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いつも以上に甘えてくる天音さん
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走って、走って、走りまくった。
狙撃兵にも狙われるかもしれないから、さっさと人混みに紛れた方がいい。地面をひたすら蹴って、息も荒くなった頃。ようやく博多駅が見えてきた。
「駅についた。バスはどこだ!?」
「あ……場所までは。すぐに電話します!」
焦りながらも北上さんはスマホを胸の谷間から取り出す。またそんなところから……! いや、今は電話の方が重要だ。
スマホを耳にあてる北上さん。どうやら誰かが直ぐに出たようだ。
『……C』
「分かりました、C乗り場ですね!」
今現在いるところが『A』だから、もっと奥か!
まずいぞ、あと2分しかねえ。このままでは置いて行かれてしまうぞ。
呼吸を忘れ、真っ直ぐ進む。
「……はぁ、はぁ」
「哲くん、息が上がっていますね」
「すまん、トレーニングを怠った。てか、北上さんは余裕ありすぎだろッ」
「鍛え方が違いますからね。それよりもうあと1分しかありません。飛ばしますよ」
ずびゅーんと加速する北上さん。うぉい! めっちゃ速いな! どんどん差をつけられ、俺はぼっちになりかけた。まずいまずいまずい。
俺だけ博多に取り残されるとか笑えんぞ。
しかし、あと30秒しかない。
バスは見えた。多分あれだ! 20秒。
扉がまだ空いている。残り10秒。
北上さんが先に乗り込んでいた。間に合ったな。だが、俺が間に合っていないッ!
残り5秒。
あの扉に足をつけられれば――『プシュー』と音がなっていた。やべえ、扉が閉まるぅ!? ちょ、誰か止めてくれよ!!
残り3秒。
おい、ふざけんな! 扉が閉まりかけているじゃねえか!
残り2秒。
バスの運転手は無慈悲なのか!
こっちは高い金払っているんだぞ!!
いや、けど普通の高速バスとかもサービスエリアで休憩時間を過ぎると普通に置いて行かれるようだからな。向こうも仕事で時間厳守だから仕方ない。
ならば、間に合えばいいッ。
残り1秒。
「俺は、諦めねええええええッ!!」
…………ガシャっと音がした。
あぁ…………。
間に合わなかった。
扉が完全に閉まり、バスは動こうとしていた。みんなが俺の名前を叫んでいるように聞こえたが、今の俺は今後どうするべきかで頭がいっぱいだった。
なんてこった。間に合わなかったなんて――――。
「なにしているんですか、哲くん」
「んえ? あれ、北上さん」
「ぼうっとしていないでバスの中へ」
「でも時間厳守では?」
「貸切バスですし、それにバスの運転手を買収しましたので大丈夫です」
「な、なんだってー!?」
普通にバスに乗れた。って、最初からそれを言ってくれよう!? さっき走りまくった意味なんだったんだ……!
目頭を押さえながら俺はバスへ乗り込んだ。
「あ、早坂くん!」
「天音、お待たせ」
「無事でよかった。大丈夫だった?」
「なんとかね。それより座ろう」
「うん、こっちきて」
俺は天音と同じ、一番後ろの席になった。北上さんが一瞬睨んできたものの“交代制だから”と言ったら納得してくれた。
……ふぅ、まずは乱れ切った息を整えたい。
深呼吸して新鮮な空気を肺に取り込んでいく。……よし、落ち着いた。
「忍者に襲われたよ」
「え、忍者だったの?」
「現代忍者だな、アレは。八咫烏の編成した組織っぽい」
「なんだか怖いね……」
「対策を講じる為に京都で情報収集をするのさ。ヤツ等のことをもっと知らないと、安心して海外へ出られない」
「それもそっか。わたし、こんなケガだから早坂くんを支えてあげられなくて辛い……」
「なに言ってんだ、天音。こうして一緒にいてくれるだけで俺は……」
自然と見つめ合う。手も握ったりしていく。後部座席でよかった。こんなところを見られたら暴動になってしまうからな。
幸い、ほとんど疲れて眠っている。
北上さんと桃枝だけは起きているが。たまにこっちをチラチラ見ているので危ないな。
「これから京都なんだね」
「サービスエリアやパーキングエリアで休憩することもあるだろうけど長い旅路になるな。寝れる内に寝ておくんだ」
「うん。早坂くんの膝の上で寝かせてくれる?」
そう言いながらも、天音は小さな頭を俺の膝の上に。いろんな意味で危険すぎる行為だが……とりあえず、大丈夫そうだ。
北上さんは桃枝とノートパソコンで何やらサイトを見ているようだし。
……今の内に天音の頭をなでておこう。
「いいよな」
「好きにしていいよ」
「分かった」
天音の髪はサラサラで触り心地抜群だな。こんな風に甘えられるとは。でも嬉しいな。こんな幸せな時間、今の内だけかもしれないからな。
京都につけばどうなるか分からない。
奴らの本拠地があるかもしれないし、奇襲も増えるかもしれない。平和な今な時間を少しでも噛みしめておく。
「可愛いな、天音」
「もっと言って」
「世界一可愛いぞ」
「……ありがと」
嬉しそうに微笑む天音は、俺のズボンのチャックに手を――って、それはさすがにマズイ。ので、止めた。
「みんないるからダメだ」
「大丈夫だよ。みんな寝てるもん」
「北上さんと桃枝は起きてるって」
「あ……そっか。残念」
気持ちは嬉しいが、人目が多すぎる。けど気持ちだけでも嬉しかった。この先、タイミングがあればいいのだが――。
しかし、片道8時間以上の大移動。まずは事故なく到着できることを祈るばかりだ。
狙撃兵にも狙われるかもしれないから、さっさと人混みに紛れた方がいい。地面をひたすら蹴って、息も荒くなった頃。ようやく博多駅が見えてきた。
「駅についた。バスはどこだ!?」
「あ……場所までは。すぐに電話します!」
焦りながらも北上さんはスマホを胸の谷間から取り出す。またそんなところから……! いや、今は電話の方が重要だ。
スマホを耳にあてる北上さん。どうやら誰かが直ぐに出たようだ。
『……C』
「分かりました、C乗り場ですね!」
今現在いるところが『A』だから、もっと奥か!
まずいぞ、あと2分しかねえ。このままでは置いて行かれてしまうぞ。
呼吸を忘れ、真っ直ぐ進む。
「……はぁ、はぁ」
「哲くん、息が上がっていますね」
「すまん、トレーニングを怠った。てか、北上さんは余裕ありすぎだろッ」
「鍛え方が違いますからね。それよりもうあと1分しかありません。飛ばしますよ」
ずびゅーんと加速する北上さん。うぉい! めっちゃ速いな! どんどん差をつけられ、俺はぼっちになりかけた。まずいまずいまずい。
俺だけ博多に取り残されるとか笑えんぞ。
しかし、あと30秒しかない。
バスは見えた。多分あれだ! 20秒。
扉がまだ空いている。残り10秒。
北上さんが先に乗り込んでいた。間に合ったな。だが、俺が間に合っていないッ!
残り5秒。
あの扉に足をつけられれば――『プシュー』と音がなっていた。やべえ、扉が閉まるぅ!? ちょ、誰か止めてくれよ!!
残り3秒。
おい、ふざけんな! 扉が閉まりかけているじゃねえか!
残り2秒。
バスの運転手は無慈悲なのか!
こっちは高い金払っているんだぞ!!
いや、けど普通の高速バスとかもサービスエリアで休憩時間を過ぎると普通に置いて行かれるようだからな。向こうも仕事で時間厳守だから仕方ない。
ならば、間に合えばいいッ。
残り1秒。
「俺は、諦めねええええええッ!!」
…………ガシャっと音がした。
あぁ…………。
間に合わなかった。
扉が完全に閉まり、バスは動こうとしていた。みんなが俺の名前を叫んでいるように聞こえたが、今の俺は今後どうするべきかで頭がいっぱいだった。
なんてこった。間に合わなかったなんて――――。
「なにしているんですか、哲くん」
「んえ? あれ、北上さん」
「ぼうっとしていないでバスの中へ」
「でも時間厳守では?」
「貸切バスですし、それにバスの運転手を買収しましたので大丈夫です」
「な、なんだってー!?」
普通にバスに乗れた。って、最初からそれを言ってくれよう!? さっき走りまくった意味なんだったんだ……!
目頭を押さえながら俺はバスへ乗り込んだ。
「あ、早坂くん!」
「天音、お待たせ」
「無事でよかった。大丈夫だった?」
「なんとかね。それより座ろう」
「うん、こっちきて」
俺は天音と同じ、一番後ろの席になった。北上さんが一瞬睨んできたものの“交代制だから”と言ったら納得してくれた。
……ふぅ、まずは乱れ切った息を整えたい。
深呼吸して新鮮な空気を肺に取り込んでいく。……よし、落ち着いた。
「忍者に襲われたよ」
「え、忍者だったの?」
「現代忍者だな、アレは。八咫烏の編成した組織っぽい」
「なんだか怖いね……」
「対策を講じる為に京都で情報収集をするのさ。ヤツ等のことをもっと知らないと、安心して海外へ出られない」
「それもそっか。わたし、こんなケガだから早坂くんを支えてあげられなくて辛い……」
「なに言ってんだ、天音。こうして一緒にいてくれるだけで俺は……」
自然と見つめ合う。手も握ったりしていく。後部座席でよかった。こんなところを見られたら暴動になってしまうからな。
幸い、ほとんど疲れて眠っている。
北上さんと桃枝だけは起きているが。たまにこっちをチラチラ見ているので危ないな。
「これから京都なんだね」
「サービスエリアやパーキングエリアで休憩することもあるだろうけど長い旅路になるな。寝れる内に寝ておくんだ」
「うん。早坂くんの膝の上で寝かせてくれる?」
そう言いながらも、天音は小さな頭を俺の膝の上に。いろんな意味で危険すぎる行為だが……とりあえず、大丈夫そうだ。
北上さんは桃枝とノートパソコンで何やらサイトを見ているようだし。
……今の内に天音の頭をなでておこう。
「いいよな」
「好きにしていいよ」
「分かった」
天音の髪はサラサラで触り心地抜群だな。こんな風に甘えられるとは。でも嬉しいな。こんな幸せな時間、今の内だけかもしれないからな。
京都につけばどうなるか分からない。
奴らの本拠地があるかもしれないし、奇襲も増えるかもしれない。平和な今な時間を少しでも噛みしめておく。
「可愛いな、天音」
「もっと言って」
「世界一可愛いぞ」
「……ありがと」
嬉しそうに微笑む天音は、俺のズボンのチャックに手を――って、それはさすがにマズイ。ので、止めた。
「みんないるからダメだ」
「大丈夫だよ。みんな寝てるもん」
「北上さんと桃枝は起きてるって」
「あ……そっか。残念」
気持ちは嬉しいが、人目が多すぎる。けど気持ちだけでも嬉しかった。この先、タイミングがあればいいのだが――。
しかし、片道8時間以上の大移動。まずは事故なく到着できることを祈るばかりだ。
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