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少女たちのサバイバルアイテム
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彼女の名は『北上 絆』というらしい。
同じクラスの女子で、ギャルっぽい見た目に反して礼儀正しかった。ナイフは向けられたけど。
「えっと……北上さんだっけ。人間に会えて良かったよ」
「救援に来て下さったのですよね? こちらも一人だったので助かりました」
「……いや、残念だけど、こっちも遭難状態だ」
「え……そんな」
相変わらず俺に跨ったままの北上は、肩を落とした。
この状態、いつまで続くんだ。
そんなに重くもないけど――天音が膨れた感じで俺を見ているんだよな。
「とりあえず、仲良くやろう。人手が多い方が生存率も高まる」
俺がそう提案すると北上はナイフをおさめた。
ようやく立ち上がってくれて――その瞬間、桃色が見えた。
……ほうほうと納得していると、天音に顔面を踏まれそうになったので回避。また見えてるし。
「チッ、外したか」
「なにをする天音。ぷくっと膨れてさ」
「う、うるさい。早坂くんってギャルが好きなの?」
「嫌いではないよ」
「そうなんだ……髪、染めようかな」
「天音、ぶつぶつとどうした」
「な……なんでもないッ」
頬を紅潮させ、ぷいっと顔を背ける。
どうしたんだ……?
俺、なにか言ったっけな。
「ところで北上さん、なんでナイフなんか持ってるの?」
「良い質問ですね、早坂くん。わたし、趣味がサバゲーなんですよ」
「へえ、エアガンを持ってるんだ」
「はい、それでナイフも持ってるんです」
これは意外な趣味だな。
この金髪ギャル風の北上がねえ。
なんかカッコイイな。
「この程度の折り畳みナイフなら常備していても先生にバレないので」
確かに、北上の持つナイフは結構小柄だ。いわゆるサバイバルナイフではないな。
アウトドアとかで使うペンチ、ドライバー、ノコギリ、ヤスリなどがセットになったマルチツール。
レザーマン製か。
よく分かってる。
「ナイフは万能だからな。北上さん、良かったら調理とか頼みたい」
「良いですけど、虫は勘弁してくださいね」
虫も貴重なタンパク源なのだがな。
とはいえ、俺もゲテモノ食いは好まない。いざとなれば仕方ないけど。
「分かったよ。なるべく避ける。ところで、この洞窟……」
「ここは安全っぽいです。あと火があれば、より安全になるんですけどね」
俺はスッとファイアースターターを出した。
すると北上は驚いた。
「えっ、ファイアースターター! 早坂くん、良いモノ持っていますね」
「俺と北上が協力すれば万能だな」
サバイバルには、ナイフとファイアースターターがあれば大抵なんとかなる。それは有名な冒険家が証明しているからな。
ベア・グリルスとかエド・スタッフォードとか。
これで少しは希望が見えてきた――そう思った時だった。天音が声を張り上げた。
「ちょっと待ってよ!」
「ど、どうした天音」
「二人だけでズルいって。わたしだってアイテムくらい持ってるよ」
「そういえば、天音は手ぶらかと思ったが……何かあるのか? 携帯と財布以外で」
「あ、あるもん! ほら、アルミシート!」
「「おぉ!!」」
俺も北上も思わず声を上げた。
ポケットティッシュサイズのアルミシートか。広げれば毛布ほどのサイズとなり、結構暖かいんだよな。断熱の効果もあるし、かなり使える。
なんだ、そんな良いアイテムを持っていたんだ。
「天音、それ……」
「えっへん。船が沈没する前に、先生から万が一に備えてって渡されたの」
「そうだったのか。俺は甲板にいたからなあ。気づいたら流されていたし」
先生や他の生徒は、今頃どうしているだろうな。今の所この無人島らしき島に俺、天音、北上はいるわけだが……無事だといいな。
アイテムの確認は終わり、洞窟内を改めて確認。
どうやら、結構奥まで続いているらしく深いことが判明。あんまり奥へ進むと危険なので、出入口から五メートルあたりを『拠点』とした。
薄暗いし、視界もそんなに悪くない。
「ところで、これからどうします?」
北上から瞳を向けられ、俺はちょっと戸惑った。天音と話すのすら緊張するのに、今度は北上か。……慣れるしかないか。
「喉からカラカラで水を飲みたいんだけど、北上さん。なにかアテってある?」
「水ですか……。あたしも随分と水分を摂取していません。早坂くん、なんとかなりませんか」
う~ん、そう言われてもな。
異世界に転生したチート野郎じゃないんだぞ、俺は。魔法なんて使えないし、だからこそサバイバル知識だ。
こんな時は――。
「……っ!」
ふと、天音が顔を拭っていた。
「天音、目が痛いのか?」
「違うの。天井から水滴が……」
「それだ!! 天音、お前のおかげで水問題はクリアできそうだぞ!!」
「え? なにが?」
気づいていないのかよ!!
俺は皆にこう説明した。
「水滴を飲むんだ。洞窟内のなら、ある程度は清潔だし、多少は喉を潤せるよ」
「おお、そういうことか! 早坂くん、やっぱり天才じゃん」
「それは気づきませんでした……。あたし、半日ほど洞窟にいたのに」
さっそく水滴に向けて口を開けた。
ポタポタと落ちてくる雫をゆっくり味わう。
……うめぇ。
涙ほどの水量だけど、こんなにも水が美味しく思えるとはな。できれば、もっとガブガブ飲みたいけど、今はこれが精一杯だ。
天音も北上も同じように水滴を味わっていた。
「……ふぅ、生き返った」
満足感はないものの、なかなか回復した。今はこれで十分だ。
「良かったぁ、水が飲めて。早坂くんのおかげだよ」
「いや、天音の顔に水滴がついてくれたおかげさ。これで水は微々たるものだけど確保できた。入れ物とかあれば寝ている間に溜めることもできるかも」
こういう時は浜へ行くべきだ。
本州や海外から流れて来るゴミにペットボトルが必ずといっていいほどあるからな。それに、使える容器もたくさんある。
近年、プラスチック問題が度々指摘されているが、こんな遭難した時は神器に等しいアイテムと化す。
「二人とも容器と食糧を探しに……あれ」
なんか二人とも見つめ合って、というか、いがみ合っていた。いつの間にそんな火花バチバチ状態になっていたんだ?
「北上さん、わたしは早坂くんと出掛けます」
「ナイフを持っている、あたしの方が使えます。ね、そうでしょ。早坂くん」
ほんの一瞬で何があった!?
「まてまて、落ち着け二人とも。仲良く一緒に行動すればいいじゃん」
だが、二人とも睨み合う。
いかんな、ここでケンカしても意味はない。無駄に力を浪費するだけ。
ここは俺が宥めるしかないのか。
「仲良くやるんだ、天音」
「で、でも……」
「生き延びたいのなら、協力すべきだ。醜い争いは死を招く」
「むぅ……」
天音は少し不服そうに長い髪を弄る。
でも、ちょっと可愛い……俺はそう思った。
「北上も天音と仲良くやるんだ」
揉めたっていいことなんてない。
破滅しかないんだ。
過去の俺がそうだったように。
だが、北上は天音にナイフを向けた。
……ウソ、だろ。
「……天音さん、そこを動かないでください」
「ちょ……北上さん……なんで」
ギラリと怪しく光る銀の刃。
ま、まさか……北上のヤツ、本気なのか!
同じクラスの女子で、ギャルっぽい見た目に反して礼儀正しかった。ナイフは向けられたけど。
「えっと……北上さんだっけ。人間に会えて良かったよ」
「救援に来て下さったのですよね? こちらも一人だったので助かりました」
「……いや、残念だけど、こっちも遭難状態だ」
「え……そんな」
相変わらず俺に跨ったままの北上は、肩を落とした。
この状態、いつまで続くんだ。
そんなに重くもないけど――天音が膨れた感じで俺を見ているんだよな。
「とりあえず、仲良くやろう。人手が多い方が生存率も高まる」
俺がそう提案すると北上はナイフをおさめた。
ようやく立ち上がってくれて――その瞬間、桃色が見えた。
……ほうほうと納得していると、天音に顔面を踏まれそうになったので回避。また見えてるし。
「チッ、外したか」
「なにをする天音。ぷくっと膨れてさ」
「う、うるさい。早坂くんってギャルが好きなの?」
「嫌いではないよ」
「そうなんだ……髪、染めようかな」
「天音、ぶつぶつとどうした」
「な……なんでもないッ」
頬を紅潮させ、ぷいっと顔を背ける。
どうしたんだ……?
俺、なにか言ったっけな。
「ところで北上さん、なんでナイフなんか持ってるの?」
「良い質問ですね、早坂くん。わたし、趣味がサバゲーなんですよ」
「へえ、エアガンを持ってるんだ」
「はい、それでナイフも持ってるんです」
これは意外な趣味だな。
この金髪ギャル風の北上がねえ。
なんかカッコイイな。
「この程度の折り畳みナイフなら常備していても先生にバレないので」
確かに、北上の持つナイフは結構小柄だ。いわゆるサバイバルナイフではないな。
アウトドアとかで使うペンチ、ドライバー、ノコギリ、ヤスリなどがセットになったマルチツール。
レザーマン製か。
よく分かってる。
「ナイフは万能だからな。北上さん、良かったら調理とか頼みたい」
「良いですけど、虫は勘弁してくださいね」
虫も貴重なタンパク源なのだがな。
とはいえ、俺もゲテモノ食いは好まない。いざとなれば仕方ないけど。
「分かったよ。なるべく避ける。ところで、この洞窟……」
「ここは安全っぽいです。あと火があれば、より安全になるんですけどね」
俺はスッとファイアースターターを出した。
すると北上は驚いた。
「えっ、ファイアースターター! 早坂くん、良いモノ持っていますね」
「俺と北上が協力すれば万能だな」
サバイバルには、ナイフとファイアースターターがあれば大抵なんとかなる。それは有名な冒険家が証明しているからな。
ベア・グリルスとかエド・スタッフォードとか。
これで少しは希望が見えてきた――そう思った時だった。天音が声を張り上げた。
「ちょっと待ってよ!」
「ど、どうした天音」
「二人だけでズルいって。わたしだってアイテムくらい持ってるよ」
「そういえば、天音は手ぶらかと思ったが……何かあるのか? 携帯と財布以外で」
「あ、あるもん! ほら、アルミシート!」
「「おぉ!!」」
俺も北上も思わず声を上げた。
ポケットティッシュサイズのアルミシートか。広げれば毛布ほどのサイズとなり、結構暖かいんだよな。断熱の効果もあるし、かなり使える。
なんだ、そんな良いアイテムを持っていたんだ。
「天音、それ……」
「えっへん。船が沈没する前に、先生から万が一に備えてって渡されたの」
「そうだったのか。俺は甲板にいたからなあ。気づいたら流されていたし」
先生や他の生徒は、今頃どうしているだろうな。今の所この無人島らしき島に俺、天音、北上はいるわけだが……無事だといいな。
アイテムの確認は終わり、洞窟内を改めて確認。
どうやら、結構奥まで続いているらしく深いことが判明。あんまり奥へ進むと危険なので、出入口から五メートルあたりを『拠点』とした。
薄暗いし、視界もそんなに悪くない。
「ところで、これからどうします?」
北上から瞳を向けられ、俺はちょっと戸惑った。天音と話すのすら緊張するのに、今度は北上か。……慣れるしかないか。
「喉からカラカラで水を飲みたいんだけど、北上さん。なにかアテってある?」
「水ですか……。あたしも随分と水分を摂取していません。早坂くん、なんとかなりませんか」
う~ん、そう言われてもな。
異世界に転生したチート野郎じゃないんだぞ、俺は。魔法なんて使えないし、だからこそサバイバル知識だ。
こんな時は――。
「……っ!」
ふと、天音が顔を拭っていた。
「天音、目が痛いのか?」
「違うの。天井から水滴が……」
「それだ!! 天音、お前のおかげで水問題はクリアできそうだぞ!!」
「え? なにが?」
気づいていないのかよ!!
俺は皆にこう説明した。
「水滴を飲むんだ。洞窟内のなら、ある程度は清潔だし、多少は喉を潤せるよ」
「おお、そういうことか! 早坂くん、やっぱり天才じゃん」
「それは気づきませんでした……。あたし、半日ほど洞窟にいたのに」
さっそく水滴に向けて口を開けた。
ポタポタと落ちてくる雫をゆっくり味わう。
……うめぇ。
涙ほどの水量だけど、こんなにも水が美味しく思えるとはな。できれば、もっとガブガブ飲みたいけど、今はこれが精一杯だ。
天音も北上も同じように水滴を味わっていた。
「……ふぅ、生き返った」
満足感はないものの、なかなか回復した。今はこれで十分だ。
「良かったぁ、水が飲めて。早坂くんのおかげだよ」
「いや、天音の顔に水滴がついてくれたおかげさ。これで水は微々たるものだけど確保できた。入れ物とかあれば寝ている間に溜めることもできるかも」
こういう時は浜へ行くべきだ。
本州や海外から流れて来るゴミにペットボトルが必ずといっていいほどあるからな。それに、使える容器もたくさんある。
近年、プラスチック問題が度々指摘されているが、こんな遭難した時は神器に等しいアイテムと化す。
「二人とも容器と食糧を探しに……あれ」
なんか二人とも見つめ合って、というか、いがみ合っていた。いつの間にそんな火花バチバチ状態になっていたんだ?
「北上さん、わたしは早坂くんと出掛けます」
「ナイフを持っている、あたしの方が使えます。ね、そうでしょ。早坂くん」
ほんの一瞬で何があった!?
「まてまて、落ち着け二人とも。仲良く一緒に行動すればいいじゃん」
だが、二人とも睨み合う。
いかんな、ここでケンカしても意味はない。無駄に力を浪費するだけ。
ここは俺が宥めるしかないのか。
「仲良くやるんだ、天音」
「で、でも……」
「生き延びたいのなら、協力すべきだ。醜い争いは死を招く」
「むぅ……」
天音は少し不服そうに長い髪を弄る。
でも、ちょっと可愛い……俺はそう思った。
「北上も天音と仲良くやるんだ」
揉めたっていいことなんてない。
破滅しかないんだ。
過去の俺がそうだったように。
だが、北上は天音にナイフを向けた。
……ウソ、だろ。
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