263 / 287
やっと会えた
しおりを挟む
「――え、それホント!?」
一度、ホテルの部屋に戻り、北上さんたちが無事かもしれないと話すと天音は喜んでいた。
「木下さんが見つけてくれた」
「え、あの刑事さんが?」
「そうだ。だから確かだ」
「よかった~…」
本当にな。
一刻も早く合流したいところだが、木下さんの準備もあるということだった。
連絡があるまでは待機だ。
一時間ほど待つとスマホに連絡が入った。
木下さんだ。
『ロビーに来てくれ』
「分かりました。直ぐに向かいます」
電話を切り、俺は仮眠を取る天音を起こした。
「準備できたようだ。行くぞ」
「ん~、ほんとぉ?」
「ああ、これでやっと合流できる」
「うん、楽しみ!」
天音と共にロビーへ向かう。
そこには木下さんの姿が。スマホを耳に当て、誰かと会話しているようだった。もしかして、北上さんか?
「さあ、行こうか。早坂くん、天音さん」
通話を切る木下さんは、ホテルの外へ向かう。俺たちもついていく。
外には黒い車が停車していた。
その車の後部座席へ乗り込み――いざ、出発!
◆
木下さんの運転する車は、鹿児島市内をぐるぐる回っていた。いつまで経っても到着する気配がない。
「あ、あの、木下さん。もうニ十分近くは市内をウロウロしていません?」
俺はしびれを切らして木下さんに聞いた。
天音も同じことを感じたようで、隣で不安になっていた。
「良い質問だ、早坂くん。念のための尾行チェックさ」
「え」
「こうしてグルグル回っていれば、つけられていないか分かるのさ」
なるほど!
だから、近くを回ってばかりいたのか。
ルームミラーもやたら見ていたから、変だと思ったんだよな。
木下さんは、尾行がないと確認したようだ。
ようやく市街を抜けていく。
そして三十分後には『姶良市』に到着。
割と離れた場所に北上さんたちはいるようだ。
やがて車は、姶良市の海側にある一軒家で止まった。
「ここは……?」
ぽつりとつぶやく天音。
桜島がよく見える広大な公園――『なぎさ公園あいら』というらしいが。
この家にいるのか?
「さあ、車を降りてくれ」
俺たちは車を降りた。一軒家の前に立つ。
普通の家……だな。
どこにでもある二階建ての家。けれど、外観は立派で綺麗だ。
駐車場も広々としているし。
「誰の家です?」
「ここは私の家だ」
「「えっ、木下さんの!?」」
俺と天音は同時に驚く。
まさか、木下刑事の家が鹿児島市内だったとは……驚きた!
いや、思えばオーハ島に姿を現したこともあった。この周辺でしか彼を見ていないような気がする。つまり、そういうことか。
「出身地が鹿児島だからね」
やはりそうか。
つまり、木下さんは北上さんたちを家に匿っているということか。
さっそく家の中へお邪魔することに――いや、その前に玄関のドアが開いた。
そこには懐かしい人物が立っていた。
「……哲くん! それに、天音さん!」
まるで幽霊でも見るかのように北上さんは、驚いていた。こんな表情は珍しい。
「よう、北上さん。久しぶりだな」
「よかった、無事だったんだね」
俺と天音は、直ぐに北上さんの元へ向かい抱き合った。感動の再会だ。
「信じていましたよ、哲くん。天音さん。二人ともきっと生きていると」
珍しく涙ぐむ北上さん。
俺も最近は妙に涙もろくて釣られていた。天音も。
そんな中、懐かしい面々が次々に。
「あ、てっちゃん!!」
桃枝が飛びついてきた。
気づけば、リコや艾も。千年世までくっついていた。
おぉ、みんな無事じゃないか!
「よくぞ生きていた! 桃枝、リコ、艾、千年世……!」
泣きじゃくる桃枝は「うん、流されたんだけどね。絆ちゃんが緊急ロケータービーコンを持っていてさ、割と直ぐに助かったのさ。でも、てっちゃんと愛ちゃんが行方不明じゃん! ずっと心配していたよぅ」と、わんわん泣いていた。
そうだったのか。
遭難ビーコンを所持していたのか。
あの晩、北上さんはビーコンを発信して、助けられていたということか。
だけど、行方不明者ばかりだったような……?
情報が錯綜していたせいか、それとも北上さんたちは人数に入っていないのか。
「教えてくれ、北上さん。ビーコンを使用したとはいえ、よく助かったな」
「ええ。あの晩、哲くんと天音さん、あの女刑事……あと複数の民間人が流されていました。あたしたちは奇跡的にも救命浮器で耐えていたんです」
「……なんだって? じゃあ、俺と天音が不運だっただけか……」
「ええ。高波にさらわれてしまったんです」
そういえば、何度も波に襲われていた。たまたま俺と天音、古森さんが流されたんだ。厳密にいえば、岩崎も含むが。その他にも流された人がいるんだろうな。
「とりあえず、立ち話もなんだし、中へどうぞ」
と、木下さん。そうだな、家の中でゆっくり話を聞こう。これからどうするかも決めねばならない。
一度、ホテルの部屋に戻り、北上さんたちが無事かもしれないと話すと天音は喜んでいた。
「木下さんが見つけてくれた」
「え、あの刑事さんが?」
「そうだ。だから確かだ」
「よかった~…」
本当にな。
一刻も早く合流したいところだが、木下さんの準備もあるということだった。
連絡があるまでは待機だ。
一時間ほど待つとスマホに連絡が入った。
木下さんだ。
『ロビーに来てくれ』
「分かりました。直ぐに向かいます」
電話を切り、俺は仮眠を取る天音を起こした。
「準備できたようだ。行くぞ」
「ん~、ほんとぉ?」
「ああ、これでやっと合流できる」
「うん、楽しみ!」
天音と共にロビーへ向かう。
そこには木下さんの姿が。スマホを耳に当て、誰かと会話しているようだった。もしかして、北上さんか?
「さあ、行こうか。早坂くん、天音さん」
通話を切る木下さんは、ホテルの外へ向かう。俺たちもついていく。
外には黒い車が停車していた。
その車の後部座席へ乗り込み――いざ、出発!
◆
木下さんの運転する車は、鹿児島市内をぐるぐる回っていた。いつまで経っても到着する気配がない。
「あ、あの、木下さん。もうニ十分近くは市内をウロウロしていません?」
俺はしびれを切らして木下さんに聞いた。
天音も同じことを感じたようで、隣で不安になっていた。
「良い質問だ、早坂くん。念のための尾行チェックさ」
「え」
「こうしてグルグル回っていれば、つけられていないか分かるのさ」
なるほど!
だから、近くを回ってばかりいたのか。
ルームミラーもやたら見ていたから、変だと思ったんだよな。
木下さんは、尾行がないと確認したようだ。
ようやく市街を抜けていく。
そして三十分後には『姶良市』に到着。
割と離れた場所に北上さんたちはいるようだ。
やがて車は、姶良市の海側にある一軒家で止まった。
「ここは……?」
ぽつりとつぶやく天音。
桜島がよく見える広大な公園――『なぎさ公園あいら』というらしいが。
この家にいるのか?
「さあ、車を降りてくれ」
俺たちは車を降りた。一軒家の前に立つ。
普通の家……だな。
どこにでもある二階建ての家。けれど、外観は立派で綺麗だ。
駐車場も広々としているし。
「誰の家です?」
「ここは私の家だ」
「「えっ、木下さんの!?」」
俺と天音は同時に驚く。
まさか、木下刑事の家が鹿児島市内だったとは……驚きた!
いや、思えばオーハ島に姿を現したこともあった。この周辺でしか彼を見ていないような気がする。つまり、そういうことか。
「出身地が鹿児島だからね」
やはりそうか。
つまり、木下さんは北上さんたちを家に匿っているということか。
さっそく家の中へお邪魔することに――いや、その前に玄関のドアが開いた。
そこには懐かしい人物が立っていた。
「……哲くん! それに、天音さん!」
まるで幽霊でも見るかのように北上さんは、驚いていた。こんな表情は珍しい。
「よう、北上さん。久しぶりだな」
「よかった、無事だったんだね」
俺と天音は、直ぐに北上さんの元へ向かい抱き合った。感動の再会だ。
「信じていましたよ、哲くん。天音さん。二人ともきっと生きていると」
珍しく涙ぐむ北上さん。
俺も最近は妙に涙もろくて釣られていた。天音も。
そんな中、懐かしい面々が次々に。
「あ、てっちゃん!!」
桃枝が飛びついてきた。
気づけば、リコや艾も。千年世までくっついていた。
おぉ、みんな無事じゃないか!
「よくぞ生きていた! 桃枝、リコ、艾、千年世……!」
泣きじゃくる桃枝は「うん、流されたんだけどね。絆ちゃんが緊急ロケータービーコンを持っていてさ、割と直ぐに助かったのさ。でも、てっちゃんと愛ちゃんが行方不明じゃん! ずっと心配していたよぅ」と、わんわん泣いていた。
そうだったのか。
遭難ビーコンを所持していたのか。
あの晩、北上さんはビーコンを発信して、助けられていたということか。
だけど、行方不明者ばかりだったような……?
情報が錯綜していたせいか、それとも北上さんたちは人数に入っていないのか。
「教えてくれ、北上さん。ビーコンを使用したとはいえ、よく助かったな」
「ええ。あの晩、哲くんと天音さん、あの女刑事……あと複数の民間人が流されていました。あたしたちは奇跡的にも救命浮器で耐えていたんです」
「……なんだって? じゃあ、俺と天音が不運だっただけか……」
「ええ。高波にさらわれてしまったんです」
そういえば、何度も波に襲われていた。たまたま俺と天音、古森さんが流されたんだ。厳密にいえば、岩崎も含むが。その他にも流された人がいるんだろうな。
「とりあえず、立ち話もなんだし、中へどうぞ」
と、木下さん。そうだな、家の中でゆっくり話を聞こう。これからどうするかも決めねばならない。
4
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~
桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。
高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。
見知らずの後輩である自分になぜと思った。
でも、ふりならいいかと快諾する。
すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる