クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

文字の大きさ
141 / 287

支え合って朝食作り

しおりを挟む
 よもぎは上機嫌に台所へ。
 少し前、ロシア人に足を撃たれたせいで、つたない動きだ。幸いにも弾は貫通しており、処置も早かった為に大事には至らなかった。

 だが、やっぱりというか――艾は無茶をしていた。

 足から崩れて倒れた。

「お、おい……艾、大丈夫か!」
「……っ。やっぱりまだ歩き辛いや」
「無茶するなって。俺が支えてやる」

 彼女の小さな体を俺は支えた。
 高校では園芸部員だった彼女は、戦闘だとかサバイバルとは無縁の生活を送っていた。なのに今はこんなことに巻き込まれて大変な思いをしている。
 艾は戦闘向きじゃないし、こう言ってはなんだが能力も劣る。
 けど、料理が出来るようだし、仲間のメンタルケアを行ったりサポートに徹してくれている。
 俺はその部分しか見ていなかった気がする。

「ありがと。ごめんね……」
「気にするな。そもそも、俺みたいなのが艾と関われていること自体が奇跡だ」
「そうかな。私って別に魅力ないと思うけど」
「そんなことはない。在学中は、高嶺たかねの花って感じがしていた」
「気のせいだよ。モテたこともないし」

 そう謙遜する艾。
 いやいや、彼女は魅力満載だ。
 ツインテールが特徴的で可愛い。
 性格も明るくて可愛くて、なにより可憐だ。
 天真爛漫てんしんらんまんという言葉がよく似合うと思う。
 これほどの美少女なら、彼氏のひとり居てもおかしくはない。

「気づいていないだけさ」
「え、それって、早坂くんは私を意識してくれてるってことかな?」
「……あ、当たり前だろ」
「へ~、それは意外だったな~」

 意識もなにも、肉体的接触は散々している気がする。
 けど、こうして二人きりで話す機会は少なかった。こんなタイミングは中々ないだろう。お互いをもっと知る為に、親睦を深める為にも、俺は艾のことを知りたいと思った。

「そら、台所についた」
「支えてくれて助かったよ」

 立たせようとするが、艾はやっぱり無茶をしていたようでバランスを崩しかけた。だめだこりゃ。俺が支えるしかない。

「肩を貸す。このまま料理してくれ」
「……こ、この運動会の二人三脚みたいに?」
「そうだ。これしか支える方法はない」

 そこそこ密着しているし、艾の息遣いだとか匂いがハッキリと分かる。
 驚くべきことに艾は、天音や北上さん以上に細身だってことが分かった。体重も軽いようだ。

「仕方ないなぁ。じゃあ、簡単な料理にしよっか」
「おう、分かった。指示を出してくれれば動く」
「お願いね」

 俺は艾の指示に従い、包丁を渡したり食材を準備したりした。隣で見ていても、艾の手際の良さに驚かされた。
 無駄なくスムーズに料理を進め、ついにオムライスが完成した。
 な、なんだこのメイド喫茶とかで出てきそうな完璧なヤツ。

 黄色いお山が出来ている。
 ケチャップでハートマークなんて描いてくれてるし!

「凄いな」
「これで完成っと」
「もしかして、メイド喫茶で働いてた?」
「な、なんで知ってるの!? 誰にも話したことなかったのに!」
「地元にメイド喫茶なんて一店舗しかなかったからな。ということは『にゃんにゃん邸』で確定だな」

「……う」

 大当たりか。艾がメイド喫茶のバイトをしていた過去があったとはな。だから料理が上手いのか。調理も担当していたのかも。

「面白い情報を得た」
「誰にも言わないでよ。私の黒歴史なんだから」

 涙目になられ、俺は言いふらさない方がいいなと感じた。そんな気もないけどね。

「オーケー、俺を信じろ。それより、さっそく食べても?」
「もちろん」

 リビングへ移った。
 銀のスプーンを手に取り、俺はオムライスをいただく。

 ……んまッ。

 口の中で卵がトロトロととけていく。
 チキンライスも完璧だ。
 鶏肉多めで幸せ!

 ケチャップはレストランで使用される高級品。そのせいか、濃厚で凄く美味しい。


「美味い! 艾、これ美味いよ」
「良かった……久しぶりだったから、上手くいくか心配だったから」
「完璧だよ。ほら、艾も食べなよ」
「で、でも」
「せっかくだから」
「うん、ありがとう」

 間接キスを気にしているのか、艾は顔を赤くしていた。可愛いところもある。
 ようやくスプーンで掬ってオムライスを口へ運んだ。

「どうだ?」
「美味しい~! 我ながら完璧!」

 元気を取り戻した艾。良かった。負傷して落ち込んでいたから、少しは笑顔が戻って良かった。

 それから談笑しながらオムライスをいただいた。
 楽しい食事を終え、茶をゆっくりと休息を堪能する俺。

 気づけば艾が俺の方へもたれ掛かっていた。疲れて眠ってしまっていた。

 艾の寝顔はこれが初めてだ。子猫のように可愛い。これを見れただけでも俺は幸せだ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...