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食糧・消耗品調達へ
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悩んでいても仕方ない。
今はこのオーハ島で財宝の現金化を進める。それだけだ。
いったん散会として、俺は木下さんの様子を見に行くことにした。
あの晩から彼がどうなったか把握していなかった。
隣の和室へ向かうと、そこにはお茶を啜る木下さんの元気な姿があった。
「気づかれていたんですね」
「早坂くん、君はいったい何者だ」
「前も言ったでしょう。ただの高校生ですよ」
「そんなはずがない。こんな島で若い女子たちに囲まれて暮らしているだなんて、普通じゃない。それに、あの銃撃戦……いったい何が起きているんだ」
それ、説明したはずなんだけどな。まさか信じていない!?
俺は改めて今までのことを説明した。
「――というわけです」
「何度聞いても信じられないな。まるで映画みたいだ」
「真実なのだから仕方ありません」
「これを黙認するわけにはいかないのだが……しかし、大事にすればもっと大変なことになりそうだ」
「そうですね。申し訳ないですが、このことは伏せていただきたいです」
警察に介入されたら、もっとカオスな状況になるだろう。しかも、俺たちの関係も終わりかねない。それは嫌だ。
「分かった。けど、なにかあったら私を頼ってくれ」
「いいんですか? リスク高いですよ」
「北上さんのお父さんにはお世話になっているからね。構わないさ」
「北上さんの? そうだったんですね」
「ああ、だから信用してくれていい」
そう言って木下さんは立ち上がった。
「どこへ?」
「君たちの邪魔をするわけにはいかないし、一度帰るよ」
「分かりました。途中まで送ります」
「助かる」
俺は木下さんに同行。彼が乗ってきたという船まで向かった。
島の反対方向に船はあった。
こんなところから来ていたとは。
奥武島が見えるし、そこから来たのか。
「ありがとうございました」
「いつでも連絡してくれ」
木下さんを見送り、俺は家へ戻った。
* * *
家へ戻ると早々、天音が駆け寄ってきた。
「おかえりなさい、早坂くん」
「天音、待っていたのか」
「うん、電話が繋がらなかったから心配したよ」
「あー、すまん。電池切れだった」
スマホの画面は真っ暗で無反応だった。充電し忘れるとは。
「そうだったんだ。何かあったんじゃないかと心配したよ」
「悪いな。木下さんの見送りで出掛けてた」
「あ~、あの刑事さん帰ったんだ」
「心配はないから安心しろ。ところで、みんなは?」
「これから久米島へ行くから準備してる。ほら、食糧が減ってきたから買出し」
そうだった。これだけの人数がいるからな、米とか食材が減りやすいのだ。それに、日用品もかなり消耗が激しい。
持参してきたものでは限界があった。
「ということは、北上さんあたりが買出しへ行ってくれるのかな」
「北上さんとリコちゃん、それと千年世が行くって」
あの三人に任せるか。
俺たちは周囲の防衛力強化や財宝の売買、今後のプランも練っていかねば。
北上さんたちを合流すると、天音の言っていた通りに買出しとなった。
「啓くん。あたしたちは久米島へ向かいます」
「了解。なにかあれば直ぐに連絡を」
今度は三人を見送り、買出しを任せた。
無事を祈っていると桃枝が叫んだ。
「ああああああああ!!」
「なんだ!?」
「……ドクペを頼むの忘れてた」
「って、ドクペかよ!」
「ドクペは選ばれし者の知的飲料なんだよ! あれがないと脳が死ぬ!」
発狂寸前の桃枝。なるほど、彼女にとっての燃料らしい。このままでは狂死しかねん。そうなる前に電話をしておいた。
「こうすれば早いだろ」
「なるほど! 電話を忘れてた!」
ここは離島だが、割と電波は飛んでいた。沖縄も近いし、なんなら米軍基地もあるからな。今までの無人島とは違い、利用できるものは多い。
俺は北上さんに電話した。
『――なにかありましたか、啓くん』
「すまん、桃枝がドクペが欲しいってさ」
『……はい?』
「知的飲料らしい」
『意味が分かりません。が、買っておきます』
そこでプツッと電話は切れた。
一応買ってくれるらしい。
「良かったな、桃枝。買ってくれるってさ」
「ありがとおおおおおおお、てっちゃん!」
抱きついて喜んでくれる桃枝。って、こんな号泣するほどだったとはな……。
って、天音もなんかくっついてるし。
そんな子供みたいに……可愛いけど。
「天音……?」
「そ、その……わたしはオマケみたいな?」
「オマケどころじゃないけどな」
とにかく、俺たちは財宝売買を進めていく……!
今はこのオーハ島で財宝の現金化を進める。それだけだ。
いったん散会として、俺は木下さんの様子を見に行くことにした。
あの晩から彼がどうなったか把握していなかった。
隣の和室へ向かうと、そこにはお茶を啜る木下さんの元気な姿があった。
「気づかれていたんですね」
「早坂くん、君はいったい何者だ」
「前も言ったでしょう。ただの高校生ですよ」
「そんなはずがない。こんな島で若い女子たちに囲まれて暮らしているだなんて、普通じゃない。それに、あの銃撃戦……いったい何が起きているんだ」
それ、説明したはずなんだけどな。まさか信じていない!?
俺は改めて今までのことを説明した。
「――というわけです」
「何度聞いても信じられないな。まるで映画みたいだ」
「真実なのだから仕方ありません」
「これを黙認するわけにはいかないのだが……しかし、大事にすればもっと大変なことになりそうだ」
「そうですね。申し訳ないですが、このことは伏せていただきたいです」
警察に介入されたら、もっとカオスな状況になるだろう。しかも、俺たちの関係も終わりかねない。それは嫌だ。
「分かった。けど、なにかあったら私を頼ってくれ」
「いいんですか? リスク高いですよ」
「北上さんのお父さんにはお世話になっているからね。構わないさ」
「北上さんの? そうだったんですね」
「ああ、だから信用してくれていい」
そう言って木下さんは立ち上がった。
「どこへ?」
「君たちの邪魔をするわけにはいかないし、一度帰るよ」
「分かりました。途中まで送ります」
「助かる」
俺は木下さんに同行。彼が乗ってきたという船まで向かった。
島の反対方向に船はあった。
こんなところから来ていたとは。
奥武島が見えるし、そこから来たのか。
「ありがとうございました」
「いつでも連絡してくれ」
木下さんを見送り、俺は家へ戻った。
* * *
家へ戻ると早々、天音が駆け寄ってきた。
「おかえりなさい、早坂くん」
「天音、待っていたのか」
「うん、電話が繋がらなかったから心配したよ」
「あー、すまん。電池切れだった」
スマホの画面は真っ暗で無反応だった。充電し忘れるとは。
「そうだったんだ。何かあったんじゃないかと心配したよ」
「悪いな。木下さんの見送りで出掛けてた」
「あ~、あの刑事さん帰ったんだ」
「心配はないから安心しろ。ところで、みんなは?」
「これから久米島へ行くから準備してる。ほら、食糧が減ってきたから買出し」
そうだった。これだけの人数がいるからな、米とか食材が減りやすいのだ。それに、日用品もかなり消耗が激しい。
持参してきたものでは限界があった。
「ということは、北上さんあたりが買出しへ行ってくれるのかな」
「北上さんとリコちゃん、それと千年世が行くって」
あの三人に任せるか。
俺たちは周囲の防衛力強化や財宝の売買、今後のプランも練っていかねば。
北上さんたちを合流すると、天音の言っていた通りに買出しとなった。
「啓くん。あたしたちは久米島へ向かいます」
「了解。なにかあれば直ぐに連絡を」
今度は三人を見送り、買出しを任せた。
無事を祈っていると桃枝が叫んだ。
「ああああああああ!!」
「なんだ!?」
「……ドクペを頼むの忘れてた」
「って、ドクペかよ!」
「ドクペは選ばれし者の知的飲料なんだよ! あれがないと脳が死ぬ!」
発狂寸前の桃枝。なるほど、彼女にとっての燃料らしい。このままでは狂死しかねん。そうなる前に電話をしておいた。
「こうすれば早いだろ」
「なるほど! 電話を忘れてた!」
ここは離島だが、割と電波は飛んでいた。沖縄も近いし、なんなら米軍基地もあるからな。今までの無人島とは違い、利用できるものは多い。
俺は北上さんに電話した。
『――なにかありましたか、啓くん』
「すまん、桃枝がドクペが欲しいってさ」
『……はい?』
「知的飲料らしい」
『意味が分かりません。が、買っておきます』
そこでプツッと電話は切れた。
一応買ってくれるらしい。
「良かったな、桃枝。買ってくれるってさ」
「ありがとおおおおおおお、てっちゃん!」
抱きついて喜んでくれる桃枝。って、こんな号泣するほどだったとはな……。
って、天音もなんかくっついてるし。
そんな子供みたいに……可愛いけど。
「天音……?」
「そ、その……わたしはオマケみたいな?」
「オマケどころじゃないけどな」
とにかく、俺たちは財宝売買を進めていく……!
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