金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗

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金貨投げの恐るべきダメージ

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 血の付着した斧が嵐のように迫ってくる。
 やば……僕にこんな攻撃を避ける能力なんて……おぉ?

 急に目の前に“見えない壁”が現れ、斧攻撃を防御してくれた。この不思議な力はなんだ?


「シャインブレイズ!!」


 この声はヨークだ。
 そうか、彼女の魔法スキルといったところか。そうか、すっかり忘れていたけどヨークは“聖女”だったな。
 シャインブレイズは、どうやら物理攻撃を防御するものらしく、敵のブラッドアックスを完全に防いでいた。

 この隙に乗じて僕は、金貨を投げた。


「くらえ! 金貨投げ!!」


 大量の金貨を投げて遠距離物理攻撃。硬貨コインは、見事に女の鳩尾みぞおちへ命中した。


「がはッ!!」


 恐ろしい程の高速回転で壁に激突。
 メリ込んでさえしまった。
 修理代は後で支払おう!

 それより、金貨を大量に消費すると、ここまでの威力となるとはな。そう、ちなみに『金貨投げ』は金貨を消費していた。

 1枚につき固定ダメージで『1000』の威力があるようだ。つまり、100枚使えば『100000』のダメージを。1000枚使えば『1000000』のダメージを与えられるわけだ。

 しかも固定ダメージだから、相手の防御力は無視される。どんなレア防具をしていようが関係ない。

 更に更に、僕は『金貨増殖バグ』持ち。金が減る事は一切ない。無限の金貨・・・・・で攻撃をし続けられるのだ。


 僕は、倒れている女の前に立つ。
 どうやら辛うじて意識はあるようだ。


「なぜ僕を狙った」
「……くっ、ころせっ!!」

「そういうのいいから! 理由を教えてくれ。チップは弾むよ」


 てのひらに50枚の金貨を出して誘惑してみた。これで受けるもよし、拒否すれば衛兵に引き渡すだけだ。


「わ、私はガヘリスに雇われたんだ。お前を殺せば金貨10枚をくれると約束してくれたんだ」


 またガヘリスか……あの野郎。僕を殺す気でいたのか……つまり、この女は暗殺者アサシン。追放だけで飽き足らず……ついに殺しまで。

 そんなに僕を追い詰めて楽しいのか、ガヘリス!


「じゃあ、そのガヘリスを殺してくれ。金貨100枚を払う」
「……わ、分かった。依頼の失敗は今日が初めてだった……いつもなら、完遂なのだがな。ちょっと悔しいよ。でも、依頼はきちんとこなす」


 よし、落ちたな。
 金の力は偉大だね。

 とにかく、向こうが暗殺を依頼したのなら、僕にもその権利があるはず。殺意を向けてきた以上、こちらも容赦はしない。

「じゃあ、頼んだよ。前払いで10枚払っておくから」
「あ、ありがとう……あなたのような依頼人は初めてだっ!」

「ああ、頼んだよ。暗殺者アサシンさん」
「必ずガヘリスの首を持って帰ろう」

 丁寧に出入り口から帰っていくアサシン。ブラッドアックスこそ超レア装備だけど、大丈夫かなあ。


 * * *


 宿屋を出ると、ヨークが頭を下げていた。

「どうした、急に」
「とても快適な宿屋に泊まらせてもらったので、感謝を示しているんです」
「感謝なんて必要ない。この力はヨークのおかげなんだから」

 そうだ、ヨークの力がなければ僕にこんな薔薇色の人生は巡ってこなかった。ガヘリスに暗殺されていたかもしれないんだ。
 僕の方こそ、ヨークに感謝だ。

「いえ、そんな……わたしなんて」
「気にするな。僕とヨークは仲間だろ?」
「は、はいっ、嬉しいです! わたし、ずっとぼっちだったので本当に嬉しい」

 そうか、ヨークは家族を失ったと。なら、僕と一緒だ。僕にも家族はいなかった。唯一、妹はいたけど生き別れ。今はどこに居るか分からない。

 だから、ギルド職員をやって必死に生活を送っていた。でも、ガヘリスは僕を散々馬鹿にして……居場所をさえ奪った。

 全部失ったかと思ったけど、ヨークが助けてくれた。やっぱり、僕の方こそ感謝しないと罰が当たるな。


「なら、ネヴィルのところへ向かおう。新しい家を買うんだ」
「おぉ、家をですか!」
「昨日の家は吹き飛んでしまったからな。建て直すにも時間が掛かるだろうし、なら、他の屋敷を買うしかないだろう」


 そんなわけで、ネヴィルの居る『ラドロー城』へ向かった。そういえば、あれって屋敷ではなく、城だったんだな。

 道中、ヨークが僕に訊ねてきた。


「あの、ヘンリーさん」
「なんだ?」
「ヘンリーさんは、なぜギルド職員をやられていたんですか?」
「僕はもともと『ぷちテイマー』でね。『ぷちドラゴン』使いだったんだ。今もその能力は失われていないけどさ」

「へえ、テイマーさんだったんですね!」

「ああ、だから……ドラゴンの事を詳しく知りたかったというか。でも、必死に働いていたらそんな暇もなかった。毎日生活するだけで必死だった。気づけばギルド職員の日々だった」

 伝説のテイマーになろうと思っていたんだけど、その才能は僕にはなかった。だから、ぷちテイマーのまま。半端者だった。

 けど、金のある今なら……なんでも出来る気がしていた。

 ふと、ペットショップが目に入ったのだが、どうしようかな。
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