クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

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種子島、上陸

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 先行して俺は入水。
 幸い、それほど冷たくはない。これなら低体温床は避けられる。

 波も穏やかで流される心配はなさそうだ。
 あとは、天音が心配だが――。

「……こっち見ないでね」

 と、天音は頬を赤らめて恥ずかしそうに言った。けれど、見ないわけにもいかない。気づいたら流されていたとかヤバいからな。

「悪い、天音。定期的に振り向くぞ」
「う、うぅ……仕方ないよね」

「何度か裸の付き合いをしているだろう。気にするなって」
「もぉ~…」

 観念したのか天音は、泳ぎ始めた。さすがに訓練しただけあって上手く前へ進んでいる。
 北上教官によるガチの特殊部隊の技術を学んだからな。

 クロールを続け、種子島を目指していく。

 途中で数秒の休憩も挟みながら前進。
 たまに振り向いて天音や古森刑事……おまけに岩崎の様子も伺う。全員、今のところ流されることなく来れている。

 天候や波に恵まれたな。

 しかも、距離もそれほど離れていないことも幸いした。

 あとは気合と根性で泳ぎ切るだけ。


「よし、天音。種子島が見えてきたぞ」
「あれが……」

「種子島宇宙センターも見えてきた。ここからでも見えるとはな」
「JAXAって言うんだっけ」

「そそ。宇宙航空研究開発機構だ。アメリカのNASAみたいなものさ」
「へえ~! 早坂くん、物知りだね」

「宇宙飛行士に憧れていた子供時代もあった」
「ふぅん、可愛いね」


 純粋なガキの頃、一度くらいは夢見ることがあった。だが、気づけば夢なんて現実に変わっていた。進学か就職という地獄の選択肢が目の前にあった。
 俺程度では、よくて工場の社員ってところかな。

 けど今は違う。
 仲間に恵まれ、使い切れないほどの大金を得た。もう働く必要もないし、こうして冒険している方が数百倍楽しい。いろいろリスクも高いけど。


 必死こいて泳ぐこと一時間。
 ようやく種子島の前に来た。あと少しだ。あと少し踏ん張れば上陸できるッ!


「……つ、疲れた」
「大丈夫か、天音。休むか?」

「ううん。日が暮れちゃうし、急ごう」
「そうだな、暗くなったら大変だ」


 若干だが日が傾き始めていたし、波も強くなっていた。このまま海に留まると流されて、下手すりゃ溺死だ。それだけは回避したい。

 それにしても、古森刑事は凄いな。目隠しした状態の岩崎を抱えながら泳いでいる。俺たちについてきてるし……あの人は本当に刑事なのか?


 いよいよ陸が見えてきた。
 広大な砂浜だ。
 あそこへ上がれば、もう安心だ。


「は、早坂くん…………」


 ぽちゃっと音がして、俺は振り向いた。

 天音が海の中に落ちていたんだ。

 おい、マジかよ!!


 俺は直ぐに潜水して天音を探した。……いた、近くに!

 すぐに向かい、俺は天音の体を支えて引き上げていく。


 危うく海の底に落ちるところだったぞ。
 なんとか海上に出て、俺はそのまま浜へ。

 半裸の天音を引き上げると、水を吐き出していた。よし、なんとか無事のようだな。


「大丈夫か、天音」
「…………うぅ。ごめん、足がって……」

 それで海の中へ落ちたのか。
 ああ、そうか。ずっと泳ぎっぱなしだったからな。そりゃ、足も攣る。


 天音を浜へ寝かせた。

 さて、古森刑事と岩崎だが……む?


 だいぶ距離が離れているな。たどり着けるか心配だな。
 見守っていると、今度は古森刑事が海の中へ落ちていく。


 お、おい……まさか力尽きたのか!?


 岩崎は目隠しをしたまま、浜に上がっていた。コイツ、運がいいな。――じゃなくて、古森刑事!

 仕方ないな!


「天音、俺は古森刑事を助けにいく!」
「う、うん。気をつけて」


 海へ入る前に、俺は岩崎に忠告した。


「岩崎! 俺の天音に手を出すなよ! なにかしたら、ぶっ殺す!」
「あぁ? 知るかよ。俺は先に向かうぜ。こんな場所に留まっている義理はねェ! 刑事に捕まってたまるかっ」


 と、岩崎は目隠しを外して去っていく。まあいい、勝手にどこかへ行ってくれるなら、それならそれで手間が省ける。
 次に会った時は容赦しないけどな。

 俺は今度こそ、海へ。
 今助けてやるからな!
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