クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

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ホテルはいつだって危険地帯

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 体がなまりのように重い。
 最近いろいろあったから疲れているのかな。――いや、まてよ。
 自分の体が動かせないほど重いってヤバすぎだろう。

 まぶたを開け、状況を確認すると……ルナヒカリが俺の腕にくっついていた。その胸に挟むようにして。


「うぉッ!?」


 妙に柔らかいと思ったら、そういうことか。
 二人ともぐっすり眠っている。これでは身動きができないな。せめて時間を確認したい。
 そういえば、スマートウォッチをしていたのを忘れていた。
 ほんの少しだけ腕を動かすと時刻が表示された。

 えっと今は【19:34】となっていた。
 あれから結構寝ちまったようだ。
 通知も入っていて、天音や北上さんからメッセージが入っているようだった。確認したいが、これでは難しい。

 二人を起こすのも悪い。
 もう少しだけ待ってみるか。


 ◆


 博多の美しい夜景をぼうっと眺める俺。
 あれから月も星も目を覚まし、部屋に備え付けられている風呂へ行ってしまった。二人だと狭いような気もするが、大丈夫と言うので止めなかった。

 あと一時間もすれば“貸切バス”が来てくれる。それに乗り、京都へ向かい秘密結社『八咫烏』のことを調べる予定だ。
 安全に日本を脱出するには、まずは敵を知らねば。

 それまではのんびり過ごそう。


『……コンコン』


 扉をノックする音がして、俺は振り向いた。天音か北上さんかな。それか他のメンバーか。
 警戒することなく俺は扉を開け――やっべッ!

 突然『ドゥン』と音がして俺は回避した。直後、扉の向こうから弾丸が貫通し、右頬をかすめた。
 サイレンサー付きの銃で撃たれたようだった。これは“敵”だ。


「どうしたのですか、兄様」
「騒がしいですね~」


 なにも知らない月と星がバスタオル姿で現れた。


「こっちに来るな! 敵だ。敵が襲ってきた!」

「「え……」」


 俺は身を低くして敵の銃撃をやり過ごす。その間にも銃弾が何発も撃たれた。
 途中で撃ち終わったのか沈黙が続いた。今がチャンスか。
 護身用に持っていた『閃光手榴弾スタングレネード』のピンを抜き、扉をほんの少しあけてブン投げた。

 ズドンと閃光が上がり、瞬間に俺は突撃。
 廊下に出てその人物を取り押さえた。


「暗殺者か!!」

「…………ぐッ」


 そこにいたのは痩せ細った男だった。なんだ、この黒装束の見るからに怪しいヤツ。その昔、白装束の宗教団体が話題になったが……その類か。


「何者だ、お前」

「……、………………かは」


 しかし男は、白目を剥き泡を吹いて倒れた。……死んだ、のか。

 間違いない。このアーモンドのような臭いは『青酸カリ』か。コイツ、自らの命を絶ったのかよ。なんて野郎だ。

 男の体を少し調べてみると左腕には『八咫烏』のタトゥーがあった。……おい、まさか。この男は関係者なのか。黒装束もカラスをイメージしているということか。

 どちらにせよ、遺体をこのままにしておけない。

 俺の部屋に引きずっていく。


「……その方は?」


 星が青い顔をしながらも聞いてきた。


「分からんが、タトゥーから察するに八咫烏に雇われた暗殺者かもしれんな」
「そんな……」

 俺たちを常に監視しているようだからな。ちまちまと追い詰めるつもりか。回りくどいというか――いや、組織が世間に露呈するわけにはいかないから、こんな風なやり方なのかもしれない。


 すぐに北上さんたちに連絡を取った。

 みんな俺の部屋に集合した。


「……敵がこんなところまで」


 暗殺者を徹底的に調べる北上さん。その動作に迷いがない。さすがプロだな。


「どう思う?」
「服毒による死亡。……青酸カリですか」
「さすがだな」
「いえ。しかし、所持品がなにもないとは。気になる点としてはタトゥーだけですね」
「やっぱり、八咫烏かな」
「恐らく。このままホテルに滞在していると危険でしょう。そろそろ出発ですよね」
「ああ、間もなくだ」

 ちと早いが出発することにした。このままホテルにいれば狙われるだろう。

「そういえば、早坂くん」
「どうした、天音」
「以前にもこんなことがあったね」
「そうだな。あの時はロシア人でヴァレンティンだったけどね」

 やはり、こういう場所は襲われやすいのかもしれん。無人島にいる方がいいのかな。そっちのプランも考えておくか。

 すぐにホテルを出る準備を進めた。

 荷物を持ち、一階のフロアで集合。みんな集まった。


「全員そろっています」


 千年世に確認してもらった。もうホテルに用はない。博多駅まで歩いて向かい、バスに乗り込む。そして京都へ向かう。

 ホテルを出て夜の街中を歩く。
 この辺りはかなり発展しているので、人の往来が激しい。
 周囲に警戒しつつ駅へ。


「…………」
「どうした、北上さん」

「つけられているようですね」
「マジか」
「あの男以外にも暗殺者がいたということでしょう」


 背後に二つの気配。こんな場所で銃撃はしてこないだろうが、危険なことに変わりはない。対処せねば。


「分かった。俺と北上さんで戦う。他のみんなは先に駅へ向かってもらう」
「え……でも」
「大丈夫だ、天音。千年世とリコが守ってくれる」
「必ず来てね」
「了解」


 天音たちを先に行かせた。

 ……さて、相手は八咫烏の暗殺者なのか……?
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