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第59話 アイテムボックス拡張、習得完了
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魔王の秘書が俺のパーティに入りたい?
なんの冗談だ。
「今直ぐにとは言いません。三日後にまた来ますので、それまでに考えておいて下さると助かります」
秘書……カルニフェクスは踵を返す。
本当に戦いに来たわけではなさそうだ。
「……っ」
突然の出来事に、俺は混乱していた。
軽い立ち眩みを覚え、頭を押さえているとルニフェクスは「では」と丁寧に頭を下げて……去った。どこへ行く気だ? 追い駆けるべきか。いや……けど、あそこまで堂々とされると、なんだか倒し辛いっていうか、倒す気にもなれなかった。
というか、あれは魔族ではなさそうだぞ。
どちらかといえば『人間』のような。
「……まさか。魔族とのハーフか」
そうであるならば納得がいく。ルニフェクスには人間らしい感情があった。あの柔らかな笑みとか、色っぽい仕草とか……そうとしか思いようがない。
今まで出会ってきた魔王軍のモンスターとか大幹部は、冷酷なヤツ等ばかりだった。感情だって、あそこまで発露はない。あるのは邪悪だけだ。
ぼうっと考えていると――
「おはようございます、アウルムさん」
背後から挨拶され、俺はビクッとなる。
「お、おはよぉ!?」
「……? どうしたんです? 声が上擦ってヘンですよ~」
「いや、なんでもないんだよ。それより早いね、フルク」
なんとか誤魔化すと、彼女は楽しそうに美しい銀髪を揺らしながら俺の前へ。……アクアマリンの瞳が俺の姿を鮮明に映し出す。
「わたしはいつもこの時間帯です。朝食を作ったりとか、屋敷のお掃除したり色々大変ですよ~、マルガさんと交代制ですけど」
そういえば、そうだったな――なんて思っていると、フルクは俺の目の前で祈るポーズを。
「俺に祈られても、なにも出ないぞ」
「毎日祈っていますから。今日はアウルムさんがいるので、神様の代りです」
「勇者だけどな」
「尚更良いですね。うんうん、今日は素晴らしい一日となりましょう。わたしが保証してあげます」
花のような笑顔を貰って、俺はつい赤面する。……それはズルイって。
「そ、そか。聖女様からのお墨付きなら……きっと良い事がありそうだな。よし、マルガが起きたら、EXダンジョンだ。【アイテムボックス拡張】も習得して貰おうと思うんだ……フルクはどう思う?」
「いいと思いますよ。わたしは支援で手がいっぱいですし、元からそれほど多くのアイテムを持てるわけではありませんから」
「分かった。じゃあ、決まりだな」
そうとなれば、マルガが起きるまでマッタリだ。
◆
――三時間後――
ようやく全員集合だ。
「大変申し訳ございません。わたくしとした事が……寝坊を」
まだポケポケした表情でマルガは謝る。
なかなか起きて来ないと思えば、昨日の疲労が溜まっていたらしい。あんな激しい戦いがあったのだ、仕方ないと言えば仕方ない。
「いや、構わないよ。けど、マルガ……」
「はい……」
「その自慢のクリーム色の髪、ちょっとボサボサっとしてるな。そんな慌てていたのか」
「……はぅ」
指摘するとマルガは顔を赤くして恥じらった。
「……急いでいたもので。そ、それより……EXダンジョンへ参られるのですよね!?」
「そうだな。さっそく出発するけど――その前に、マルガにこれを託す」
俺は【アイテムボックス拡張】の宝石を手渡した。なんだかマルガの顔から湯気が出ているような気がするけど……。
「ちょ、大丈夫か? 顔、赤いぞ」
「……だ、だいじょうぶ……でしゅ」
目をクルクルさせ、マルガは後ろへ倒れかけた。咄嗟の判断で俺は彼女の体を支えた――というか、お姫様抱っこする形になってしまった。
「大丈夫か?」
「あ、主様。こここここ、これは……」
「倒れかけていたから支えたんだが」
「……主様……、わたくし……幸せ過ぎて死んじゃいそうです♡ で、でも……ありがとうございます。立てますから」
そうだな、さっきからフルクの何とも言えない視線が……。とにかく、宝石を使用して貰おう。
「じゃあ、スキルの習得を頼む」
「了解です」
掌には、宝石。
それがパリンと砕け散ると、マルガは【アイテムボックス拡張】を習得した。これで、彼女はかなりアイテムを持てるようになった。
「よし、アイテムの運搬も楽になったな」
「ありがとうございます、主様。これで少しでも貢献できるのでしたら、嬉しい限りです。フルク様もほら、参りましょう」
マルガはフルクの背中を押し、俺の方へ。
「行こう、フルク」
「はいっ……! 今日こそ第二エリアを突破しましょう。EXダンジョンはまだまだ奥が深いですから、もっと凄いアイテムだってあると思います」
「そのレアアイテムを入手して大金持ちになるぞ」
俺達は、久しぶりにEXダンジョンの『第二エリア』へ向かった――。
なんの冗談だ。
「今直ぐにとは言いません。三日後にまた来ますので、それまでに考えておいて下さると助かります」
秘書……カルニフェクスは踵を返す。
本当に戦いに来たわけではなさそうだ。
「……っ」
突然の出来事に、俺は混乱していた。
軽い立ち眩みを覚え、頭を押さえているとルニフェクスは「では」と丁寧に頭を下げて……去った。どこへ行く気だ? 追い駆けるべきか。いや……けど、あそこまで堂々とされると、なんだか倒し辛いっていうか、倒す気にもなれなかった。
というか、あれは魔族ではなさそうだぞ。
どちらかといえば『人間』のような。
「……まさか。魔族とのハーフか」
そうであるならば納得がいく。ルニフェクスには人間らしい感情があった。あの柔らかな笑みとか、色っぽい仕草とか……そうとしか思いようがない。
今まで出会ってきた魔王軍のモンスターとか大幹部は、冷酷なヤツ等ばかりだった。感情だって、あそこまで発露はない。あるのは邪悪だけだ。
ぼうっと考えていると――
「おはようございます、アウルムさん」
背後から挨拶され、俺はビクッとなる。
「お、おはよぉ!?」
「……? どうしたんです? 声が上擦ってヘンですよ~」
「いや、なんでもないんだよ。それより早いね、フルク」
なんとか誤魔化すと、彼女は楽しそうに美しい銀髪を揺らしながら俺の前へ。……アクアマリンの瞳が俺の姿を鮮明に映し出す。
「わたしはいつもこの時間帯です。朝食を作ったりとか、屋敷のお掃除したり色々大変ですよ~、マルガさんと交代制ですけど」
そういえば、そうだったな――なんて思っていると、フルクは俺の目の前で祈るポーズを。
「俺に祈られても、なにも出ないぞ」
「毎日祈っていますから。今日はアウルムさんがいるので、神様の代りです」
「勇者だけどな」
「尚更良いですね。うんうん、今日は素晴らしい一日となりましょう。わたしが保証してあげます」
花のような笑顔を貰って、俺はつい赤面する。……それはズルイって。
「そ、そか。聖女様からのお墨付きなら……きっと良い事がありそうだな。よし、マルガが起きたら、EXダンジョンだ。【アイテムボックス拡張】も習得して貰おうと思うんだ……フルクはどう思う?」
「いいと思いますよ。わたしは支援で手がいっぱいですし、元からそれほど多くのアイテムを持てるわけではありませんから」
「分かった。じゃあ、決まりだな」
そうとなれば、マルガが起きるまでマッタリだ。
◆
――三時間後――
ようやく全員集合だ。
「大変申し訳ございません。わたくしとした事が……寝坊を」
まだポケポケした表情でマルガは謝る。
なかなか起きて来ないと思えば、昨日の疲労が溜まっていたらしい。あんな激しい戦いがあったのだ、仕方ないと言えば仕方ない。
「いや、構わないよ。けど、マルガ……」
「はい……」
「その自慢のクリーム色の髪、ちょっとボサボサっとしてるな。そんな慌てていたのか」
「……はぅ」
指摘するとマルガは顔を赤くして恥じらった。
「……急いでいたもので。そ、それより……EXダンジョンへ参られるのですよね!?」
「そうだな。さっそく出発するけど――その前に、マルガにこれを託す」
俺は【アイテムボックス拡張】の宝石を手渡した。なんだかマルガの顔から湯気が出ているような気がするけど……。
「ちょ、大丈夫か? 顔、赤いぞ」
「……だ、だいじょうぶ……でしゅ」
目をクルクルさせ、マルガは後ろへ倒れかけた。咄嗟の判断で俺は彼女の体を支えた――というか、お姫様抱っこする形になってしまった。
「大丈夫か?」
「あ、主様。こここここ、これは……」
「倒れかけていたから支えたんだが」
「……主様……、わたくし……幸せ過ぎて死んじゃいそうです♡ で、でも……ありがとうございます。立てますから」
そうだな、さっきからフルクの何とも言えない視線が……。とにかく、宝石を使用して貰おう。
「じゃあ、スキルの習得を頼む」
「了解です」
掌には、宝石。
それがパリンと砕け散ると、マルガは【アイテムボックス拡張】を習得した。これで、彼女はかなりアイテムを持てるようになった。
「よし、アイテムの運搬も楽になったな」
「ありがとうございます、主様。これで少しでも貢献できるのでしたら、嬉しい限りです。フルク様もほら、参りましょう」
マルガはフルクの背中を押し、俺の方へ。
「行こう、フルク」
「はいっ……! 今日こそ第二エリアを突破しましょう。EXダンジョンはまだまだ奥が深いですから、もっと凄いアイテムだってあると思います」
「そのレアアイテムを入手して大金持ちになるぞ」
俺達は、久しぶりにEXダンジョンの『第二エリア』へ向かった――。
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