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本当は独り占めしたい
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漁船は九州を目指して真っ直ぐ進んでいるようだった。
しばらく掛かるということで、荒波に揉まれ無駄に揺れまくる漁船の中で座って待つしかなかった。
「船酔いキツイな」
「酔い止めをどうぞ、哲くん」
ポケットから薬を取り出す北上さん。水の入った軍用水筒を受け取り、俺は酔い止めを飲んだ。少しだけ気分が良くなったような気がする。
「助かったよ」
「いえいえ。あたしの飲みかけの水筒は遠慮なく飲み干してください」
こ、これ北上さんの飲みかけだったのかよっ。嬉しいけど、天音がすっごく膨れているんだよなぁ……。
「ねえ、早坂くん。わたしのペットボトルの水も飲んでいいからねっ」
まるで北上さんに対抗するかのように水の入ったペットボトルを俺に寄越す天音。これも飲みかけじゃないか……!
「ありがとう、めっちゃ嬉しいよ」
「あ……あとね、疲れているなら……わ、わ、わたしの胸とか揉んでもいいからねッ」
めちゃくちゃ恥ずかしそうに耳打ちしてくる天音。無茶しすぎだろう……! ありがたすぎる提案だが、みんなの前で天音の胸を揉むとかヘンタイすぎるって。
多分、天音は北上さんに対抗しているんだろうな。なんて可愛いヤツ。そんな天音の気持ちがたまらなく嬉しい。
しかし、北上さんは強かった。
「あっ……漁船が揺れて哲くんに抱きついちゃいました。ごめんなさい」
な、なんてわざとらしい!
漁船は少しだけ揺れたが、人が倒れるほどではなかったぞ。いやしかし、俺の右頬が天国なことになっていた。こ、これは間違いなく北上さんの豊満すぎる胸。
このままでいたい気持ちもあるが、天音が俺の腕を引っ張った。
「だめ! えっちなの禁止!」
「いや、天音。君もさっき俺を誘惑したような」
「なんのことかな!?」
誤魔化した……だと。明らかに苦しすぎるが――でも、俺は北上さんと天音に挟まれているだけで十分に幸せなんだけどな。酔いも解消されてきたし。
このままでは北上さんと天音でバトルが勃発しそうだったので、俺は二人をなだめた。
「北上さん、天音はケガをしているんだ。寛容に頼むよ」
「……そうでしたね。ごめんなさい」
「分かってくれればいいんだ」
「でも」
「え……」
「恋愛は別です。確かにあたしは哲くんのハーレムを容認していますが、基本的には独り占めしたいんです」
真面目なトーンで言われ、俺はドキリとした。そうか、北上さんは実は束縛したいタイプなのかもしれないな。どちらかといえば俺もそっちなのだが、無人島生活で趣向が変わってしまった。今や大勢の女の子に囲まれるこの状況が自然となっていた。
今度は天音の方をなだめる。
「天音、まだケガが治っていないんだ。無茶するなって」
「いつまでも、みんなの足を引っ張っている場合じゃないからね。大丈夫、わたしこれでも早坂くんを思う気持ちは人一倍強いと思ってるから。つまりね、めちゃくちゃ好きなの」
天音もまた真剣な表情でそう気持ちを打ち明けた。あの、天音さん、それ嬉しすぎるんですが!
今も変わらない気持ちで俺と接してくれているとは。もちろん、俺も天音のことは大好き。ケガが完治していて、なおかつ二人きりの空間だったのなら押し倒していただろうな。
とりあえず、二人の仲を取り持つことができた。戦争にならなくてホッとした。
船は『福岡県』を目指しているようだった。
伊良部さんによれば、通常のフェリーで片道一時間なので、漁船でも同じくらいの時間には着けるだろうとのことだった。
燃料は満タンにしていたようだし、なんとか無事に到着できそうだ。
揺られること一時間ちょっと。ついに『博多港』付近に到着した。だけど、真正面から入るわけにはいかない。
俺たちはお尋ね者だろうし、港にも公安警察が張っているかもしれない。そのリスクを考えた場合、福浜海岸から降りる方がいいと判断した。
「ちょっといいかな、早坂くん」
「どうしました、伊良部さん」
「もうすぐ福浜海岸に着く。あまり近づきすぎると座礁してしまうので防波堤あたりで君たちを降ろすよ」
「分かりました。お願いします」
「ああ、あと私は同行できない。対馬へ戻る気はないが、故郷である北海道へ帰ってカフェ1号店にこもるとするよ」
どうやら、伊良部さんはいくつものカフェを経営しているようだった。対馬は三号店であり、どのみち近いうちに閉店するつもりだったらしい。それが早まっただけの話で、帰るとのことだった。
ついに海岸に到着。
防波堤に横づけしてもらい、俺たちは飛び降りていく。
「ありがとうございました、伊良部さん」
「いや、面白い経験ができた。みんな、遠見先生……お元気で!」
明るい笑顔で伊良部さんは船を操作し、海岸から離れていく。北海道へ行く機会があれば改めてお礼を言いたいところだ。
だが、今は『京都』へ向かわねば!
福岡のどこかで車を入手、移動する。さて、どうしようか……?
しばらく掛かるということで、荒波に揉まれ無駄に揺れまくる漁船の中で座って待つしかなかった。
「船酔いキツイな」
「酔い止めをどうぞ、哲くん」
ポケットから薬を取り出す北上さん。水の入った軍用水筒を受け取り、俺は酔い止めを飲んだ。少しだけ気分が良くなったような気がする。
「助かったよ」
「いえいえ。あたしの飲みかけの水筒は遠慮なく飲み干してください」
こ、これ北上さんの飲みかけだったのかよっ。嬉しいけど、天音がすっごく膨れているんだよなぁ……。
「ねえ、早坂くん。わたしのペットボトルの水も飲んでいいからねっ」
まるで北上さんに対抗するかのように水の入ったペットボトルを俺に寄越す天音。これも飲みかけじゃないか……!
「ありがとう、めっちゃ嬉しいよ」
「あ……あとね、疲れているなら……わ、わ、わたしの胸とか揉んでもいいからねッ」
めちゃくちゃ恥ずかしそうに耳打ちしてくる天音。無茶しすぎだろう……! ありがたすぎる提案だが、みんなの前で天音の胸を揉むとかヘンタイすぎるって。
多分、天音は北上さんに対抗しているんだろうな。なんて可愛いヤツ。そんな天音の気持ちがたまらなく嬉しい。
しかし、北上さんは強かった。
「あっ……漁船が揺れて哲くんに抱きついちゃいました。ごめんなさい」
な、なんてわざとらしい!
漁船は少しだけ揺れたが、人が倒れるほどではなかったぞ。いやしかし、俺の右頬が天国なことになっていた。こ、これは間違いなく北上さんの豊満すぎる胸。
このままでいたい気持ちもあるが、天音が俺の腕を引っ張った。
「だめ! えっちなの禁止!」
「いや、天音。君もさっき俺を誘惑したような」
「なんのことかな!?」
誤魔化した……だと。明らかに苦しすぎるが――でも、俺は北上さんと天音に挟まれているだけで十分に幸せなんだけどな。酔いも解消されてきたし。
このままでは北上さんと天音でバトルが勃発しそうだったので、俺は二人をなだめた。
「北上さん、天音はケガをしているんだ。寛容に頼むよ」
「……そうでしたね。ごめんなさい」
「分かってくれればいいんだ」
「でも」
「え……」
「恋愛は別です。確かにあたしは哲くんのハーレムを容認していますが、基本的には独り占めしたいんです」
真面目なトーンで言われ、俺はドキリとした。そうか、北上さんは実は束縛したいタイプなのかもしれないな。どちらかといえば俺もそっちなのだが、無人島生活で趣向が変わってしまった。今や大勢の女の子に囲まれるこの状況が自然となっていた。
今度は天音の方をなだめる。
「天音、まだケガが治っていないんだ。無茶するなって」
「いつまでも、みんなの足を引っ張っている場合じゃないからね。大丈夫、わたしこれでも早坂くんを思う気持ちは人一倍強いと思ってるから。つまりね、めちゃくちゃ好きなの」
天音もまた真剣な表情でそう気持ちを打ち明けた。あの、天音さん、それ嬉しすぎるんですが!
今も変わらない気持ちで俺と接してくれているとは。もちろん、俺も天音のことは大好き。ケガが完治していて、なおかつ二人きりの空間だったのなら押し倒していただろうな。
とりあえず、二人の仲を取り持つことができた。戦争にならなくてホッとした。
船は『福岡県』を目指しているようだった。
伊良部さんによれば、通常のフェリーで片道一時間なので、漁船でも同じくらいの時間には着けるだろうとのことだった。
燃料は満タンにしていたようだし、なんとか無事に到着できそうだ。
揺られること一時間ちょっと。ついに『博多港』付近に到着した。だけど、真正面から入るわけにはいかない。
俺たちはお尋ね者だろうし、港にも公安警察が張っているかもしれない。そのリスクを考えた場合、福浜海岸から降りる方がいいと判断した。
「ちょっといいかな、早坂くん」
「どうしました、伊良部さん」
「もうすぐ福浜海岸に着く。あまり近づきすぎると座礁してしまうので防波堤あたりで君たちを降ろすよ」
「分かりました。お願いします」
「ああ、あと私は同行できない。対馬へ戻る気はないが、故郷である北海道へ帰ってカフェ1号店にこもるとするよ」
どうやら、伊良部さんはいくつものカフェを経営しているようだった。対馬は三号店であり、どのみち近いうちに閉店するつもりだったらしい。それが早まっただけの話で、帰るとのことだった。
ついに海岸に到着。
防波堤に横づけしてもらい、俺たちは飛び降りていく。
「ありがとうございました、伊良部さん」
「いや、面白い経験ができた。みんな、遠見先生……お元気で!」
明るい笑顔で伊良部さんは船を操作し、海岸から離れていく。北海道へ行く機会があれば改めてお礼を言いたいところだ。
だが、今は『京都』へ向かわねば!
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