クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

文字の大きさ
215 / 287

闇医者の病院にて

しおりを挟む
 ホテルから片道十五分ほどで病院に到着した。
 病院といっても、闇医者の類であるから“表”は【居酒屋】という看板を出していた。ここが本当は病院だなんて思わないよな。

 正面から入れば居酒屋だが、裏にある地下室へ向かうとそこは病院だ。

 扉に近づけば自動でロックが解除された。
 どうやら向こうが気づいて開けてくれたようだな。

「相変わらず凄い場所にあるな」
「天音さんのお父さんの知り合いのようです」

 北上さんの後をついていくと細い通路が見えた。そこを下へ降りていく。
 しばらくして広い部屋に到着。

 ベッドがいくつもあり、そこには天音たちがいた。


「見舞いにきたぞ、天音」
「早坂くん! 来てくれたんだ……!」


 目尻に涙を溜め、喜ぶ天音。良かった、無事だな。

 千年世、リコ、よもぎルナヒカリ、雷……みんな元気そうで良かった。


「ケガの具合はどうだ?」
「おかげさまで良くなってきた。遠見先生があと二ヵ月で退院できるって」

「マジか。思ったよりは早いな」


 遠見先生は、この病院の闇医者。普通ならできない治療を請け負っているらしい。もちろん、費用が掛かるが。
 幸いにも知り合いということで金額はまけてくれた。

 天音は左腕に重症を負ったが、遠見先生の力で死は免れた。俺は心の底から安堵した。……良かった、本当に。

 ホッとしていると千年世が俺の右腕を引っ張った。

「早坂くん。わ、わたしも……足をケガしました」
「千年世、大丈夫か?」
「はいっ、おかげさまで歩けるようになりました」

 微笑む千年世は可愛かった。
 照れていると、桃枝、北上さんにリコや艾、ルナヒカリ、雷……まで俺に殺到。

 ――って、雷、男のお前はいらん!


「てか、雷。まともに話すのはこれが初めてだな」
「そうだったな。改めて自己紹介しよう。俺はルナヒカリの『兄貴』で織田おだ いかづちだ。宝島事件のことは知っている。全部聞いた」

「味方、なんだよな」
「あたりまえだ。でなければ、とっくに裏切っている。ルナヒカリがお前を信用しているんだ。俺も信じる」

 雷は沖縄でルナヒカリをサポートし、神造島でも全力で俺たちを支えてくれた。おかげで島を脱出できたし、裏のMVPである。

「ありがとう、雷。改めて礼を言う」
「いや、いいさ。妹たちのことを守ってくれた恩がある。こちらこそ、ありがとう」

 頭を深々と下げる雷。意外や礼儀正しいヤツだ。良いやつだな。


 ◆


『――次に、明日の天気は――』


 テレビにはこれといった事件の報道はない。
 鹿児島湾のことは、まったくといって報道されていなかった。神造島での出来事はまるで、なかったことにされているような強い圧力を感じた。

 あんなド派手に戦ったというのに、日本はいつものように平和そのものだった。
 いくらなんでも平和ボケしすぎだ。


「これが八咫烏の権力ということでしょう」
「ん、おおう。北上さん、いつの間に」


 居酒屋の方でテレビを見ていた俺。北上さんが隣に座って水を注文していた。


「次に彼らが取る行動はひとつ。直接、あたしたちを叩く」
「マジか」
「ええ。もう時間の問題でしょう。我々が日本を脱出すると感づいているはず」

 まるで向こうに軍師でもいるかのような言い草だ。俺たちの行動を読み取っているとでもいうのか。超能力とかじゃあるまいし。

 それとも、エドガー・ケイシーのようなアカシックレコードにアクセスできる預言者か……!?
 いやいや、非科学的すぎるって。
 考えすぎだな、俺。

「まさか、そんなはずはないだろう」
「残念ですが、彼らは陰陽道に通じているんです」
「陰陽道って、あの陰陽?」
「そうです。呪術や占術のプロです」
「そんなオカルトすぎるって……」

「なぜなら、八咫烏の正式名称は『八咫烏陰陽道』なのですから」


 俺はそれを聞いてゾッとした。
 調べたらマジでそう書いてあった……。

 だとしても、俺たちが対馬に潜伏しているとか特定できるわけないよな。もし、超人的な力を持つヤツがいるのなら、それに対抗する術はないぞ。


「日本に本当の自由なんてあるのかなー」

 俺の隣の席に桃枝が座った。
 北上さんと桃枝に挟まれた。


「ないだろうな。税金や物価ばかり上がって暮らしは良くならない。少子化にも拍車がかかっている」
「賃金も上がってないよね」


 桃枝の言う通りだ。どのみち俺は普通に働くとか、そういうビジョンが見えなかった。今が理想的ではある。
 大切なみんなと共に生活が出来るのなら、どこへだって行く。

 けど、今は出来る限りは国内を転々とする。可能な限りまでだ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...