クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

文字の大きさ
49 / 287

みんな幸せにしたいんだ

しおりを挟む
 チョコレートを食べて体力を回復したところで、外の様子を伺った。

「……こりゃ出れないな」

 横殴りの雨が強くて覗き穴から浸水してきている。ブルーシートで覆っておくか。
 俺は穴を埋めて雨水が入らないように施した。

「ありがとう、早坂くん」
「いいってことさ、琴吹」

 さて、あとは明かりだけど『懐中電灯』はあんまり使いたくないな。電池がもったいないし。

「さぶ……。ねえ、焚火にしない?」
「だめだ、天音」
「えっ……?」
「建物内での焚火は危険だし、下手すりゃ一酸化炭素中毒で死ぬぞ」
「え、ええッ!?」

「ほら、よくニュースになってるだろ。テント内とか山小屋で死亡する事故。あれって、焚火とかガスを使ったせいで中毒で死んでしまうんだよ」

 トーチカは密室ではないけど、危ないものは危ないのだ。用心するに越したことはない。

「とはいえ、雨を浴びすぎて……ちょっと冷えてきたな」


 俺も天音も北上もビショ濡れだ。
 このままだと風邪を引いてしまう。
 服を乾かせないので着替えるしかない。


「では、ジャージに着替えましょう」
「それを言おうと思ってたよ、北上さん」


 北上のスクールバッグの中に人数分のジャージを入れてあった。受け取って、着替えようとするが……俺も天音も手が止まる。


「……み、見ないでよ、早坂くん。あっち向いてて」
「お、おう」


 俺は背を向けた。
 天音の生着替えを見るわけにはいかないよな。

 背後では慌しく着替える音が聞こえる。

「良かった、下着は無事だった。今着替えちゃうからね」
「早くしてくれ、俺も寒いんだ」

「――うん、もういいよ」


 どうやら、着替え終わったらしい。俺は振り向いた。


 すると。


「あたしはまだですけど」


 下着姿の北上がいたあああああ……!


「ちょ、ちょ、ちょ!! 北上さん……!」
「啓くん、そんなにあたしの下着を見たかったのですか」
「違う違う、見せつけてきてるのは北上さん!」


 隣で呆然となる天音は、ハッと気づいて叫んだ。


「ちょぉぉ!! 北上さん、なんで下着のままなのー!! 早坂くんが見てるでしょ。早く着替えて。ていうか、早坂くんもジロジロ見ないの!!」

「は、はい……」


 怒られたので俺は再び背を向けた。……北上のせいなんだけどなぁ。
 おかげさまで良いモノが見れた。


 * * *


 ようやくジャージに着替え終えた。
 しかし、ここで問題がまた発生した。

「どうしました、啓くん。あたしの顔をジロジロ見て」
「あのな、北上さん。なんで下着を干しているんだよォ!」
「残念ながら、あたしの下着は濡れてしまっていたので」

 だからって、俺の視界に入るところに干すかぁ!? しかも、今はノーブラ・ノーパンってことだよな。なんてことだ。

 スカートじゃなくて良かったけど。

「……あぁ、もう。それにしても外は大荒れだな」
「ええ。八重樫さんたちの無事が気になります」
「そうだな……今頃どうしているのかな」

 天音と琴吹も心配そうな表情を浮かべていた。
 俺たちに出来ることはない。
 ただこうしてトーチカ内で嵐が過ぎるのを待つだけ。

 きっと明日には天気は回復する。

 そしたら、周辺を探索してみよう。
 もしかしたら、八重樫たちが読んでくれた救助が来て帰れるかも。そうだ、良い方向に考えよう。

 気づけば、琴吹が眠っていた。

「眠っちゃったね、琴吹さん」

 天音が琴吹の顔を覗く。
 お腹いっぱいになって眠気に襲われたんだろうなあ。


「俺たちも眠ろう。明日から行動開始だ」
「そうだね。でも……」


 天音が俺の横に来た。
 北上も対抗するように俺の隣に。


 ……挟まれた。


「……二人とも」

「早坂くん、わたしとお話しよ」
「いえ、あたしとです。天音さんは眠っていていいですよ」
「な、なによ、北上さん。ちょっと前から早坂くんにベタベタと!」

「天音さんこそ離れてください。彼は、あたしのものです」
「も、ものぉ!? ちょっと、どういうことなの早坂くん!」

 ジロッと睨まれ、俺は頭が爆発しそうになった。まてまてまて! 北上さんの言い方には語弊があるぞ。
 いや、嬉しいけどこれでは、ますます二人の仲が最悪に!

 仕方ない、ここは取り持つか。


「天音、北上さん……前から言いたかったけど、二人とも仲良く!」


 俺は二人の手を取り、強制握手させた。

 すると天音は、かなり渋々ながらも握手を。北上もぎこちないながらも握手に応じた。

「つまり、早坂くんはひとりを選びたくないの……?」
「そ、その、俺は恋愛経験が壊滅状態だからな。どうすればいいのか、まったく分からん。だから、俺なりに考えた結果……みんな幸せにしたいんだ」


 気持ちをありのままに吐露すると、二人とも顔を合わせて――噴き出した。


「「ぷ……ぷはははは……」」


「ひでぇ、そんな笑うことないのに~」


 二人ともお腹を抱えて笑ってるし。どんだけツボったんだよぉ。


「ごめんごめん。そっかぁ、まあ恋愛経験ないのは、わたしもだけどね」
「そう言っていたよな、天音も」

 こんなガチの現役アイドルがね。ちょっと信じられないけど、本人がそう言うのだから、そうなのだろう。俺は天音の言葉を信じたい。

「あたしもですよ、啓くん」
「北上さんもか。サバゲーオタクならモテそうな気がするけど」
「いえいえ、それがそうでもないんです。それに、あたしは啓くんみたいな強い人がタイプなんです」

 天音も北上も落ち着いた表情で、俺の肩に頭を預けてきた。

 ……そ、そんな風にしてくれるなんて思わなかった。

 二人とも俺をそこまで信じてくれていたんだ。

 知らなかったな。

 あぁ、しかも幸せ……すっごく幸せだ。


 天音と北上の体温が、ぬくもりが温かくて俺は眠気に襲われた。


 俺も二人に身を預けよう。


 * * *


 ――翌朝。

 重いまぶたを開け、周囲を見渡す。
 コンクリートの壁だけがあって――俺は、トーチカの中にいることを思い出した。

 あれだけ轟音だった嵐の音も、今はない。


「……っ」


 太陽の陽射しがまぶしい。
 外は朝なのか。
 起き上がろうとすると、天音と北上に挟まれていたことに気づく。二人ともまだ眠っていた。

 ……天音と北上の寝顔……可愛すぎだろ。


 しばらく観察していると、天音の方が何か言っていた。耳を傾けると、こう言っていた。


「早坂くん……好き」
「…………!?!?!?」


 ドキッとして、俺は頭が真っ白になった。ま、まさか今のって天音の気持ち? でも、寝言だから分からないや。

 焦っていると北上がパチリと視線を向けていてた。

「おはようございます、啓くん」
「い、いつの間に!」

「では、おはようのキスを」
「い、いきなり!」


 俺が動けない事をいいことに、北上は顔を近づけてきた。しかし、琴吹が目を覚ましたので、事態は回避された。


「おはよ~。って、早坂くんが天音さんと絆にサンドイッチにされてるー!? な、なにこれー!?」

 俺の方を見て大慌ての琴吹。普通、そう思うよね。

「ちなみに、あたしの発音はサンドウイッチ派です。芸人にもいますし」
「それはどうでもいいよ、北上さん……。それより、離れてくれ。外の様子が見たい」
「仕方ないですね」


 北上は離れてくれた。あとは天音を起こすだけなのだが……俺は重要なことに気づいてしまった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...