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女刑事に逮捕されちゃった!?
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居酒屋のすぐ近くには海が広がる。
天音の様子が気になるが、心配しすぎるのも彼女の負担になる。今は一刻も早く治るよう祈るだけだ。
海をぼうっと眺めていると見知らぬ人から声を掛けられた。
「あの、すみません」
振り向くとそこには黒髪短髪の可愛らしい小柄な女性が立っていた。スーツでびしっと決め、大人っぽさもあった。しかし、その表情は確実に只ならぬ雰囲気を持ち合わせていた。……これは警戒すべきだな。
俺の経験則と嗅覚がそう感じさせた。
この人はきっと。
――その通り、彼女は警察手帳を俺に向けた。
刑事か……!
名前は『古森 碧海』というらしい。
「な、なんでしょう。俺はただの観光客ですが」
「そうでしたか。少しお話を聞かせてほしくて」
「話せることなんてないですよ。対馬に来たばかりですし」
「あなた、中道という男が轢死された現場にいましたよね。可愛らしいお嬢さんと一緒に」
……そうか、中道の死亡したホテル前の道路。あそこに駆けつけた刑事だったのか。あの事件のあと、俺たちは早々に立ち去っていた。想定を超える警察が駆けつけてきたからだ。
対馬は思った以上に大きい島だし、対馬警察署も立派なんだよな。あとで調べて分かった。
「たまたまです。俺は目撃者ではありません」
「嘘をつきましたね」
「え……」
「早坂さん。あなたはホテルのロビーで中道とトラブルになっていたそうですね」
クソッ、さすがにホテルマンに聞き込みをしていたか。刑事なら当然の仕事か。しかしこれ以上は踏み込ませたくない。近くには天音たちがいるから余計に。
「あの大男が因縁を吹っかけてきたんですよ。こっちは被害者です」
「なるほど、分かりました。そういうことにしておきます」
納得はしてなさそうだった。多分俺から情報を引き出すために話をどんどん進めるつもりらしい。だが、俺はそこで背を向けた。
「刑事さん。俺、用事があるので――」
歩こうとすると『ガシャッ』と腕に金属音がして、俺は一瞬だけ思考が止まった。……お、おい。この刑事、まさか。
右腕をあげようとすると『ジャラジャラ』と音がした。
な、なんてこった。
手錠されてるし……!
なにしやがるんだこの刑事。俺は無実だぞ。
「任意同行です」
「どこが!? 強制じゃないですか。これ、違法では……」
「任意同行です」
「聞けって。俺になんの疑いが?」
「署まで来てもらいますよ」
「弁護士が来てからでないと話しませんよ」
なんて常套句を言ってみた。いや、一度言ってみたかっただけだった。
「黙秘権ですか。そんなの私の前では無意味ですよ」
自信満々だなぁ。てか、可愛い顔しておっかないというか容赦ないな。これで逮捕はいくらなんでも理不尽だ。憲法違反だって。
どうしようかと立ち尽くしていると、北上さんが駆けつけてくれた。
「哲くん、どうしたのですか。……む」
刑事に気づき、北上さんは表情を硬くした。めっちゃ警戒している。――ので、俺はアイコンタクトで状況を知らせた。
すると北上さんは気づいた。
よし、助かるぞ……と、思ったが刑事が前に出た。
「あなたは?」
「あたしは彼の彼女です。哲くんが何かしましたか?」
「納得しました。ホテルの現場にいましたよね」
「ええ、まあ。それが何か」
「あなたにも任意同行を求めます」
一瞬、静かな時間が流れた。
北上さんと刑事さんの間で火花が散っているように見えた。……な、なんか怖いぞ。
「任意同行も逮捕もできません。なぜなら――」
なにか重要なところを刑事さんの耳元でささやいていた。なんだろう? 刑事さんの顔色が変わって強張っているぞ。
「…………ッ! 失礼しました。では……」
くるっと踵を返す刑事さんは戻っていく。
え……ええッ!?
「北上さん、刑事さんにどんな魔法を吹きかけたんだ?」
「知り合いの刑事である木下の名を出したのです。彼女は分かってくれました」
あ、ああ……そういえば、北上さんには知り合いの刑事がいるんだっけ。オーハ島でお世話になったなぁ。
そうか、木下刑事の名を出したんだな。でも、それでなぜ彼女は帰ったんだろう?
天音の様子が気になるが、心配しすぎるのも彼女の負担になる。今は一刻も早く治るよう祈るだけだ。
海をぼうっと眺めていると見知らぬ人から声を掛けられた。
「あの、すみません」
振り向くとそこには黒髪短髪の可愛らしい小柄な女性が立っていた。スーツでびしっと決め、大人っぽさもあった。しかし、その表情は確実に只ならぬ雰囲気を持ち合わせていた。……これは警戒すべきだな。
俺の経験則と嗅覚がそう感じさせた。
この人はきっと。
――その通り、彼女は警察手帳を俺に向けた。
刑事か……!
名前は『古森 碧海』というらしい。
「な、なんでしょう。俺はただの観光客ですが」
「そうでしたか。少しお話を聞かせてほしくて」
「話せることなんてないですよ。対馬に来たばかりですし」
「あなた、中道という男が轢死された現場にいましたよね。可愛らしいお嬢さんと一緒に」
……そうか、中道の死亡したホテル前の道路。あそこに駆けつけた刑事だったのか。あの事件のあと、俺たちは早々に立ち去っていた。想定を超える警察が駆けつけてきたからだ。
対馬は思った以上に大きい島だし、対馬警察署も立派なんだよな。あとで調べて分かった。
「たまたまです。俺は目撃者ではありません」
「嘘をつきましたね」
「え……」
「早坂さん。あなたはホテルのロビーで中道とトラブルになっていたそうですね」
クソッ、さすがにホテルマンに聞き込みをしていたか。刑事なら当然の仕事か。しかしこれ以上は踏み込ませたくない。近くには天音たちがいるから余計に。
「あの大男が因縁を吹っかけてきたんですよ。こっちは被害者です」
「なるほど、分かりました。そういうことにしておきます」
納得はしてなさそうだった。多分俺から情報を引き出すために話をどんどん進めるつもりらしい。だが、俺はそこで背を向けた。
「刑事さん。俺、用事があるので――」
歩こうとすると『ガシャッ』と腕に金属音がして、俺は一瞬だけ思考が止まった。……お、おい。この刑事、まさか。
右腕をあげようとすると『ジャラジャラ』と音がした。
な、なんてこった。
手錠されてるし……!
なにしやがるんだこの刑事。俺は無実だぞ。
「任意同行です」
「どこが!? 強制じゃないですか。これ、違法では……」
「任意同行です」
「聞けって。俺になんの疑いが?」
「署まで来てもらいますよ」
「弁護士が来てからでないと話しませんよ」
なんて常套句を言ってみた。いや、一度言ってみたかっただけだった。
「黙秘権ですか。そんなの私の前では無意味ですよ」
自信満々だなぁ。てか、可愛い顔しておっかないというか容赦ないな。これで逮捕はいくらなんでも理不尽だ。憲法違反だって。
どうしようかと立ち尽くしていると、北上さんが駆けつけてくれた。
「哲くん、どうしたのですか。……む」
刑事に気づき、北上さんは表情を硬くした。めっちゃ警戒している。――ので、俺はアイコンタクトで状況を知らせた。
すると北上さんは気づいた。
よし、助かるぞ……と、思ったが刑事が前に出た。
「あなたは?」
「あたしは彼の彼女です。哲くんが何かしましたか?」
「納得しました。ホテルの現場にいましたよね」
「ええ、まあ。それが何か」
「あなたにも任意同行を求めます」
一瞬、静かな時間が流れた。
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「任意同行も逮捕もできません。なぜなら――」
なにか重要なところを刑事さんの耳元でささやいていた。なんだろう? 刑事さんの顔色が変わって強張っているぞ。
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え……ええッ!?
「北上さん、刑事さんにどんな魔法を吹きかけたんだ?」
「知り合いの刑事である木下の名を出したのです。彼女は分かってくれました」
あ、ああ……そういえば、北上さんには知り合いの刑事がいるんだっけ。オーハ島でお世話になったなぁ。
そうか、木下刑事の名を出したんだな。でも、それでなぜ彼女は帰ったんだろう?
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