石を手渡した。なんだかマルガの顔から湯気が出ているような気がするけど……。


「ちょ、大丈夫か? 顔、赤いぞ」

「……だ、だいじょうぶ……でしゅ」


 目をクルクルさせ、マルガは後ろへ倒れかけた。咄嗟とっさの判断で俺は彼女の体を支えた――というか、お姫様抱っこする形になってしまった。


「大丈夫か?」

「あ、主様。こここここ、これは……」
「倒れかけていたから支えたんだが」


「……主様……、わたくし……幸せ過ぎて死んじゃいそうです♡ で、でも……ありがとうございます。立てますから」


 そうだな、さっきからフルクの何とも言えない視線が……。とにかく、宝石を使用して貰おう。


「じゃあ、スキルの習得を頼む」
「了解です」


 てのひらには、宝石。
 それがパリンと砕け散ると、マルガは【アイテムボックス拡張】を習得した。これで、彼女はかなりアイテムを持てるようになった。


「よし、アイテムの運搬も楽になったな」

「ありがとうございます、主様。これで少しでも貢献こうけんできるのでしたら、嬉しい限りです。フルク様もほら、参りましょう」


 マルガはフルクの背中を押し、俺の方へ。


「行こう、フルク」
「はいっ……! 今日こそ第二エリアを突破しましょう。EXダンジョンはまだまだ奥が深いですから、もっと凄いアイテムだってあると思います」


「そのレアアイテムを入手して大金持ちになるぞ」


 俺達は、久しぶりにEXダンジョンの『第二エリア』へ向かった――。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...