クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

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現役アイドル vs 悪役令嬢

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 船旅はまだ続く。
 鹿児島港まではまだまだ時間が掛かるようだ。それまでは、みんなと共に有意義な時間を過ごしていく。

 ――と、思ったのだが、みんな疲れているのか寝台へ行ってしまった。レディースルームなので、男の俺は入れない。

 仕方ないので船内をウロウロ。
 大型のフェリーなので思った以上に広い。

 ふとゲームコーナーが視界に。俺は暇つぶしに入ってみることに。

 パチンコやスロットの筐体きょうたいがズラリ。
 へえ、こういうゲーセンみたいなコーナーがあるんだな。試しに遊んでみよう。

 椅子に座り、俺はスロットで遊ぶことに。四号機のAタイプだ。なんだか古臭さを感じるけど、これが逆にいい。百円を投入するとクレジットが50増えるタイプ。ポイントが300ポイントを超えると景品がもらえるようだ。
 へえ、大当たりはゲーム機とか旅行券が貰えるのか。

 さっそくレバーを叩いてボタンを押していく。レトロな音が響いてベルがそろったりした。やがてリーチ目を引いた。……お、早くもボーナス確定だ。

 俺は『7』を目押ししていく。
 見事にスリーセブンをそろえ、ビッグボーナス。
 こんな簡単に引けるなんてラッキーだな、俺!

 あっさりと300ポイントを達成し、景品ゲット。

 景品取り出し口からカプセルを取り出して開けようとしたが、肩を叩かれた。……ん、誰かな。

「あれ、そこにいるの早坂くんですよね!」
「え?」

 振り向くと、そこには見たこともない女子がいた。誰だ、この美少女。こんなお嬢様みたいな女の子、忘れるはずがないのだがな。

「わたくしのこと覚えてないです?」
「すまん、誰だっけ……」
「え~、そっか。でも仕方ないですよね、久しぶりだし。わたくしは『大塚おおつか 杏《あんず》』です。ほら、無人島で一緒だったじゃないですか」
「……大塚さん? あ……!」

 思い出したああああああああ!!
 大伊さんのグループにいた女子のひとりだ。

「思い出しました?」
「って、あれ。確か、入院組の面倒を見ているとか言ってなかったっけ」
「今は他の方に任せているんです。連絡も取らず申し訳ない」
「そうだったんだ。大伊さんたち元気?」
「はい、今は段々と落ち着きを取り戻していますよ。ただ、復帰は厳しいかもです」

 大伊さんたちは八重樫の面倒を見てくれている。あと地元へ帰ってしまった女子もいる。今頃なにをしているのかと思う時もあったけど、まさかここで大塚さんと出会うとは。

「それにしても偶然だね」
「はい、驚きました。まさか、早坂くんが船に乗っているとは……沖縄旅行です?」
「あ~、話すと長くなるのだが――聞きたいか?」
「ええ、興味あります!」

 ずっと顔を近づけてくる大塚さん。まあいいか、みんな寝ちゃって退屈していたところだ。俺は大塚さんにこれまでのことを話した。

「――というわけでね」
「そ、そんな壮大なことが! うぅ、わたくしも参加したかったです」
「え!? 危険だよ?」
「いえいえ、せっかく北上さんに訓練してもらいましたし、それに、島生活に憧れていたので」

 どうやら、大塚さんは無人島を買うために旅をしているらしい。凄い夏休みの使い方だな! まあ、大塚さんはどこかのお嬢様みたいだし、金持ちではあるんだろうな。

「とりあえず、地元へ戻って高校生活に復帰しようと思うよ」
「そういえば再開するみたいですね。でも、本当に大丈夫なのでしょうか」
「心配しかないけどね。でも、今回島生活して分かったけど、どこへ逃げても敵は追ってくる。だから次はもっと見つかり辛い場所にするか、人気の多い場所にするか……また、無人島へ行ってみるか」

 正直、他人を巻き込みたくはない。
 けれど人が多ければ多いほど、敵も手を出し辛いはずだ。さすがに敵も自分の正体を世間にバレたくないだろうからな。
 やはり、学校生活に復帰する方が無難な気がしていた。

「なるほどー。天音さんや北上さんはどちらに?」
「今はレディースルームで寝てる」
「そうですか。では挨拶は後にして……今は早坂くんとお話しましょう」

 知らない仲でもないし、まあいいか。
 ここで大塚さんご合流できるとは思わなかったけど、彼女、ひとりで旅しているみたいだし、一緒に地元まで戻るか。

 海の見える甲板デッキへ出て、大塚さんとデートみたいなことになった。

「ここなら気兼ねなく話せる」
「ええ、とてもいい天気ですし、風が気持ち良いです」

 大塚さんの花柄のワンピース姿はこの海によく映える。肩を大胆に出し、体のラインが滑らかに強調されている。う~ん、スタイル抜群。

 見惚れていると俺の名を叫ぶ天音が走ってきた。

「早坂くん! な、なんで……浮気!?」
「え……天音! いや、違うって!」
「なんで知らない女の子と楽しそうに話してるの!!」
「だから違うって!!」
「なにが違うのよ! こんなめちゃくちゃ可愛い子とデートとか信じられないっ!」

 ぷんぷん怒る天音さん。勘違いしすぎだろっ!

「この子は大塚さんだよ。ほら、宝島にいたろ」
「へ……ウソ。あの大塚さん?」

 視線を大塚さんに向ける天音。気づいてなかったんだな。

「はい、そうですよ、天音さん。大塚 杏です」
「ええー! うそー! ツインテールがないから気づかなかった……」

 言われてみればそうだ。
 大塚さんは出会った当初はツインテール女子だったな。でも今は青色のインナーカラー入りの黒髪ロング。今時の清楚系って感じだ。

「ほら、本当だったろ」
「う、うん。勘違いしてごめんね……早坂くん」
「分かってくれて良かったよ。まあ、そんなわけで大塚さんも一緒に帰るぞ」
「そ、そうなんだ。こんな場所で会うなんて凄い偶然だね」

 天音は信じられないと、とにかく驚いていた。確かに、偶然にしては出来過ぎている気もするが、世間は狭いということで。

 誤解も晴れたところで、俺は今後のことを話そうとしたが――大塚さんは、わざとらしく俺に抱きついてきた。なにごと!?

「あぁっ、強い風に煽られてしまいましたぁ」
「お、大塚さん!」
「えへへ。早坂くん、元アイドルの天音さんなんて放っておいて二人だけで話しましょう」


「「んなッ!?」」


 俺も天音も同じように驚いた。
 ま、まさか大塚さん……天音に対抗心を燃やしている!?
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