121 / 287
俺の体に触れてくる北上さん
しおりを挟む
俺はリップグロスを宙に放り投げた。
銀色の筒は太陽の光でキラキラと輝く。そこへ弾丸が命中する。そこかッ! スナイパーの正確な位置が分かった。
屋上を狙い、威嚇射撃する。
こんなサイレンサーでは弾は届かないだろうが、牽制にはなるだろう。その通り、スナイパーは逃げ出したのか気配が消えた。
「よし、今のうちに逃げるぞ」
「「了解」」
駆け足で現場を離れた。直後、物凄い数のパトカーが集結していた。あれではもう、スナイパーもあの場所にはいられまい。
遠くまで逃げ、安全な場所に避難した。
もうすぐ拠点にしている別荘も近い。
「いったん拠点へ戻って、このことを皆に知らせよう。明日には移動した方がいいかもしれない」
「啓くんに賛成です。謎の男二人が我々を狙っているのですから、危険でしょう」
となれば一刻も早く戻らねば。
周囲を警戒しながらも別荘へ戻った。一応、ここはセキュリティも多いから安全だとは……思いたい。
「おかえりなさい~、早坂くん」
「おっす、千年世。お前だけか?」
「うん、今は私だけだよー。留守番を頼まれちゃってさ。リコたちは出掛けてる」
「マジか!」
「どうしたの?」
俺はさっきあったことを千年世に説明した。もちろん、驚いていた。
「――というわけさ」
「はぁ!? ブランドショップへ行ったら銃で襲われた!? 日本の治安、どんだけ悪いのよ……」
「それには同感だが、敵はサイレンサー付きのハンドガンの男一人と狙撃手までいた」
「そんな……。みんな大丈夫なの!?」
「天音も北上さんも無事だ。それより、リコたちだよ!」
「あ、そっか!」
青ざめる千年世は、スマホを取り出して電話してくれた。無事に繋がるといいが……お?
十秒ほど経って通話が出来たようだ。
『――千年世ちゃん、ご、ごめん……こっち、取り込み中で――きゃ!』
「リコちゃん!? リコちゃんってば……!」
そこで通話は切れた。
「おい、ウソだろ!!」
俺が声を荒げると、天音も「まさか狙われたんじゃ!」と心配そうに声を漏らす。それから北上さんも「まずいですね……」とつぶやいた。
さっきの男達がリコたちを狙ったのか……?
「これ、まずいんじゃない?」
「ああ、千年世。リコたちの位置情報は分からないか」
「分かるよ。お互いに居場所を共有するようにしてるからね。……えっと、リコちゃんたちは……あれ?」
首を傾げる千年世。
腑に落ちない顔をしてどうしたんだか。
俺の代わりに北上さんが千年世のスマホを覗く。すると。
「どうしたのです、千年世。って、ここは『熊本城』ではありませんか」
「熊本城? リコちゃんたち、観光でもしてるの?」
天音が落ち着いた口調で疑問を首を傾げていた。なんだ、危険な目に遭っているわけではなかったのか。
続けて千年世にメッセージが来た。
『ごめん、つまずいて倒れちゃった。痛かったぁ』
「まぎらわしいな、おい!」
俺は思わずツッコンだ。
原因は歩きスマホかよ。気を付けろよな。
* * *
リコたちが帰ってくるまで、俺たちは荷物をまとめることにした。拠点を移さないと、また敵に狙われるかもしれないからな。
自室でひとつひとつ必要なものを梱包していると、北上さんが部屋に入ってきた。
「入りますよ、啓くん」
「どうした、神妙な顔で」
「今回の未知の敵のことです」
「アメリカじゃないのか」
「かもしれません。ですが、確証もありません」
「情報なら得られるさ。そこのサイレンサーで」
テーブルの上には、敵が落としたサイレンサー付きのハンドガンが置かれている。それは『レベデフ・ピストル』と呼ばれる拳銃だ。
「ロシアの自動拳銃……後期モデルPL-15のサイレンサー付きですか」
「さすが詳しいな」
「ということは敵はロシア人?」
「かもな。スナイパーは、恐らく国内でも所持可能なドラグノフ狙撃銃の可能性が高い」
「そうですね。猟銃として認められているモデルもありますからね」
なんにせよ、要警戒か。
みんな早く戻ってくるといいのだが……。
心配していると北上さんが俺をジッと見つめていた。
「ど、どうした……?」
「いえ、その、今日買っていただいた香水をつけてみたのです。嗅いでくれませんか」
そう言って北上さんは、身を寄せて――いや、抱きついてきた。凄く良い匂いがして、俺は頭がクラクラした。なんだこの高級感あるフルーティな甘い匂い。高級ブランドってすげぇや……。
「とても良い匂いだよ」
「では、しばらくこのままで」
「そ、それは……しかしだな」
「大丈夫です。天音さんはお風呂ですし、千年世も夕食を作っているところ。となれば、今しかチャンスはないのです」
その細い指で俺の体に触れてくる北上さん。そんな、大切なものを扱うかのようになぞられると……うぐッ!
「そ、そこは……まずいって」
「ここが弱いんですね」
その甘くとろけるような声も、手の位置も危険すぎるって!
銀色の筒は太陽の光でキラキラと輝く。そこへ弾丸が命中する。そこかッ! スナイパーの正確な位置が分かった。
屋上を狙い、威嚇射撃する。
こんなサイレンサーでは弾は届かないだろうが、牽制にはなるだろう。その通り、スナイパーは逃げ出したのか気配が消えた。
「よし、今のうちに逃げるぞ」
「「了解」」
駆け足で現場を離れた。直後、物凄い数のパトカーが集結していた。あれではもう、スナイパーもあの場所にはいられまい。
遠くまで逃げ、安全な場所に避難した。
もうすぐ拠点にしている別荘も近い。
「いったん拠点へ戻って、このことを皆に知らせよう。明日には移動した方がいいかもしれない」
「啓くんに賛成です。謎の男二人が我々を狙っているのですから、危険でしょう」
となれば一刻も早く戻らねば。
周囲を警戒しながらも別荘へ戻った。一応、ここはセキュリティも多いから安全だとは……思いたい。
「おかえりなさい~、早坂くん」
「おっす、千年世。お前だけか?」
「うん、今は私だけだよー。留守番を頼まれちゃってさ。リコたちは出掛けてる」
「マジか!」
「どうしたの?」
俺はさっきあったことを千年世に説明した。もちろん、驚いていた。
「――というわけさ」
「はぁ!? ブランドショップへ行ったら銃で襲われた!? 日本の治安、どんだけ悪いのよ……」
「それには同感だが、敵はサイレンサー付きのハンドガンの男一人と狙撃手までいた」
「そんな……。みんな大丈夫なの!?」
「天音も北上さんも無事だ。それより、リコたちだよ!」
「あ、そっか!」
青ざめる千年世は、スマホを取り出して電話してくれた。無事に繋がるといいが……お?
十秒ほど経って通話が出来たようだ。
『――千年世ちゃん、ご、ごめん……こっち、取り込み中で――きゃ!』
「リコちゃん!? リコちゃんってば……!」
そこで通話は切れた。
「おい、ウソだろ!!」
俺が声を荒げると、天音も「まさか狙われたんじゃ!」と心配そうに声を漏らす。それから北上さんも「まずいですね……」とつぶやいた。
さっきの男達がリコたちを狙ったのか……?
「これ、まずいんじゃない?」
「ああ、千年世。リコたちの位置情報は分からないか」
「分かるよ。お互いに居場所を共有するようにしてるからね。……えっと、リコちゃんたちは……あれ?」
首を傾げる千年世。
腑に落ちない顔をしてどうしたんだか。
俺の代わりに北上さんが千年世のスマホを覗く。すると。
「どうしたのです、千年世。って、ここは『熊本城』ではありませんか」
「熊本城? リコちゃんたち、観光でもしてるの?」
天音が落ち着いた口調で疑問を首を傾げていた。なんだ、危険な目に遭っているわけではなかったのか。
続けて千年世にメッセージが来た。
『ごめん、つまずいて倒れちゃった。痛かったぁ』
「まぎらわしいな、おい!」
俺は思わずツッコンだ。
原因は歩きスマホかよ。気を付けろよな。
* * *
リコたちが帰ってくるまで、俺たちは荷物をまとめることにした。拠点を移さないと、また敵に狙われるかもしれないからな。
自室でひとつひとつ必要なものを梱包していると、北上さんが部屋に入ってきた。
「入りますよ、啓くん」
「どうした、神妙な顔で」
「今回の未知の敵のことです」
「アメリカじゃないのか」
「かもしれません。ですが、確証もありません」
「情報なら得られるさ。そこのサイレンサーで」
テーブルの上には、敵が落としたサイレンサー付きのハンドガンが置かれている。それは『レベデフ・ピストル』と呼ばれる拳銃だ。
「ロシアの自動拳銃……後期モデルPL-15のサイレンサー付きですか」
「さすが詳しいな」
「ということは敵はロシア人?」
「かもな。スナイパーは、恐らく国内でも所持可能なドラグノフ狙撃銃の可能性が高い」
「そうですね。猟銃として認められているモデルもありますからね」
なんにせよ、要警戒か。
みんな早く戻ってくるといいのだが……。
心配していると北上さんが俺をジッと見つめていた。
「ど、どうした……?」
「いえ、その、今日買っていただいた香水をつけてみたのです。嗅いでくれませんか」
そう言って北上さんは、身を寄せて――いや、抱きついてきた。凄く良い匂いがして、俺は頭がクラクラした。なんだこの高級感あるフルーティな甘い匂い。高級ブランドってすげぇや……。
「とても良い匂いだよ」
「では、しばらくこのままで」
「そ、それは……しかしだな」
「大丈夫です。天音さんはお風呂ですし、千年世も夕食を作っているところ。となれば、今しかチャンスはないのです」
その細い指で俺の体に触れてくる北上さん。そんな、大切なものを扱うかのようになぞられると……うぐッ!
「そ、そこは……まずいって」
「ここが弱いんですね」
その甘くとろけるような声も、手の位置も危険すぎるって!
8
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる