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裏切者の末路と島脱出
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噴水のように鮮血が噴き出ていた。
ぷしゅぅっと存分に打ち上げ終えると、ヴァレンティンの体は力尽きて倒れた。
「「…………!!」」
すぐに身を隠し、狙撃手を確認。
けれど、それらしい気配は感じなかった。
かなりの遠い距離なのか。
「北上さん! これは……」
「……信じがたいことに我々仲間の方向から弾丸が飛んできました」
「なんだって!?」
ということは、千年世やリコが仕留めてくれた……?
それならそれでいいが危険すぎるぞ。
けどまぁ……助かったけどな。
嬉しくもあり、複雑でもあった。
出来れば俺の手で仕留めたいと思っていたからだ。
天音たちのいるコンクリートの壁へ向かう。
「……てっちゃん、来ちゃダメ!!」
「!? 桃枝、なにが…………え」
なんで“彼女”がみんなを人質にしているんだ。
ようやく終わったと思ったのに、なんだこれは……!
「……フフ。早坂様、いえ、早坂 哲。あなたはよくやってくれました」
「万由里さん、なぜ!!」
万由里さんは腰に爆弾をつけ、みんなに銃を向けていた。
そんな馬鹿な。
彼女はこんなことをする人じゃない。
櫛家は俺たちに援助してくれた。
仲間のはずだった。
「なぜ? あなた達は気づいてはいけないことに気づいてしまったのよ」
「まさか……『八咫烏』か……!」
にらみつけると、万由里さんは不敵に笑った。
「大正解。櫛家は八咫烏のメンバーなの。お爺様はずっとこの時を待っていらしたの。きっと、あなた達はロシア人共を撃退すると。そのあとは櫛家が全てをいただく」
「財宝が目的か」
「そうよ。もう換金されちゃったと思うけど、ピンクダイヤモンドはあるはず。それがあれば、わたくしは八咫烏のトップになれる……!」
なんてことだ。
櫛家が八咫烏と繋がっていたとは。
「北上さん、知っていたのか?」
「いえ、知りませんでした。申し訳ありません」
「そうか、ならいい」
つまり、ヴァレンティンにとどめを刺したのは万由里さんだ。普段はか弱い演技をして、実はかなりの軍事訓練を受けていたんだな。
「ヴァレンティンは残念だったわね」
「やっぱり、万由里さんが撃ったんだな」
「ええ。彼は八咫烏と協力していたけど……それは違う。八咫烏が利用してやったのよ。あれは所詮、駒にすぎなかった」
なんて人だ。
敵とはいえそこまで言うのか。
「な、なによ……。八咫烏って」
リコたちは呆然としていた。
俺は説明した。
あのロシア人たちと八咫烏は繋がっていたことを。
すると、みんな絶望していた。
「え、なにそれ。じゃあ、櫛家は敵ってこと!?」
桃枝が叫ぶ。
ああ、その通りだと俺はうなずく。
「……残念だが、万由里さんは敵だ」
「そんな! あんなに支援してくれたのに!」
ついには泣き叫ぶ桃枝。
そういえば、桃枝は万由里さんと仲が良かったな。
裏切られ、傷ついたんだろう。
なんてことをしてくれたんだ。
天音は出血で気絶し、その様子を艾が看ている。
千年世は隙を伺っているが、動けずにいた。
俺か北上さんが動くしかない。
万由里さんを止めるんだ……。
アイコンタクトを北上さんにするが――“無謀”だと返された。……無理か。
「兄様、申し訳ありません」
「自分たち、役に立てない」
月も星も厳しそうな表情を浮かべていた。
……くそう。
なんとかしないと。
もう直ぐ脱出できると思ったのに。
八咫烏め……。
「あはははは! ざまぁないわね」
「万由里さん、今ならまだ戻れる」
「もう無理よ。早坂くん、君はね……女の子に優しすぎた。それがアダとなったのよ!」
「くっ……」
だめだ。もう以前のようなか弱い万由里さんはいない。いや、そもそもこっちが本当の彼女なんだ。
この悪魔みたいな表情をする万由里さんこそが――。
絶望かと思われたその時だった。
風を切り裂くような音がして“なにか”が万由里さんの肩に命中していた。
「きゃああああああ!? だ、誰! 誰がわたくしを撃ったの!? 自爆するわよ!!」
発狂する万由里さん。
今だ……!
俺は彼女の腰に巻かれている爆弾を取り外し、空へブン投げた。
「うおらああああああああああ!!」
そこへ『DSR-1』を向ける北上さん。いつの間にか弾を装填していたらしい。
爆弾に向けて狙撃すると、爆弾は爆発した。
凄まじい突風と熱波が襲い掛かる。
少しすると衝撃は晴れた。
「哲くん、ナイスです」
「人影のおかげだ。いったい、誰が……?」
視界が戻ると、そこには見覚えのある男が立っていた。
「よう、お前たち! 俺が来たからにはもう安心だぜ」
コイツは月も星の兄貴・雷か!
そうか、船で来てくれたんだな。
「助かりました。雷」
「役に立った、雷」
月も星から賞賛されるも、雷は妙な顔をしていた。
「おいおい、そこはお兄様~! だろ」
「「…………」」
おいおい、月も星も引いているぞ。
だけど、彼のおかげで助かったのは事実だ。
万由里さんに改めて聞こうとしたが『ドォン!』と音がして、俺は振り向いた。
「……裏切者には死を」
千年世が容赦なく銃をぶっ放していた。
相変わらずおっかない。
「千年世……万由里さんを殺したのか」
「当然の報いです。櫛家はもう味方ではありません」
「そうだな。よし、島を出るぞ」
雷の用意してくれた船へ乗り込み、ついに『神造島』を脱出した。
【最終章へ続く】
ぷしゅぅっと存分に打ち上げ終えると、ヴァレンティンの体は力尽きて倒れた。
「「…………!!」」
すぐに身を隠し、狙撃手を確認。
けれど、それらしい気配は感じなかった。
かなりの遠い距離なのか。
「北上さん! これは……」
「……信じがたいことに我々仲間の方向から弾丸が飛んできました」
「なんだって!?」
ということは、千年世やリコが仕留めてくれた……?
それならそれでいいが危険すぎるぞ。
けどまぁ……助かったけどな。
嬉しくもあり、複雑でもあった。
出来れば俺の手で仕留めたいと思っていたからだ。
天音たちのいるコンクリートの壁へ向かう。
「……てっちゃん、来ちゃダメ!!」
「!? 桃枝、なにが…………え」
なんで“彼女”がみんなを人質にしているんだ。
ようやく終わったと思ったのに、なんだこれは……!
「……フフ。早坂様、いえ、早坂 哲。あなたはよくやってくれました」
「万由里さん、なぜ!!」
万由里さんは腰に爆弾をつけ、みんなに銃を向けていた。
そんな馬鹿な。
彼女はこんなことをする人じゃない。
櫛家は俺たちに援助してくれた。
仲間のはずだった。
「なぜ? あなた達は気づいてはいけないことに気づいてしまったのよ」
「まさか……『八咫烏』か……!」
にらみつけると、万由里さんは不敵に笑った。
「大正解。櫛家は八咫烏のメンバーなの。お爺様はずっとこの時を待っていらしたの。きっと、あなた達はロシア人共を撃退すると。そのあとは櫛家が全てをいただく」
「財宝が目的か」
「そうよ。もう換金されちゃったと思うけど、ピンクダイヤモンドはあるはず。それがあれば、わたくしは八咫烏のトップになれる……!」
なんてことだ。
櫛家が八咫烏と繋がっていたとは。
「北上さん、知っていたのか?」
「いえ、知りませんでした。申し訳ありません」
「そうか、ならいい」
つまり、ヴァレンティンにとどめを刺したのは万由里さんだ。普段はか弱い演技をして、実はかなりの軍事訓練を受けていたんだな。
「ヴァレンティンは残念だったわね」
「やっぱり、万由里さんが撃ったんだな」
「ええ。彼は八咫烏と協力していたけど……それは違う。八咫烏が利用してやったのよ。あれは所詮、駒にすぎなかった」
なんて人だ。
敵とはいえそこまで言うのか。
「な、なによ……。八咫烏って」
リコたちは呆然としていた。
俺は説明した。
あのロシア人たちと八咫烏は繋がっていたことを。
すると、みんな絶望していた。
「え、なにそれ。じゃあ、櫛家は敵ってこと!?」
桃枝が叫ぶ。
ああ、その通りだと俺はうなずく。
「……残念だが、万由里さんは敵だ」
「そんな! あんなに支援してくれたのに!」
ついには泣き叫ぶ桃枝。
そういえば、桃枝は万由里さんと仲が良かったな。
裏切られ、傷ついたんだろう。
なんてことをしてくれたんだ。
天音は出血で気絶し、その様子を艾が看ている。
千年世は隙を伺っているが、動けずにいた。
俺か北上さんが動くしかない。
万由里さんを止めるんだ……。
アイコンタクトを北上さんにするが――“無謀”だと返された。……無理か。
「兄様、申し訳ありません」
「自分たち、役に立てない」
月も星も厳しそうな表情を浮かべていた。
……くそう。
なんとかしないと。
もう直ぐ脱出できると思ったのに。
八咫烏め……。
「あはははは! ざまぁないわね」
「万由里さん、今ならまだ戻れる」
「もう無理よ。早坂くん、君はね……女の子に優しすぎた。それがアダとなったのよ!」
「くっ……」
だめだ。もう以前のようなか弱い万由里さんはいない。いや、そもそもこっちが本当の彼女なんだ。
この悪魔みたいな表情をする万由里さんこそが――。
絶望かと思われたその時だった。
風を切り裂くような音がして“なにか”が万由里さんの肩に命中していた。
「きゃああああああ!? だ、誰! 誰がわたくしを撃ったの!? 自爆するわよ!!」
発狂する万由里さん。
今だ……!
俺は彼女の腰に巻かれている爆弾を取り外し、空へブン投げた。
「うおらああああああああああ!!」
そこへ『DSR-1』を向ける北上さん。いつの間にか弾を装填していたらしい。
爆弾に向けて狙撃すると、爆弾は爆発した。
凄まじい突風と熱波が襲い掛かる。
少しすると衝撃は晴れた。
「哲くん、ナイスです」
「人影のおかげだ。いったい、誰が……?」
視界が戻ると、そこには見覚えのある男が立っていた。
「よう、お前たち! 俺が来たからにはもう安心だぜ」
コイツは月も星の兄貴・雷か!
そうか、船で来てくれたんだな。
「助かりました。雷」
「役に立った、雷」
月も星から賞賛されるも、雷は妙な顔をしていた。
「おいおい、そこはお兄様~! だろ」
「「…………」」
おいおい、月も星も引いているぞ。
だけど、彼のおかげで助かったのは事実だ。
万由里さんに改めて聞こうとしたが『ドォン!』と音がして、俺は振り向いた。
「……裏切者には死を」
千年世が容赦なく銃をぶっ放していた。
相変わらずおっかない。
「千年世……万由里さんを殺したのか」
「当然の報いです。櫛家はもう味方ではありません」
「そうだな。よし、島を出るぞ」
雷の用意してくれた船へ乗り込み、ついに『神造島』を脱出した。
【最終章へ続く】
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