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ホワイトウォーターとストラトフォー side:倉島
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倉島 布達は、同級生の早坂 啓によって殺された。俺はその事実を知り、衝撃が走った。
悲しみというよりは怒りが勝った。
橘川め……約束が違う。
弟には、あの『宝島』を与え、女奴隷を与えるという約束だった。だが、ヤツは我々組織の資金を湯水の如く使い、財宝の捜索の為に費やし、とうとう金が尽きた。
そのタイミングでの訃報は、ただ呆れるしかなかった。
だが、それよりも大切な弟を殺されたことに、俺は腹を立てている。
倉島家は、世間で言う反社会勢力だ。
武器の売買、重要指名手配犯の海外逃亡の手伝いなど……様々な取引や仕事を請け負っている。
弟の布達には、普通の高校生活を送って欲しかった。だが、それは叶わぬ願いだった。弟は俺に似てしまった。それで、あんなバカげた計画を実行したんだ。
そこは俺とは違うが。
俺は倉島家を出ようとした。
黒服の男達が心配そうに俺を見つめた。
「若頭、どこへ」
「決まっている。弟の仇である早坂を殺す」
「……しかし、宝島はアメリカの民間軍事会社・ホワイトウォーターの介入が」
「知っている。あの橘川の計画うちさ。ニュースになって島は立ち入り禁止になったが、アメリカは黙っちゃいない。あのストラトフォーすら動いているのだからな」
そう、全ては橘川の計画だ。
奴は死んでも尚、面倒を残した。
ジョン・スミスというパイプを使い、アメリカの裏組織を動かしていたのだ。
こうして俺は『宝島』を目指した。
数人の部下を引き連れて……。
その中で同じ恨みを持つ『田中』と『アキラ』も同行させた。どうしてもと、しつこかったからだ。
まあ、弟の連れだったようだし……それに、人数は多いに越したことはない。
「あ、あの……大智さん。船を出していただき、感謝します」
ヤンキーにしか見えない田中が、そう丁寧に礼を言った。
「構わんさ。お前たちは布達の数少ない友達だった。それに、早坂をぶっ殺してぇんだろ?」
「そうです! あの野郎、女共を引き連れて……やりたい放題! 倉島を……布達さんを撃ち殺したんですぜ! 俺たちの目の前で!!」
今度はアキラが興奮した様子で語った。
目の前かどうかは眉唾だが、少なくとも銃で撃たれたことは本当だ。それは帰ってきた死体が物語っていたからだ。
「そうか。島に着いたのち、貴様たちは自由に行動しろ。俺はクソ軍人共と交渉する」
「ぐ、軍人!? どういうことです?」
「お宝を狙う連中は、俺たちだけではないってことさ。世間は今、宝島の話題で持ち切り……だが、島へ入るには海上保安庁の目を掻い潜らなければならない」
「そ、そんなの無理じゃないっすか!?」
「そうでもないさ。ストラトフォーの力を使って海上は攪乱済み。今頃は中国船が妨害しまくっていることさ」
中国船が日本海域に入るだけで世間はまた別の意味で混乱する。社会とは実に複雑で面白い。政治やら何やら絡むと途端に不安定になるのだから。
「つまりアレですか。よくニュースとかで話題になる……領海侵入」
「そうさ。ストラトフォーがわざわざ根回ししてくれたのさ。これで俺たちはやりやすくなった」
今のネットのトレンドは、中国船の大量の領海侵入。その数……千隻に及ぶ。これほどの規模は嘗てないだろう。
宝島の話題はもう隅っこ。
これでいい、これで復讐が叶う。
手に入れた高速クルーザーで宝島を目指す。
* * *
一時間もすれば到着した。
ここが宝島か……なかなか広いが、本当に無人島らしいな。
「よし、田中とアキラ……武器はあるのか?」
「ありやすぜ。この島を出る前に埋めて隠してあったんです」
「そうか、必要なら言ってくれ」
「ありがとうございます、倉島の兄貴さん」
田中とアキラはヘコヘコしながらも、無人島の奥へ消えっていった。奴らは好き勝手に動けばいい。そして、俺に早坂の居場所を教えろ。
その時、ヤツが生きていようが、くたばっていようがどっちでもいい。
一度でも顔を拝んで……それから、ギタギタのズタズタに引き裂いてやる。
女共は俺が遊んでやろう。
何度も何度も蹂躙し、いらなくなったらボロ雑巾のように捨ててやるぜ。
数十分後、軍人と正体不明の敵との戦いが起きた。
俺は事前にホワイトウォーターのリーダーである『ジェイク』と交渉していた。筋肉ムキムキの黒人とは思わなかった。幸い、英語は得意だったので話は簡単だった。
「タチカワや君の弟の事は聞いている」
「俺は早坂に復讐したい」
「分かった。君たち組織と我々は共闘関係だ。こちらとしても、ガキ共を始末してしまいたいからね。狙うは財宝だけだ。三百億以上ともなれば我が社が潤うだけではない、国益にもなるのだ」
「よろしく頼む」
「ああ。海上にいるといい。地上エリアでは“人間狩り”をしているからね、君たちを巻き込む恐れがあるから」
どうやら、俺たち以外にも人間がいるらしい。それもそうか、ニュースになった直後に宝島へ上陸した者も数多いと聞く。大半が諦めて帰ったらしいが、それでも財宝を諦められなくて滞在している者が少数いるのだとか。
コイツ等、軍人はそんな馬鹿共を掃除している最中なのだろうな。
……血なまぐさいことは軍人共に任せ、俺はその時を待つことにした。
悲しみというよりは怒りが勝った。
橘川め……約束が違う。
弟には、あの『宝島』を与え、女奴隷を与えるという約束だった。だが、ヤツは我々組織の資金を湯水の如く使い、財宝の捜索の為に費やし、とうとう金が尽きた。
そのタイミングでの訃報は、ただ呆れるしかなかった。
だが、それよりも大切な弟を殺されたことに、俺は腹を立てている。
倉島家は、世間で言う反社会勢力だ。
武器の売買、重要指名手配犯の海外逃亡の手伝いなど……様々な取引や仕事を請け負っている。
弟の布達には、普通の高校生活を送って欲しかった。だが、それは叶わぬ願いだった。弟は俺に似てしまった。それで、あんなバカげた計画を実行したんだ。
そこは俺とは違うが。
俺は倉島家を出ようとした。
黒服の男達が心配そうに俺を見つめた。
「若頭、どこへ」
「決まっている。弟の仇である早坂を殺す」
「……しかし、宝島はアメリカの民間軍事会社・ホワイトウォーターの介入が」
「知っている。あの橘川の計画うちさ。ニュースになって島は立ち入り禁止になったが、アメリカは黙っちゃいない。あのストラトフォーすら動いているのだからな」
そう、全ては橘川の計画だ。
奴は死んでも尚、面倒を残した。
ジョン・スミスというパイプを使い、アメリカの裏組織を動かしていたのだ。
こうして俺は『宝島』を目指した。
数人の部下を引き連れて……。
その中で同じ恨みを持つ『田中』と『アキラ』も同行させた。どうしてもと、しつこかったからだ。
まあ、弟の連れだったようだし……それに、人数は多いに越したことはない。
「あ、あの……大智さん。船を出していただき、感謝します」
ヤンキーにしか見えない田中が、そう丁寧に礼を言った。
「構わんさ。お前たちは布達の数少ない友達だった。それに、早坂をぶっ殺してぇんだろ?」
「そうです! あの野郎、女共を引き連れて……やりたい放題! 倉島を……布達さんを撃ち殺したんですぜ! 俺たちの目の前で!!」
今度はアキラが興奮した様子で語った。
目の前かどうかは眉唾だが、少なくとも銃で撃たれたことは本当だ。それは帰ってきた死体が物語っていたからだ。
「そうか。島に着いたのち、貴様たちは自由に行動しろ。俺はクソ軍人共と交渉する」
「ぐ、軍人!? どういうことです?」
「お宝を狙う連中は、俺たちだけではないってことさ。世間は今、宝島の話題で持ち切り……だが、島へ入るには海上保安庁の目を掻い潜らなければならない」
「そ、そんなの無理じゃないっすか!?」
「そうでもないさ。ストラトフォーの力を使って海上は攪乱済み。今頃は中国船が妨害しまくっていることさ」
中国船が日本海域に入るだけで世間はまた別の意味で混乱する。社会とは実に複雑で面白い。政治やら何やら絡むと途端に不安定になるのだから。
「つまりアレですか。よくニュースとかで話題になる……領海侵入」
「そうさ。ストラトフォーがわざわざ根回ししてくれたのさ。これで俺たちはやりやすくなった」
今のネットのトレンドは、中国船の大量の領海侵入。その数……千隻に及ぶ。これほどの規模は嘗てないだろう。
宝島の話題はもう隅っこ。
これでいい、これで復讐が叶う。
手に入れた高速クルーザーで宝島を目指す。
* * *
一時間もすれば到着した。
ここが宝島か……なかなか広いが、本当に無人島らしいな。
「よし、田中とアキラ……武器はあるのか?」
「ありやすぜ。この島を出る前に埋めて隠してあったんです」
「そうか、必要なら言ってくれ」
「ありがとうございます、倉島の兄貴さん」
田中とアキラはヘコヘコしながらも、無人島の奥へ消えっていった。奴らは好き勝手に動けばいい。そして、俺に早坂の居場所を教えろ。
その時、ヤツが生きていようが、くたばっていようがどっちでもいい。
一度でも顔を拝んで……それから、ギタギタのズタズタに引き裂いてやる。
女共は俺が遊んでやろう。
何度も何度も蹂躙し、いらなくなったらボロ雑巾のように捨ててやるぜ。
数十分後、軍人と正体不明の敵との戦いが起きた。
俺は事前にホワイトウォーターのリーダーである『ジェイク』と交渉していた。筋肉ムキムキの黒人とは思わなかった。幸い、英語は得意だったので話は簡単だった。
「タチカワや君の弟の事は聞いている」
「俺は早坂に復讐したい」
「分かった。君たち組織と我々は共闘関係だ。こちらとしても、ガキ共を始末してしまいたいからね。狙うは財宝だけだ。三百億以上ともなれば我が社が潤うだけではない、国益にもなるのだ」
「よろしく頼む」
「ああ。海上にいるといい。地上エリアでは“人間狩り”をしているからね、君たちを巻き込む恐れがあるから」
どうやら、俺たち以外にも人間がいるらしい。それもそうか、ニュースになった直後に宝島へ上陸した者も数多いと聞く。大半が諦めて帰ったらしいが、それでも財宝を諦められなくて滞在している者が少数いるのだとか。
コイツ等、軍人はそんな馬鹿共を掃除している最中なのだろうな。
……血なまぐさいことは軍人共に任せ、俺はその時を待つことにした。
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