クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

文字の大きさ
15 / 287

好き、好き、好き、好き、好き、好き

しおりを挟む
 今日も俺は、焚火に薪をくべていく。

 不眠不休で洞窟前の門番を続けていたのだ。

 けれど、今日は重圧的な疲労感もあって眠気が直ぐに襲ってきた。

「……っ」

 眠い。
 酷く眠い。
 気怠ささえあった。

 重すぎるまぶたを無理矢理こじ開けていく。
 けど、あっと言う間に限界が見えてきた。


 ――あぁ、もうダメだ。おしまいだぁ。


 気絶するかのように俺は闇へ誘われた。


「――――」


 誰か、俺を、見ている――ような。

 透き通るようなエメラルドグリーンの瞳。

 あれは……。
 あれは……北上?


 * * *


「やっべ……寝ちまった」


 目を覚ますと周囲は薄暗かった。
 夜明け前なのか。

 ――って、いかん。

 天音たちに危険が及んでいないといいけど……。


「おはようございます、早坂くん」
「あぁ、おはよう、北上さん…………ん!?」


 なぜか隣に北上がいた。
 焚火も消えていないし、まさか、ずっと俺の隣で火を絶やさずにいてくれたのか。

「眠ってしまったようだったので、あたしが代わりに見張りをしていたんです」
「悪い……俺が不甲斐ふがいないばかりに」

「いえいえ。人間は睡眠を取る生き物ですから、寝なければ死んでしまいますよ。
 ただ、無防備なことには間違いないので、身を守れるようにしなければなりませんね」

 それもそうだ。
 だから、人間ひとは家を作ったし、セキュリティも万全にするようになった。

 今こそ家のありがたみを感じる。

 電気やガス、水道が当たり前に使える幸せ。

 こんな島では、そんな便利なものなんてないからな。


「じゃあ、家でも作るか」
「そうですね。いつ、助けが来るか分かりませんし、それまでは暇を持て余すでしょう。生きる目的として家の建設も視野に入れて良いかと」

「北上さんって、ポジティブだね」
「いや~、照れますねぇ」

「本当に照れてるし。
 ちなみに、一応意見を聞きたいんだけどイカダを作る気はある?」

「無理ですね」

 やっぱり即答か。
 俺はなんとなく察しがついていた。

「無謀かな」
「はい、無謀すぎます。この島がどこにあるか分かりませんし、流されて気づいたら太平洋なんてことになったら、一巻の終わりでしょう。サメに食べられてしまいます」

「サメ以外にもスコールとか嵐で流されておしまいだな」

 そう、海は危険でいっぱいだ。
 イカダで脱出しようなんて甘い考えは捨てた方がいいな。

 下手に動くより、今は救助を待つ方がいいだろう。

「なので家を作る方がいいと思いますよ」
「そうするよ。それと、島の全体も把握しないとな。他にも遭難者がいるかもしれないし」

「ええ、他の生徒が気掛かりです。学年で百二十人はいるはずですから」
「あの貸し切りフェリーは、最大搭乗旅客数が四百名クラスの船だからな。A~D組がいたんだ。百人近くが行方不明……よくよく考えなくとも、とんでもない事件だよな」

「なのでテレビやネットは大騒ぎのはず。なのにヘリコプターや船ひとつ通らない……これは、ちょっと異常事態ですよ」

 言われてみれば飛行機すら見ていない。
 たまたまかもしれないけど。

 今の時代なら、ドローンくらい飛んでいそうなものだけど。

 この島がよほど見つかりにくい場所にあるってことかな。

「今は無難に生活していくしかないわけか」
「そうですね、この島で楽しいことを見つけていきましょう」

「楽しいことかあ。まあ、でも女の子が多くて俺は得してるけど」

「あたしも初めて男の子の友達が出来ました」
「そうなのか。でもサバゲーオタクなんだろ? 男とやるものだろ」
「いえ、女友達とです。女子のサバゲー愛好会があるんですよ」

 そんなものがあったとは……俺の知らない世界だ。
 でも、ちょっと面白そうだなとも思った。

「前々から聞いてみたかったけど、本当にサバゲーだけ? 北上さんって、なにか特殊な訓練とか受けてない? あのイノシシの戦闘といい、只者じゃないよね」

 そう、あの動きは人類を超えていた。

「実は、イギリスの特殊空挺部隊SASに……」
「やっぱりそうなんだ!」

 俺は事実を聞かされて興奮した。
 北上さんは、女子高生に扮した特別な女の子なんだ。
 そんな人に出会えるなんて――。


「そんなわけないでしょう。冗談です」


 冗談かよッ!
 一瞬信じたぞ、俺。


「なんだ、スーパー女子高生を期待していたのに」
「否定も肯定もしませんけどね」

 うわ、なにその曖昧な返答。
 なんか気になるじゃん。
 やっぱり、なにか裏があったり……いや、邪推かな。

「そっか。その時がきたら、いつか真実を教えてくれ」
「分かりました。その時は覚悟してくださいね」

 北上は、意地悪そうに微笑む。
 どっちなんだかなあ。

「さて、俺は水を確保できるようにしようと思う」
「どうやってやるんです?」

「昨日の雨で思いついたんだけど、貯水池を作るのさ。生活用水と風呂用もね。あとトイレか」

「洞窟の周辺は森で囲まれていますが、柔らかい土なので掘るのは簡単でしょう。いっそ、井戸でも作れればいいのですが」

「井戸を掘るのは大変すぎるよ。道具もないしね。だから、貯水池を作るよ」
「了解しました。手伝えることがあれば、なんでもおっしゃってください」

「助かるよ」


 立ち上がって天音たちの様子を見に行こうとした――のだが。
 北上が止めてきた。


「早坂くん、みんなは寝ています」
「そうか……」

「天音さんが気になりますか」

「……ま、まあ」
「あたしでは……ダメですか」

 俺の目の前で制服を脱ぎだす北上。
 大胆に肩を出して際どい格好になっていた。

 ……こ、こんなところで。

 下着とか谷間が見えてるし……もう直視できない。でも、気持ちは凄く嬉しかった。


「北上さんは魅力的だよ」
「それなら、いいではないですか」


 俺の手を握り、そのまま胸へ――うわッッ!


「ど、ど、ど、どうしたのさ……!」
「……早坂くんが好きになってしまったのです……」


 予想外すぎる告白に俺は、頭が真っ白になった。

 うそ……うそぉ!?

 北上が俺を好き?


「なんで……?」

「だって一番頼りになりますから。沢山の知識を持ち、生存の確率も高い。強い男を求めるのは、女子として自然ですからね。
 そもそも、男子は早坂くんだけ……もうすでに取り合いは始まっているんですよ。……フフフ。
 ……あぁ、早坂くん……好き、好き、好き、好き、好き、好き」


 なぜかナイフを向けられた。

 うわッ!
 うわ、うあああああああああ!!
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...