クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

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隠居ハーレム生活

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 驚くほど軍人たちの妨害はなかった。
 逆に不気味すぎて怖い。

 早朝、俺たちは全ての宝を船に乗せ終えた。

 これほど上手くいくとは……思わなかった。なんで、どうして。


「北上さん、いくらなんでも違和感がありすぎる」


 島を見つめる北上は、静かに語った。


「もしかしたら、向こうの作戦が変わったのかも」
「どういうことだい?」

「早朝……少しだけ島の様子を探ってみたんです。すると、見知らぬ船がボロボロになって座礁していました」

「なんだって?」

「すぐ傍には複数の遺体も。性別は不明でしたが……」


 いったい、どういうことだ。何が起きているんだ?


「これからどうなる」
「少なくとも、あたしたちは脱出できるでしょう。でも、この先に何かありそうな気がしますね」

「つまり……」

「誰かの掌の上で踊らされているような気が……気のせいならいいですが」


 あれだけホワイトウォーターの連中も動いていたのにな。なんで今日になって沈黙しているんだ。その必要がなくなったから?

 俺たちがお宝を運び出し、港に着いた瞬間を狙うとか……まさかな。


「進路を日本ではなく、海外にした方が……」
「無理ですよ。この船にそこまでの燃料はないでしょう」

「だよなあ……一度、本州へ戻るしかないわけだ」

「ええ。今は大人しく戻りましょう」


 静かな船旅が始まった。
 本当に無事に帰れればいいのだが。

 ぼうっとしていると今度は天音が近づいてきた。

「早坂くん、島を出られて良かったね。今度は転覆とかもなかったし」
「そうだな、これほど順調とは思わなかった。天音はどう思う?」

「うーん、いいんじゃないかな。もしかしたら、親切な人がわたしたちを逃がしてくれたのかもね」

「親切な人って、誰だよ」
「案外いたのかもよ。正義の味方みたいな人」

「そんな、都合よすぎだろ」


 船旅は続く。
 なんだかんだ島から本州までは一時間以上かかるからなぁ。俺は一度、船内にある個室でゆっくりしていた。

 すると扉が開いてリコたちがやってきた。

「リコ、ほっきーに桃瀬も。三人ともよくやってくれた。君たちがいなければ、財宝は運べなかったよ」

「いいよ。これで山分けだね」

「ああ、あとはどうやって売るかだな」
「オークションでいいんじゃない? 桃瀬が英語得意だし」

 へえ、桃瀬ってそうなのか。知らなかったな。ああ、でもそういえばハッキング技術がどうとか言っていたっけ。パソコンに関してはプロらしいし、任せても良いかもしれない。

「桃瀬、頼めるか」
「もちのロンロンよ! 任せてちょうだい」

「ところでさ、ホワイトウォーターのことなんだけど」

「それね、わたしも気になったんだけど……なんで動きがなかったんだろうね」


 桃瀬も納得いかないらしい。
 掲示板とかで調べてもらったが、特に動きはないという。島にいるはずの四人の軍人は……何処へ。


「あとボロボロの船はいったいなんだ」
「それね、調べたんだけど、ここ最近で『倉島』の関係者が船で宝島を目指したってネットニュースがあったよ。ほら」

「え!?」


 マジだった。
 そこには【高速クルーザーが脅し取られる!】なんて見出しがあった。ネットの記事によれば、どうやら倉島の兄貴・大智が宝島を目指していたらしい。って、倉島に兄貴がいたのか。知らなかったぞ。

 だが、現在は行方不明。

 海上保安庁が調査に乗り出したが、島には何もなかったという。

 ……って、まさか丁度入れ違ったのか。

 そうか、海上保安庁の動きがあったせいで軍人たちも大胆に動けなくなったのか。なんという偶然、なんという奇跡か。

 じゃあ、北上の言っていたボロボロになった船は……倉島のものか。

 ここからは推論だが、軍人たちと共闘関係になって――けれど、裏切られて殺されたってところだろうか。


 なにかあったんだ。
 その何かは分からないけど。


 【一日後】


 俺たちは無事に本州に到着。
 港で襲われることもなかった。

 宝を天音の借りた倉庫へ持ち運び、そこで改めて検品を行った。


「全て本物だね」
「本当かい、北上さん」
「この金の重さは間違いないよ。今、金は非常に高騰しているから、高く売れるはず」


「「「おぉ!!」」」


 全員が沸いた。
 総額にして三百億以上はあるのではないかと言われていたが、本当にありそうだ。



 あとは桃瀬のお得意の英語を使って貰い、裏ルートから宝を売り捌いていった。今の時代、ブラックウェブを使えばちょちょいのちょいらしい。

 俺は詳しくは分からんけど。


 一ヶ月もすればほとんどを現金化できた。


 天音の所持する倉庫へ集まり、山積みになっている現金を見て全員が驚いた。


「すげええ! なんだこの諭吉の山!!」「うわあああ、夢のよう!!」「宝くじに当たった気分」「最高!!」「これで幸せになれるね」「うんうん、泣ける」「がんばってよかった」「高校なんて中退しちゃったしさ」「そうだね、これからの未来悲惨と思っていたけど、わたしたちは幸せになれるよね!」「親孝行もできる!」


 などなど、倉庫内は湧きまくった。


 もちろん、これは公平に山分けした。


 今日は元気になった八重樫、篠山、大塚も駆けつけている。

 俺、天音、北上、桃瀬、千年世、八重樫、ほっきー、リコ、大塚、大伊、篠山、野茂、楓、草埜、月、星……と、俺含めて十六名。

 ひとりあたり約十八億円の分配だ。


「じゅ、十八億!? そ、そんなに貰っちゃっていいのぉ!?」


 千年世がガクガク震えていた。


「いいんだよ。これは皆でがんばって手に入れたお金だ。まあ、俺は海外に住むよ」


「じゃあ、わたしも」「あたしも」「私も、私も!」「親には仕送りすればいっか」「早坂くんと一緒に住むー!」「赤ちゃんいっぱい作ろう~」「なんだ、みんなで住めばいいじゃん」「え~、こんなにいっぱい~!?」「仕方ないかぁ」「みんな早坂くんが好きだしさ」「うんうん」「よーし、決まりだね」「海外かぁ、楽しみ」「行くしかないよね」「準備しなきゃ」


 全員の意見が一致した。

 俺はこうして、みんなと共に海外へ移住した。

 場所はとりあえず暫定で『マレーシア』に住むことになった。マレーシア・マイ・セカンドホーム・プログラム制度で十年間は住めるらしいからな。

 治安も良いらしいし、ベスト。

 こうして俺は、みんなと共に日本を出国。
 マレーシアで隠居ハーレム生活を送ることになった。


「愛、絆~?」

「どうしたの、啓くん」
「どうかしましたか、啓くん」

「やっと幸せを手に入れたな」

「そうだね、無人島生活から、こんな豪邸生活になるとは思わなかったな」
「愛さんの言う通りです。あたしも当初はここまで成り上がれるとは予想外でした」

 俺は今いる二人をベッドに押し倒して抱いた。


 ――あぁ、俺は幸せだ――。
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