クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

文字の大きさ
258 / 287

行方不明者100名以上

しおりを挟む
 観光客の大塚さんのおかげで、なんとか種子島を脱出できそうだ。
 JAXA種子島宇宙センターを見守りながら、種子島と鹿児島をつなぐフェリー乗り場へ向かった。

 バスに乗り、港まで向かう。
 当然、バス代も大塚さんに出してもらうことに。
 あとで礼をせねばな。

 それにしても『大塚』か――。

 この苗字には覚えがある。
 俺の仲間にも大塚がいる。

 大塚おおつか あんずは、宝島で一緒になった女子。ツインテールの可愛い子だ。今は、当時の後遺症が残って入院中。だから身動きができない状況だった。
 こっちの件が片付けば合流して海外へ移住する。そういう計画だった。

 もしかして、今俺たちを助けてくれている大塚さんは……姉か妹か。多分、姉かな。

 バスの中で俺は、天音に耳打ちした。

「なあ、天音」
「どうしたの?」

「大塚さんって……杏の」

「あ! そういえば、同じ苗字だよね」
「そうだろ。偶然かもしれんが」

「わたしが確かめようか」
「本当か。助かる」

 港に到着後、天音が聞いてくれることに。


 そうして一時間以上はバスに乗り――フェリー乗り場に到着。


 バスを降り、料金を精算。そして、天音は大塚さんに聞いてくれた。杏のことを。
 しばらくして大塚さんが驚きの声をあげていた。

「え、杏のことを知っているんだ」
「はい。彼女とは同じ高校だったんです」

「もしかして君たち、宝島事件の……?」

「そうなんです。杏さんは、今入院中で……」
「そっか。こんなところで会うなんてね」

 どうやら、この大塚さんは杏の『姉』のようだった。まさか、こんなところにいるとはな。天音が続けて聞くと、どうやら種子島には観光目的で来たらしい。そりゃ、そうか。
 宇宙分野に興味があるらしく、JAXAを見て回っていたと。
 いつかNASAにも行ってみたいと話した。

「あの、大塚さん」
「なにかな、早坂くん」

「杏のことなんですが……」

「ああ、大丈夫。病院の場所も知っているし、この前会ってきた」
「そうでしたか」

「気にしないで。あの宝島でのことは事故だったのだから。それに、無事に帰ってきてくれた。それだけでも嬉しいから」

 大塚さんは、ありがとうと感謝を述べた。よかった、誤解があったらどうしようかと思ったが、理解を示してくれた。

 さらに事情を話すと、つい最近に俺たちが乗った船のことが事件になっていると教えてくれた。


「――行方不明者100名以上。大きなニュースになっているね」
「そんなに……俺たちは奇跡的に助かったわけか」

「そうみたいね。よく泳いできたね」
「過去の経験が活かされました」

「それにしても凄いわ」

「で、その……救助された人たちは、俺たち以外にはいないんです?」
「当時は物凄い嵐だったからね。救助は困難を極めたそうよ。でも、それでも数名は助かったみたいだけど」

 と、大塚さんはスマホの画面を見せてくれた。そこはネットニュースが。


【沖縄に向かう船、沈没。行方不明者100名以上……救助困難か。生存者4名】


 ウソだろ。今のところ四名しか見つかっていないのか。
 なんてこった。


 北上さんたち、無事だといいんだが。
 心配していると古森さんが俺の肩を軽く叩いた。

「ねえ、早坂くん」
「ど、どうしました、古森さん」

「大塚さんにスマホを借りて警察に連絡するわ」

「え」

「大丈夫。君たちにはもう関与しない。それよりも行方不明者をなんとかしないとね……」

 古森さんは、どうやら今回のことを警察に知らせるつもりらしい。俺たちのことは伏せて。今の感じなら……信用はしても大丈夫だろうけどね。

 そうだな、これ以上は一緒にいてもお互いにメリットはないだろう。


「解った。鹿児島港に着いたら別れよう」
「ええ。もう少しだけ一緒になるけど、それまでは味方よ」

「ありがとう、古森さん」
「いいの。命の恩人だからね」


 会った当初とはまるで違う、柔らかい表情をする古森さん。こうしていれば、普通の女性にしか見えないんだけど、本当は刑事なんだよな。
 俺たちを捕まえるために仕事をしていたはずだった。

 けど、俺たちも捕まるわけにはいかない。

 無事にみんなと合流しなければ――!
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...